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ドバイ:煌びやかな都市の真実

日本は、1991年のバブル崩壊以降、失われた30年と呼ばれ、経済は停滞を続けました。経済が伸びない一方で、税金や保険などの国民負担は、50%近くにもなり、国民は苦しんでいます。

国民負担率は50%近くに

2024年2月に日経平均株価は1989年12月29日の史上最高値を更新し、現在4万円を超えて推移しています。しかし円安や世界紛争などに伴う急激な物価高に、賃金上昇は追いついておらず、多くの国民は、まだまだ苦しい状態におかれています。

そんな日本と真逆の国が中東にあります。アラブ首長国連邦であり、その中のドバイです。国民の平均世帯収入は約2,600万円。所得税や住民税はなく、医療費も教育費も無償です。

そんなドバイの現状となぜに迫ります。

ドバイ:煌びやかな都市の真実
収入、税金、福祉、それを可能にする国家戦略

ドバイは、高層ビルが立ち並ぶ近未来的な都市景観、豪華なショッピングモール、そして世界中の富裕層が集まる場所として知られています。

ドバイに住むUAE国民の平均世帯収入は、約2,600万円。所得税や住民税がなく、給料がそのまま手取り額になります。
さらに、公立病院での医療費が無料、公立学校での教育費が大学まで無料です。住宅補助、失業給付、年金なども充実しています。UAE国民同士が結婚した場合、政府から住宅をプレゼントされるという制度もあります。

理想とも言えそうな社会を可能にしたものは何なのか、ドバイの歴史や国家戦略は何かを解説いたします。

ドバイの基本情報

国土と人口

ドバイは正式名称をドバイ首長国と言います。アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7つの首長国のひとつであり、国と言っても独立国家ではありません。

アラブ首長国連邦(UAE)

UAEはペルシャ湾の南側に位置し、サウジアラビアやオマーンに国境を接している国で、国土は約8万3,600平方キロメートルと北海道とほぼ同じ面積です。ドバイはアラビア半島の突き出した部分にあり3,885平方キロメートルで埼玉県と同程度の面積を有しています。
ドバイはそのほとんどが砂漠であり、市街地エリアは更に小さく1/10程度しかありません。面積ではUAEの1/20以下ですが、人口についてはUAE全体で約1,000万人(2023年推計)に対して、ドバイは2021年時点で約350万人と、UAE全体の約1/3の人口がドバイに集中しています。

ドバイ住民の構成

ドバイの人口は約350万人ですが、そのほとんどが外国人です。UAE国民はわずか8%の28万人で、残りの92%はインド、パキスタン、バングラディッシュ、フィリピンなどからの出稼ぎ労働者を含む外国人によって構成されています。
ドバイの経済発展と共に外国企業がドバイに進出し、更に経済の活性化が進むに連れて海外の労働者が大量にドバイに流入するという状況です。

ドバイ住民の年収

ドバイに住むUAE人の平均世帯年収は約2,600万円と高額です。
これは、公務員として働くUAE人がほとんどであり、ドバイの公務員になると高収入を得られるためです。
さらに、ドバイは「タックスヘブン」と呼ばれ、給料から天引きされる所得税や住民税がなく、給料がそのまま手取り額になります。
ドバイには多くの政府機関や公営企業があります。例えば、政府機関は、首長府や政庁、警察、経済開発庁、観光商務庁、民間航空庁、道路交通庁など、公営企業は、ドバイ救急サービス公社やドバイ空港公社、プロフェッショナル通信公社、ドバイ輸出公社、ドバイメディア公社などがあります。
これらの機関や企業で公務員として働くことで、高収入を得ることができます。

一方、非UAE人の平均世帯年収は約1,012万円と、UAE人の半分程度になっています。
これは、高収入を得られる公務員はUAE人にしかなれないことや、多くのUAE人が先代から続く企業経営を行い、高収入を得ていることが理由です。
つまり、ドバイ人口の約90%を占める非UAE人は高収入の職には付けません。非UAE人は、肉体労働やドライバー業務、飲食業、セキュリティー業務などに就いています。

福祉

UAEは、国民に対して手厚い福祉を提供しています。UAE国民が享受できる主な福祉は以下の通りです。

  • 無料の医療
    公立病院での医療費が無料になります。また、私立病院での治療費も政府から補助金が出ます。

  • 無料の教育
    公立学校での教育費が無料になります。また、大学進学率も高く、政府は奨学金制度も充実させています。

  • 住宅補助
    政府から住宅購入や賃貸の補助を受けることができます。

  • 失業給付
    失業した場合に政府から失業給付を受けることができます。

  • 年金
    老後に政府から年金を受け取ることができます。

  • 結婚祝い
    UAE国民同士が結婚した場合、政府から住宅がプレゼントされます。

このように、UAEは国民に対して手厚い福祉を提供しています。これは、国家事業によって得られた富を国民に還元する政策の一環です。UAE国民同士の結婚に対する住宅プレゼントも、結婚を奨励し、出生率を向上させるための政策です。これらの政策は、UAE国民の生活水準の向上に大きく貢献していますが、外国人労働者など、UAE国民以外の人々にとっては、不公平感を感じる制度でもあります。

砂漠の漁村から世界のビジネスハブへ

ドバイは、今でこそ高層ビルが立ち並ぶ近未来的な都市景観、豪華なショッピングモール、そして世界中の富裕層が集まる場所として知られていますが、わずか数十年前までは、砂漠の貧しい漁村でした。

ドバイの転換点は、1966年に石油が発見されたことです。石油収入によって得られた富を、ドバイはインフラ整備や産業育成に投資しました。1970年代には、ドバイ国際空港やジュベル・アリ港などの大規模なインフラプロジェクトが次々と完成し、中東地域の貿易・物流のハブとしての地位を確立しました。

1980年代に入ると、ドバイは石油依存からの脱却を目指し、観光業や金融サービス業の育成にも力を入れ始めました。世界一の高層ビル「ブルジュ・ハリファ」や、人工島「パーム・ジュメイラ」などの壮大なプロジェクトは、世界中から注目を集め、ドバイを世界的な観光地へと押し上げました。

世界一の高層ビル「ブルジュ・ハリファ」
人工島「パーム・ジュメイラ」

2000年代に入ると、ドバイは不動産バブルに沸きました。世界中から投資マネーが流入し、不動産価格が高騰しました。しかし、2008年のリーマン・ショックをきっかけに、バブルは崩壊。不動産価格が暴落し、多くの企業が倒産しました。これが「ドバイ・ショック」と呼ばれる出来事です。

ドバイ・ショックは、ドバイ経済に大きな打撃を与えましたが、ドバイ政府は迅速な対応策を講じました。政府系企業の債務を再編し、海外からの投資を呼び込むための政策を打ち出しました。その結果、ドバイ経済は比較的短期間で回復し、再び成長軌道に乗りました。

ドバイの驚異的な発展は、以下の要因によるところが大きいと考えられます。

  • 明確なビジョンとリーダーシップ
    ドバイ首長国の首長であるムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームは、ドバイを世界のビジネスハブにするという明確なビジョンを掲げ、それを実現するための強力なリーダーシップを発揮しました。

  • 戦略的な投資
    ドバイは、石油収入をインフラ整備や産業育成に戦略的に投資しました。特に、貿易・物流、観光、金融サービスなどの産業に重点的に投資を行い、これらの産業がドバイ経済の柱となっています。

  • 開放的な政策
    ドバイは、外国人投資家や企業に対して非常に開放的な政策を取っています。税制優遇措置や規制緩和などにより、多くの企業がドバイに進出しています。

ドバイの光と影

ドバイは、多くの魅力的な側面を持つ都市です。しかし、その発展の裏側には、解決すべき課題も存在します。

  • 外国人労働者の権利問題
    ドバイの人口の9割を占める外国人労働者の多くは、低賃金で過酷な労働環境に置かれています。

  • 貧富の格差
    ドバイには富裕層が多く住む一方で、貧困層も存在します。格差の拡大は社会不安につながる恐れがあります。

  • 環境問題
    ドバイの発展は、環境負荷の増大を招いています。砂漠気候における水資源の確保や、建設ラッシュに伴う環境汚染などが問題となっています。

ドバイが今後も持続的な成長を遂げるためには、これらの課題を解決していくことが重要です。

ドバイの未来

ドバイは、2020年に開催されたドバイ万博を成功させ、イノベーションやテクノロジー産業の育成に力を入れています。また、持続可能な開発にも積極的に取り組んでおり、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げています。

ドバイ万博2020

ドバイは、今後も様々な課題に直面するでしょう。しかし、明確なビジョンと戦略的な投資、そして開放的な政策によって、世界のビジネスハブとしての地位をさらに強固なものにすることが期待されます。

日本がドバイから学ぶこと

日本は、失われた30年と呼ばれる経済停滞期を経て、今なお多くの課題を抱えています。ドバイの成功例から、日本が学ぶべき点は多くあります。

  • 明確なビジョンと戦略
    ドバイのように、国家として明確なビジョンと戦略を立て、それを実行していくことが重要です。

  • 投資とイノベーション
    税金を使うという発想ではなく、国民の幸福という視点で、未来を見据えた投資を行い、イノベーションを促進する環境作りが必要です。

  • 開放性
    外国人投資家や企業を積極的に受け入れ、日本をアジアにおけるビジネスハブにする必要があります。

  • 外国人労働者の取り扱い
    技能実習生という形の実質的な外国人労働者は、劣悪な労働条件や、不法滞在につながり、社会を崩壊させるリスクがあります。ドバイでの外国人労働者は調整弁としての短期滞在者として位置づけられ、権利も制限されています。日本でも外国人労働者の位置づけを明確にした法制化を行い、コントロールした形で受け入れを行う必要があります。

ドバイの成功は、一朝一夕で 達成されたものではありません。日本も、ドバイのように長期的な視点に立って、未来への投資と改革を進めていくことが重要です。


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