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ナカモトサトシ白書解説(2)

以下は2016年12月14日に私が以下のホームページに掲載した記事です。
https://officemoorea.wordpress.com/
最近、web3という文脈でブロックチェーンが注目されていることや、上記ホームページの更新ができていないことから、古い記事ですが、noteに転載します。

■ナカモトサトシ白書解説 イントロダクション


インターネットでの商取引は、ほぼ例外なく、信用できる第三者機関としての金融機関に頼っている。大多数の取引においては、このシステムで十分であるものの、信頼に基づくモデルであるがゆえの弱点が残っており、一定割合の詐欺は避けられない。またそれを防止するためのコストも必要で、小額取引はコストに見合わない。

電子取引において、第三者機関を通さずに通信チャンネル経由で支払いを可能にするメカニズムは存在していない。必要なのは、信用ではなく暗号化された証明に基づく電子取引システムであり、これにより希望する二者が信用できる第三者機関を介さずに直接取引できるようになる。コンピュータ的に事実上非可逆的な取引は売り手を詐欺から守り、エスクロー(第三者預託)メカニズムを利用すれば買い手も守られる。

この論文では、時系列取引のコンピュータ的証明を作成するP2P分散型タイムスタンプ・サーバーを用いた、二重支払い問題の解決策を提案する。本システムは、良心的なノードが集合的に、攻撃者グループのノードを上回るCPUパワーをコントロールしている限り安全である。

解説


インターネットでのショッピングなど電子取引では信用できる第三者機関、例えば銀行とかクレジットカード会社などを通して支払いを行っている。この方式は事故対応などによりコストがかかり、少額取引にはつかいづらい。
これに対して第三者機関を通さない、信用にもとづかないメカニズムでは、これまで二重支払いの問題を解決することができなかった。これに対する解決策を提案する。

タイムスタンプサーバー

取引を記録するのに際し、タイムスタンプサーバーを使って「偽造できないタイムスタンプ」を押すことにより、その取引記録を改ざんすることができなくなる。

ノード

P2Pに接続された「採掘」機能を持ったコンピュータのこと。

ブロックチェーンの構造

■ナカモトサトシ白書解説 取引

一つの電子コインは、連続するデジタル署名のチェーンと定義される。電子コインの各所有者は、直前の取引のハッシュと次の所有者のパブリック・キー(公開鍵)をデジタル署名でコインの最後に加えることにより、電子コインを次の所有者に転送する。受取人は一連の署名を検証することで、過去の所有権を検証できる。

問題は受取人には過去の所有者がコインを二重使用していないことを検証できないことにある。一般的な解決法は信用のおける中央機関もしくは造幣局を間に入れ、全取引を監視させることである。取引の度にコインは造幣局に戻され、新しいコインが発行され、造幣局から新しく発行されたこのコインのみが二重使用されていないものとして信用される。この解決法の問題は、全取引が造幣局を通じて行われるため、銀行と同様に造幣局を運営している企業に、金融システム全ての運命が左右されることである。

必要なのは、コインの受取人に今までの所有者らが二重署名していないことを知らせる方法である。取引がなかったことを明確にするには全取引を監視する必要がある。造幣局モデルでは造幣局が全取引を監視し取引の順番を決定していた。これを第三者機関なしに行うには、取引が公開され、参加者たちが唯一の取引履歴に合意できるシステムが必要となる。受取人は取引毎に、取引が行われた時点で大多数のノードがそのコインが初めて使用されたことに賛同したという証明を必要とする。

transaction

解説


お金をAからBに渡すということは、ビットコインにおいては、「AからBに一定額の電子コインを渡した」という取引記録を台帳に書き込むことである。Aはそのコインの所有者が自分であることを証明するため、Aの前の所有者からAに受け渡されたという取引記録を示し、それにBへの送金額を追記し、最後にAの署名をつけた取引記録を発行する。

つまりコインというのは採掘によって生み出されて以来のすべての取引履歴なのである。二重使用を防ぐためには、全ての取引履歴をノードが共有するシステムが必要となる。

取引の記録台帳

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