見出し画像

福岡アジア美術館に行ってきた

先日の福岡市美術館の帰り、アジア美術館にも行ってきた。(福岡は西鉄バスで美術館のはしごも余裕。最高。)
今回もコレクション展のみ鑑賞。


駱駝

《 駱駝 》 ホアン・ヨンビン、2012年

ラクダはキリスト教、イスラーム、双方において重要な意味をもつ動物。作品のラクダは毛を刈られ、そこには新約聖書の一節が刻まれている。一方で、ムスリムの祈りに似たポーズをとり、イスラームの聖地・メッカの方角を向いている。
この一頭のラクダには、異なる宗教の対立、経済的覇権を巡る争いへの批判が込められている。
鼻に通された針は家畜のラクダに刺す棒らしいのだが、長きにわたる対立や紛争に疲れ果て、自我を失いそうになるほど苦しむ人々の姿を思わずにはいられなかった。

卵 #3

《 卵 #3 》 リン・ティエンミャオ、2001年

体の写真は作者本人。無数の糸玉は、女性が一生のうちに排出する卵子を表現している。妊娠を機に、女性が担わされる社会的規範の重さをあらわしているのだそうだ。

身体から無数に伸びる糸をずっと眺めていると、たしかに女性の「しがらみ」について深く考えさせられる。同時に、逆説的だが、母体に向かって一心不乱に戻っていく卵の図にも見える。心理学者の河合隼雄が、人類は無意識に、太母(グレートマザー)というイメージの型を共有していると言っていた。その意味で、「母なるもの」の偉大さと、すべてを飲み込んでいくある種の恐ろしさもまた感じるのであった。

ほかにも魅力的な作品多数

多様な表現方法で、確固たるメッセージや社会問題への挑戦をあらわしている作品の数々。本当に見応えたっぷりの展示だった。

《 子宮戦士 》 ルー・ヤン、2013-14年


《 遠征する自画像シリーズ:パリ(ノートルダム寺院) 》
ツェン・クォンチ、1983年


***
福岡アジア美術館のコレクション展も、観覧料は一般200円。(特別展は別料金。)
福岡市美術館とあわせて、福岡へお越しの際はぜひ。

いいなと思ったら応援しよう!