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「無能な怠け者」に囲まれない組織開発

タロットカード占い化するタイプ別診断

ドイツ軍人のハマーシュタインは、軍隊には4種類の人間がいると考えました。いわく、期待以上に働く「有能な働き者」、期待以上の働きができると評価しているのに期待値に止まる「有能な怠け者」、余計なことをして肝心なことをしない「無能な働き者」、余計なことをせず肝心なことだけする「無能な怠け者」です。そして彼は、軍隊において最も有益な人材は「無能な怠け者」だとしました。
このように、人をカテゴライズして理解しようとする傾向は、常につきまといます。例えば部下のタイプ別に、効果を生む上司のかかわり行動を示した『PM理論』や『状況適応理論』などは有名です。後年は、部下の自己分析へと視点が移り、現在でもタイプ別診断は花盛りと言っていいでしょう。最近では、『16Personalities』などの性格診断的なものが流行っているようです。これらは、それだけではわかったような、わからないような曖昧なものが多いため、解説にのめり込む人も多いようです。まるで、血液型占いの流行を見るようです。

関係性構築の呪縛

そもそも、人がこのようなカテゴライズに頼るのは、他者との関係性構築に悩むからでしょう。ここで“関係性構築”が、人と人が集うことで何かを成すことだとすれば、自身の成したいことに相手も同意するかの判断に悩むということと置き換えてもよいかもしれません。もし、この置き換えが妥当なら、関係性構築とは、相手を従わせることを意味します。
相手を従わせるとは、自身につき従うYesマンのような取り巻きを作ろうとすることはもちろん、「私の話も聞いて」と願うこともまた、含まれるでしょう。だから自己診断を頼る人には、リーダーであることに疲れた人や、Yesマンであることに嫌気の差した人が多いように見受けられるのかもしれません。

共感的組織

無音とは、文字通り音がないこと。したがって、客観的に計測できる状態です。しかし静寂は、例えば蝉の声と合わせることで感じることが出来る概念です。蝉の鳴き声をうるさいと感じる人もいれば、むしろ蝉の声に圧倒されることで、静かさではなく閑さを味わえる人もいます。つまり、客観的事実は、ただそれだけであって人を動かすことはできませんが(「科学的に…」を連呼するばかりで同意を得られない政治家のように)、感性は人を動かす力があるといえるでしょう(イメージだけで当選する議員のように)。だから人が集まるとき、そこに共感を求めるのでしょう。
組織は、客観性あるいは合理性に基づいて構成される人の集まりです。本質的に、そこに共感はありません。しかし、それでは人が集まってこないため、ビジョンやパーパスなどを掲げ、共感的集合体を求めているように思われます。

共感を評価する

にもかかわらず、組織内個人において自己診断ツールに頼る人がなくならないのは、おそらく企業が、結局は「有能な働き者」を求めるからでしょう。実際、人事考課にけるMBOやバランス・スコアカードでは、共感度が反映されることはないのではないでしょうか。だから、上意下達、前例主義、実力成果主義が跋扈し、結局は上司の求める理想の部下像が、軍隊と同様になるのでしょう。これでは、ブラック企業が蔓延るのも当然かもしれません。
人をカテゴライズすることには、一定の意味があります。ただ、組織を考えたときは、その理解が個人の範囲に留まることに問題があるように思います。つまり、自己診断のカテゴライズだけ、あるいは他者診断のカテゴライズだけに頼るのではなく、相互を突き合わせることで生じるギャップに目を向けることで、共感の端緒が見てくるのではないでしょうか。そして、それを”占い”ではなく、組織の拠り所として評価することが求められているように思われます。

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岡島克佳
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