仕事のこと10.積み重ね
厚真町放課後子ども教室において、プログラム(活動内容)を企画し、運営するのが私の仕事。平日で年間約50の活動+特別教室として約10本のプログラムを実施している。
1年目や2年目は、ゼロから物事を考えなければならないので、毎月のプログラムを考えるのにも四苦八苦していたが、年数が経てばストックも増えるので、季節ものや子どもたちの希望に合わせて、どうにかやりくりが出来るようになってきた。
スポーツ・体を使って遊ぶ系。
モノづくり・おやつづくり系。
コミュニケーション促進系。
ミニ実験・頭を使って遊ぶ系。
など、次第にジャンルが出来上がりつつある。具体的な内容は子どもたちからのリクエストだったり、ネットや本で調べて面白そうだと思うことだったり、さまざま組み合わせてプログラムをつくる。
そのなかでも、毎年、我々スタッフがこだわって繰り返し実施しているものがいくつかある。
例えば、学校周辺で見られる動植物についてのクイズや、地元の稲わらを使ったしめ縄づくり、山菜天ぷら、学校林での基地づくり、落ち葉シャワー、河川敷での雪遊び。
私自身が好きでみんなと一緒にやりたい、ということももちろんあるけれど、成長した子どもたちが、折に触れて自分の子ども時代を振り返ったときに、「こんな遊びしてたなぁ」とか、「これって学校の周りにあったよなぁ」とか、ふるさとの記憶と結びつく思い出を持っていてほしいから。
特別教室も、"厚真といえば……"で思いつく、農業・米どころ、ハスカップ、海遊び・サーフィンなどの定番から、子どもたちの好奇心をくすぐる森遊び、木工をメインとしたモノづくりを、繰り返しプログラム化してきた。
毎年、同じ素材でプログラムをつくる。
一見、過去の内容を焼き直しただけで、考えることをやめた手抜きに見える……のではないか、と悩んだ時期がある。
過去とは違うもの、新しいものを作り出していかなければならない、と思っていた。
実際、「去年もやったから、今年はもういいや」という子もいるし、「毎年、同じことの繰り返しで目新しさがない」とか「子どもたちも飽きちゃうよ」という大人もいた。
周りの声に耳を傾け、色々試しにやってみた結果、気づいた。
一期一会、1回きりのプログラムで、子どもたちの生涯に残るインパクトを与えることは相当、難しい、と。
新しさを優先していけば、プログラムの数は増える。様々な資源に触れられる機会も増えるけれど、子どもたちにとって、その活動に参加できるチャンスは小学生の6年間で1回。
一方、1年1回、同じプログラムを実施すれば、6年間でチャンスは6回。参加する回数を重ねれば、それだけ記憶に残る部分も増える。
チャンスは多い方が良い。私はそう思う。
いろんなタイミングがあるし、去年までは興味がなかった子も、今年はヒットするかもしれない。毎年、参加していても、今年はまた新しい発見があるかもしれない。
素材は同じでも、扱うテーマや関わる人が変われば、それは新たなプログラムとして成立する(これは昔、NPO時代のボスに言われた。その意味が今、ちゃんと理解できた気がする)
手を抜いてるなんて思われたらヤダな、と思っていた自分がとても小さく感じた。
なぜ、同じプログラムを実施するのか、説明することをサボっていたのは反省すべきとして。それに、同じものをずっとやり続けることが正解かというと、そうでもなく、面白いと思ったら違う資源を組み合わせて、新しいプログラムをつくっていくしね。
要は、なぜ、この活動をやりたいのか?に、自分自身の答えを持っていることが大事。
厚真で育った子どもたちには、厚真で育つお米やハスカップのことを、体験をともなった記憶と共に知っていてほしい。浜厚真の海に、たくさんのサーファーがいる姿を見たうえで、厚真はサーフィンの町だと言えるようになってほしい。
すべては、自分が育ったまちのことを、自分の体験をもとに、自分の言葉で語れる子を育てるための積み重ね。
(ハスカップ狩りプログラムの記念すべき1回目は2013年)
(小学生当時、参加者だった子が、今度は卒業生ボランティアとして、現役小学生の面倒を見てくれた。ハスカップの摘みとり方も完ぺきにマスターしているし、畑周辺での虫とりや生き物探しもお手のもの)