ノーベル賞のiPS細胞と培養液との関係
iPS細胞は、2012年に山中伸弥先生(医師、京都大学iPS細胞研究所名誉所長)がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、多くの日本人の知るところとなりました。
2022年で、それからちょうど10年になります。
そこでこの記事では、今あらためてiPS細胞の基礎知識をおさらいしてみます。
そして、培養液会社とiPS細胞研究の関係も紹介します。
着実に前進しているiPS細胞研究
山中先生はノーベル賞を受賞したときに、「難病の患者さんの体の細胞からつくられたiPS細胞を用いて、新しい薬剤や治療法を開発することを、1日も早く実現するために、仲間の研究者とともに一生懸命頑張りたいと思います」と述べています(*1)。
iPS細胞研究は着実に前進していて、ベンチャー企業が、iPS細胞からつくった血小板で治験を始めたり、iPS細胞から心臓の細胞をつくって心不全を治療する治験に着手したりしています(*2)。
ではiPS細胞のどこに「ノーベル賞を受賞するほどのすごさ」があるのかみていきましょう。
*1:https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/other/121008-183500.html
*2:https://www.asahi.com/articles/ASPC66K1WPBCULBJ01Z.html
iPS細胞が「すごい」といわれるのは多能性と増殖性
人の体をつくる数十兆個の細胞は、たった1個の受精卵から増えたものです。この現象が「すごい」のは、1つのものからまったく別のものが多数生まれているからです。
脳の細胞と心臓の細胞と筋肉の細胞と血液の細胞と骨の細胞は全然違うのに、どれも元をたどると受精卵に行き着くのです。
しかも変化してしまった細胞は互換性がなく、筋肉の細胞と脳の細胞を交換することはできません。
ここまでは生命の「すごさ」です。
ではiPS細胞は何が「すごい」のかというと、変化を遂げた細胞を受精卵に近い形に戻したことです。
少し難しい言葉を使いますがiPS細胞は多能性と増殖性を持っているところが「すごい」のです。
さまざまな細胞に変化して無限に増えるから「すごい」
山中先生の研究グループは、4つの遺伝子を皮膚細胞に導入してiPS細胞をつくりました。
皮膚細胞ももちろん、元をたどれば受精卵になります。
つまり山中先生は、受精卵から変化した皮膚細胞を加工して、受精卵に近い細胞であるiPS細胞をつくったのです。
例えるなら、子供が大人になって、大人を子供に戻すようなものです。
iPS細胞が「受精卵に近い」といえるのは、iPS細胞が多能性と増殖性の性質を持っているからです。
多能性とは、さまざまな細胞に変化できる性質です。
増殖性とは、ほぼ無限に増え続ける性質です。
iPS細胞がさまざまな細胞に変化してほぼ無限に増殖する現象は、受精卵が脳や心臓や筋肉や血液や骨などの細胞に変化して数十兆個に増えることと酷似しています。
培養の技術が研究に欠かせなかった
培養液会社とiPS細胞研究を結んでいるのは、細胞の培養技術です。
培養とは、生物を人間の管理下で生育させること。iPS細胞研究でも大量のiPS細胞が必要なので、培養技術を進化させる必要がありました。
そして培養液とは、培養に必要な環境のことです。
培養液はiPS細胞の作製で欠かせない技術の1つでした。培養液はいわば細胞の畑であり、ここでたくさん細胞をつくることができると研究を効率的に進めることができます。
世の中にほとんど知られていなことですが、培養液会社の培養液は、山中先生のiPS細胞研究に使われました。
iPS細胞をつくるという画期的な技術の開発では、培養の技術も向上させる必要がありました。
医学の進歩に役立てた
iPS細胞はこれからも研究が進み、医学を大きく進化させることでしょう(*3)。
その進化のなかで、培養という工程に培養液会社が貢献していたのです。
*3:https://www.kantei.go.jp/jp/headline/contributing_worldwide/yamanaka.html
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