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『まるまるの毬』



人情もの。

お江戸の時は、徳川家斉の頃。

お上の御落胤が理由あって、長屋暮らしの町人、菓子屋の親父に。

秘されたいちもつを腹に抱え、ある一家の出戻り女房になった娘、お武家に嫁ぐことになったが波乱の末出戻りになった孫娘。

一家三人が紡ぐ家族物語。

誰よりも思う気持ちはあるが、口下手で思う苦難葛藤を自分の中だけで抱え込む故、伝わらず。

誰よりも愛情はあるのに、すれ違う。と思いきや、実は通じる以上に意を汲んでいたり。

時代物を読むと、花鳥風月を愛でる時間のゆとりや物事に対する執着や、森羅万象をそういうものだからしょうがないと捉える潔さを感じる。

個人の権利だとか何だとか、そういった価値観がぶつかり互いにそぐわないと感じた時に実に息苦しいなどと思うことがある時、やはりこの時代のものの捉え方って良いなーと思わずにいられない。

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