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被災した障害福祉サービス事業が行う公的手続きには何がある

この記事を書いている頃は、能登半島地震の発災から約5か月が経ちます
テレビなどでも報道されていますが、復旧・復興はまだまだの様子です
特に、障害福祉関連施設は、被害復旧が3カ月ほど停滞しているようです

5月21日現在:内閣府防災情報より
被災施設数:最大時48件 ⇒ 44件(復旧率:約8.3%)
断水被害数:最大時30件 ⇒ 28件(復旧率:約6.7%)

追加情報:6月4日現在
被災施設数:最大時48件 ⇒ 44件(復旧率:約8.3%)
断水被害数:最大時30件 ⇒  3件(復旧率:約90%)※復旧が進んだ


このような状況を見聞きすると、施設の利用者さんの現状が気になります
他の施設に移ったのか、どこかに移住したのか、生活は大丈夫だろうか

災害発生に対して何を・どのように備えるかを改めて考えさせられます 
とは言っても、想定する災害は多様で、予想しがたいものです

具体的な対策を講じると言っても、何から・どのようにすれば良いのか
真剣に考えれば考えるほど、悩ましい限りだと思います

そこで今回は、ひとつの具体的な対策を紹介します


被災した際の公的手続き

発災から数日経つと、受けた被害(被災)の全容が分かってきます
人、建物、動産物、ライフラインなどなどの被害が明確になります

そんな中で、自分らの生活のほか、事業の運営と利用者の生活を早く復旧させなければなりません

そこで必要となるのが、国や自治体、団体などが提供する支援制度です
人・物・お金は、復旧と復興に欠かせませんので、支援制度を最大限に使うべきでしょう

ただ、制度の利用に際しては、公的手続きという作業が伴います
ほとんどの手続きは、書類又は電子情報の提出によるため、手間と時間がかかります
また、提出先の自治体等における審査や事務処理に時間・日数がかかります

それらのことを含め、主だった公的手続きの概要を以下に紹介します
なお、制度の細部は、災害基本法に基づき指定された災害ごとに、その都度示されます



1.罹災証明等の申請


最もよく耳にする書類・手続きかと思います
生活再建などの支援を受けるために必要となる証明です
被災対象などの条件によって大きく2種類の証明書があります

① 罹災証明書

・住んでいた建物(住家)が対象です
 ※住家以外の建物、建物の付属物、動産物は対象外です
・住家の被害の程度を証明するものです
・罹災証明書交付申請書(定形の書類)によって申請します
 申請者の本人確認書類、被害状況が確認できる写真などを添付します
・申請方法は、市町村窓口に直接申請、郵送申請のほか、電子申請サービス
 (当該市町村が対応している場合)によります

② 罹災届出証明書

・被災した住家以外の建物や動産物が対象です
・被災者からの届出があった事実を証明するものです
 ※被害の程度の判定はしません
・罹災届出書(定形の書類)によって申請します
 申請者の本人確認書類などを添付します
・申請方法は、罹災証明書の手続きと同じです

申請先(書類の提出先)の自治体によって、証明書の名称や添付書類が異なることがありますので、事前に自治体に確認する必要があります

なお、自治体によって、書類の名称が異なります(被災証明書など)

【参考資料】
 被害状況が確認できる写真の撮り方(内閣府発行のパンフレット) 



2.報酬(介護給付費等)の請求

事業所と利用者が被災し、通常どおりの報酬請求の手続ができない場合の処置について、厚労省から都度示されます

① 被災によってサービス提供記録等を失った場合の報酬請求

請求対象月のサービス提供記録等を失った場合は、報酬額を概算で請求することができます
対象月の3か月前からの支払実績から概算額を算出して請求(概算請求)します
例:請求の対象月が12月の場合
  9月から11月までの支払実績を用いて計算します
  計算は、都度示される計算式によって算出します

請求する場合は、国保連への事前相談と概算請求の届出書の提出が必要です

【参考資料】
令和6年能登半島地震に伴う介護給付費等及び障害児通所給付費等の請求の取扱いについて(令和5年12月サービス提供分)
(石川県国民健康保険団体連合会)

② サービス等利用料の支払いが困難な場合の手続

利用者が被災し、利用料の支払いが困難な場合は、支払いを猶予することができます
その際は、利用料を含めて10割の報酬を請求します
なお、食費や居住費などは、従来どおりの取扱いとなります

【参考資料】
令和6年能登半島地震による被災者に係る障害福祉サービス等に係る利用料等の取扱いについて(厚生労働省)



3 被災者支援制度の利用

災害で被災した場合、国や自治体の支援のほか、銀行や団体などからの優遇措置を受けることができます
特に、被災後の生計支援、建物の再建等、事業の資金や雇用に関する制度があります

なお、手続に当たって、罹災証明書や罹災届出証明書などの書類の提示等を求められることがありますので、証明書類の手続きは、事前に完了させておく必要があります

  • 災害弔意金・災害障害見舞金制度

  • 生計支援制度
    被災者成果値再建支援、災害援護資金、生活福祉資金貸付など

  • 税や保険料などの軽減等制度
    国税・地方税の特別措置、保険料等の免除、納付期限の延長など

  • 建物の再建等支援
    災害復興住宅融資、生活福祉資金貸付、障害物除去、住宅の応急修理など

  • 貸付融資制度
    日本政策金融公庫の貸付、小規模事業者経営改善資金、災害復旧貸付など

  • 雇用維持に対する助成制度
    雇用調整助成金など

【参考資料】
被災者支援に関する各種制度の概要(内閣府)
能登半島地震の災害に伴う雇用調整助成金の特例措置(厚生労働省)
能登半島地震の災害に伴う雇用調整助成金の特例措置パンフレット



以上のように主だった公的手続きの概要を紹介しました
なお、これらの手続きは、いくつかの注意点があります

  • こちら側が動かなければ何も起きない・何も出てこない
    (行政等が自動的に行う制度はほとんどありません)

  • 利用できる制度には条件や要件、制限がある

  • ほとんどが、書類の様式が決まっていて、添付書類を必要とする

  • 電子申請サービスは、行政側の対応状況による

  • 制度の種類や書類の名称が自治体によって異なることがある

更に、利用者が行う手続きもありますので、事業所の職員等が利用者をサポートする体制も必要かと考えます
特に、利用者の手続きを受けて事業所側が行う手続きもありますので、利用者の事情等を踏まえたサポートが必要となります

【一例】
利用者が支払う利用料の減免は、利用者側が行う減免手続を受けて、事業所側が利用料を含めた10割請求をするといった手続きもあります


これまでに説明しましたとおり、被災時の公的手続きには、目的に応じていくつもあります
また、手続きの種類や内容によって、決まり事や注意点がまちまちです

被災して大変な状況なのに、手続きに時間と労力、神経を使うのは更につらいことです
行政制度改革や規制緩和などで効率化を図っていても、手続き負担はまだまだ軽くはなりそうもありません

それらを予期できるのであれば、前もって手を打っておくべきでしょう
何もない平常時に、どのような手続きがあり、どのような書類が必要なのかを整理し、準備しておくべきです

冒頭でお話した、災害に備えた具体的な対策のひとつが、この公的手続きの準備という対策です

  • 必要書類の様式を入手しておき、いつでも作成できるようにしておく

  • どんな手続きを、どこに対して、どのようにするのか明確にしておく

  • 手続き担当は誰がするのか、不在の場合の処置はどうするのか決めておく

・・・などなど、今からできることは沢山あることでしょう

そのような取り決めや準備をしておけば、少ない負担で事を進められます
そして、それら全てを手順書やマニュアルとして整備したり、業務継続計画(BCP)に記載しておけば、いつでも誰でも確認できる態勢が整います

今からできる準備は、是非とも行ってください
全ては、利用者さんと事業所の皆さんのためになることです

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