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電子申請について思う事

 デジタル庁が発足して、行政手続きのIT化が叫ばれ、ここ何年か自分の確定申告が終わったころに電子申請に関連したことを書いています。今年も昨年を振り返ってみたいと思います。
 今回の確定申告は大きな変化はありませんでした。前回「(H社は)2つの部署からそれぞれ源泉徴収票が発行されるというお役所仕事的なことも今回は起こっています。H社は文字通りお役所なので、部署の縦割りの弊害が出ていて唖然としました。こんなところにも税金の無駄使いかと思うとちょっと複雑です。」と書いていますが、今回も状況が同じで、源泉徴収票が3通発行されました。お役所のIT化はまだまだですね。
 マイナポータル連携は、保険控除証明書や厚生年金の源泉徴収票等登録されているものはスムーズでしたが、去年同様、エビデンス発行先によっては連携できないところがあり、契約者が申告者と同じであっても、当該法人自体がマイナポータル連携を行っていない例(証券会社の大手どころの一社が対応していないのには驚きました。)、団体生命保険等のように契約者が申告者と異なる例、家族分の支払いを行っている社会保険料などは反映されない例などもあり、すべての証明書の入手ができない点も課題があります。具体的には、介護保険や組合健保の保険料控除証明書、企業年金などの源泉徴収票なども相変わらずの紙の対応しかありません。
 国税庁の確定申告作成コーナーの操作性は、ここ数年で、かなり向上したと思いますが、初めてやる方にとっては、マイナンバーカードの有無で入口のハードルが高くなる感じがあるかもしれません。感覚的な問題で私自身が慣れてしまっているため、人にとってのハードルの高さはよくわかりません。

 電子申請に関してもう少し書くと、去年はお手伝いしている一つの法人でe-taxやe-ltax、補助金申請に関わる各種の報告のシステム、もう一つの法人で年次報告のシステム、そして身内で相続が発生し、その相続税申告においてe-taxを実際に使ってみたのですが、申請に多いに苦戦(中)したものもあり、慣れてくれば便利だというシステムもあり、様々でした。デジタル庁の発足以降、行政の手続きの電子化対応は行政書士としては避けては通れないものになっています。その動きを先取りするために積極的に機会があれば対応したいと考えています。

 ただ、色々な電子申請を実際に使ってみて思うのは、ほんの些細なことがなかなか解決せずにそこで時間がかかってしまうということがあります。
 例えば、e-taxのシステムについていくつか事例を上げたいと思います。e-taxは、確定申告の時期に国税庁HPに設けられる確定申告作成コーナーと違って、汎用的な仕組みなので、所得税だけでなくすべての税に関わる申告、申請が可能です。利用する税目と必要な帳票をまず登録して、そこから作成に入ります。最初にこれを使ったのはお手伝いをしている、法人の法人税の申告書作成です。法人税は何種類かの帳票を作成する必要が有りますが、何が申請に必要かを見極め、事前に選択しておくことが必要になります。それは相続税も同じでした。
 そして法人税の申告は別表毎に連関性(転記の必要)があるので、どの帳票から作成していくかが重要なります。相続税の申告もそのあたりは同じでした。一つの帳票を作成する都度、いちいち整合性チェックのコメントが出るのが少し邪魔くさく感じますが、まあ仕方がないかなという感じです。そのあたりの入力になれるまで結構時間が掛かりました。

 申請者の属性の登録も重要です。相続での事例でいうと最初(必要な帳票の選択は終了した段階)に、被相続人及び相続人の情報を登録が必要となります。選択した帳票にその情報が反映するのですが、その手順を無視して、申告書にいきなり直接入力してしまうと、他の帳票には反映されず、何度も入力が必要となります。さらにマスター登録の入力に間違った情報を入れてしまうと、帳票ごとに直したとしても、勝手に間違った情報に塗り替わってしまうという事も起こります。ですから入力順が結構重要です。

 年末調整に関わる法定調書合計票もe-taxで申請しましたが、添付する源泉徴収票や支払調書が、結果的に源泉徴収先への交付分と二重作成になってしまったのは残念でした。何かしらやり方があったのかもしれないですが、その解明には至りませんでした。

 また、今年に入って自分の確定申告で提出必要な書類があってe-taxでの申請をしようとしたのですが、ここではそもそも報告書書式が見つからず、ヘルプデスクに電話しても、受けた担当者がその報告書式の存在を知らず理解してもらえなくて、苦戦しました。結局は汎用的なイメージ添付という形をとるのですが、イメージ添付できる帳票には指定があって、それなら初めから帳票を用意してほしいと思いました。確定申告書作成コーナーで申告をし、その提出受付のメッセージに改めて、届出書をイメージ添付することで簡単に提出ができました。(去年は断念して直接持参することになった。)そこにいたるまでにヘルプデスクの手を煩わせてしまったのは申し訳なかったですが、とにかく税務署に行くことなく確定申告が終了しました。

 e-ltaxは地方税関係の申告や申請が可能で、去年償却資産の申告で初めて使いました。償却資産はe-ltax移行時にはすべての資産の再登録が必要なので、初めての申請時は本当に難しく、申請資産に一括償却資産を含めていたという間違いもあったので。役所の担当者にも教えてもらいながら、やっと申請ができました。結果として固定資産税の戻しがあったのはよかったと思いました。一旦登録してしまうと、増加減少の報告だけでよくなるので、今年の申告は本当に簡単で、今回は固定資産税の納付手続きまでできればと思っています。さらに、年末調整では、給与支払報告書にもトライしようとしたのですが、従業員の給与データをCSVで報告フォーマットに変換す必要が有り、バタバタして断念してしまいました。今年は、まずは特別徴収に関わる給与所得者異動届出書で使えればと考えています。
 e-ltaxにはWeb版とDL版があって両方のシステムの行き来をしながら各種申請をしていくのですが、なぜそんなシステム設計にしたのかこれもよくわかりません。それに比べるとe-taxのシステムは慣れてしまえばそれほど難しくないというのが実感で、管轄官庁も多くあり、官庁ごとにも申請内容が多岐に渡る行政手続きを、一つの仕組みの中で電子化するは、e-ltaxを参考にして作るべきではないかと思います。官庁が横断的に利用できるようにするには、デジタル庁の役割は本当に重要だと思います。

 お手伝いしている法人の各種の報告システムでは、中間支援団体のものですが、いくつかのマスター登録があって、その内容に変更があると、都度マスターの変更申請をする必要が有り、そこで間違えてしまうと、取り戻しの申請が不能で、月次報告等の期日のある申請を間違えた状態で行うことになります。マスター登録の細かな内容までは、膨大なページ数の操作マニュアルを隅から隅まで目を通すのは難しく、見切り発車すると、最終的には差し戻しされたものを修正して再申請をせざるを得なくなります。そのあたりのシステムの構造を理解しないと、うまく使えないのです。また、報告書入力を効率的に行うためにどんな準備をするかといった業務そのものの改善が必要となります。操作性では、スクロールすると見出し部分が見えなくなってしまい、選んだセルに何のデータを入れればいいかといった問題もあって、多少のことは手順などでカバーできたとしても、もう少し入力のしやすさに配慮があればと思ってしまいます。

 そんなことを考えていた矢先、県の行政書士会の業務で報告書を作成する仕事があり、メール報告したいのでExcelかWordの様式がないのかと事務局に聞いたら、指定した紙の様式で出してほしいとのこと、おひざ元がこれかと正直がっくりしました。お金がないから出来ないのか、やる気がないから出来ないのか正直わかりませんが、行政の電子化に行政書士を活用してくれと言っている行政書士会がこんなことでよいとちょっと複雑な気持ちになりました。

 

 


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