企業と株主との新しい世界観を創る。~FUNDINNO×billage OSAKAイベント第2弾~
2019年2月20日、billage OSAKA内にて日本クラウドキャピタル主催「1万円から投資を募集!?医薬品のEC事業を拡大 〜漢方生薬研究所の新しい資金調達の形〜」が開催されました。
このイベントは「新しい資金調達の形」と題し、billage OSAKAに集まるスタートアップ企業向けに、スタートアップや事業拡大の支援を行うために開催します。
今回は第2回目。第1回目のイベントレポートも公開していますので、ぜひこちらもご一読ください。
今回ご登壇いただいたのはこちらのお二人。
橋口 遼 さん (株式会社漢方生薬研究所 代表取締役 / 株式会社ココシス 取締役)
福岡の通販大手企業の取締役、そのグループ会社の漢方生薬研究所の代表として一般用医薬品やサプリメントをインターネットで販売する事業を展開。FUNDINNOでは第16号案件として、当時、目標額へ最速で達成した案件として注目される。1万円から株主を募集し、株主優待制度を導入するなど、株式投資型クラウドファンディングの中でも新しい取り組みを行い、457名の投資家から2925万円の資金調達を実現。
松田 悠介 さん (株式会社日本クラウドキャピタル Founder)
株式会社スターリーシング、Lonesta Primula Bank 株式会社等多数の会社を設立。2014年に士業コンサルティング、士業への顧客紹介事業を展開する株式会社スターエージェント(現ギャラクト株式会社)の代表取締役として就任。
まずは株式会社日本クラウドキャピタルの松田さんより株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を紹介いただきました。
株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」
FUNDINNOは「FUND」と「INNOVATION」を掛け合わせた造語です。FUNDINNOは株式投資型のクラウドファンディングですが、皆さんがよく聞くのは購入型のクラウドファンディングだと思います。お金を支援する代わりにリターンとして商品やサービスをもらう仕組みです。クラウドファンディングは少数の人から支援をしてもらうというものですが、これを“株式”に転換しました。リターンが株式になるのです。
例えばA社という魅力的なベンチャー企業があり投資をしたいと考えても、A社の株を取り扱う証券会社がなかったため、プラットフォームがありませんでした。しかし、FUNDINNOが証券業として参入することによって、みんなが気に入ったベンチャー企業に対して株式投資ができるようになったのです。
リターンが株式ということは、購入型や寄付型のクラウドファンディングで調達した資金は売り上げになりますが、株式投資型では資本金、資本準備金になります。つまりEquityとして積みあがっていくので、償還が不要なのです。これが株式投資型の大きな特徴といえるでしょう。
FUNDINNOは日本では実にシェア率96%を占めており、日本の市場を寡占している状況ではありますが、海外を見ていると、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどではこの株式投資型クラウドファンディングは乱立しています。アメリカの世界で初めて株式投資型クラウドファンディングを始めたAngelListという会社では、Airbnbやワーナーミュージック、Uberなどがここを利用して募集をしていました。
株式投資型のクラウドファンディングを使うと以下のメリットが挙げられます。
・上場維持のコスト、イニシャルコストがかからない。
・十分資金が集まる。
・群集の仕組みなので大規模なファンができる。
上記のようなメリットを感じてUberなどがAngelListを使用して資金調達をし、AngelListは急成長を遂げました。これがイギリスに波及していきます。日本では中小企業として登記簿謄本ができると地銀や信用銀行に融資に向かいますが、イギリスではCrowdcubeというサービスに登録することが合言葉になっています。Crowdcubeに登録することで自分たちの商品やサービスが本当に市場に認知されるのか、ということを探れるからです。市場の温度やニーズを測れるという点でマーケティング効果もあり、今では一般的に株式投資型クラウドファンディングは浸透しています。2年前よりFUNDINNOも日本でサービスを開始しましたが、最近ではベンチャー界隈では定着しつつあるサービスとなりました。
FUNDINNOのページでは会社概要、財務三表、事業計画書、代表の想いなどを掲載して、ページの中から投資ができるようにしており、金額が目標額に達成したその場でファンディングとなります。
では投資家にとってはどんなメリットがあるのでしょうか。企業がバイアウトした場合、その株にプレミアムが付きますし、IPOして株価が上昇した場合にはキャピタルゲインが取れます。それ以外にも、株主優待や配当をしている場合は株主優待を受け取ったり配当を受け取ったりすることができます。
企業側は先にも少し述べましたが、償還不要のEquity資金が手に入り、企業の成長力を高めらます。
現在FUNDINNOには15,000人越ものユーザーが登録しています。中でもなんと20代から40代の若年層の投資家が多いことが一つ特徴です。ITリテラシーがないとなかなか証券口座自体を開設できないという点と、テクノロジー系の銘柄が多いことが要因と考えられます。今後は40代から50代の投資家も増やしていき、若い企業への投資をどんどんしていってほしいと考えています。
FUNDINNOの仕組みは、
①投資された資金を信託銀行に分別管理(資金の預託)
②募集により新株を発行
③約定後、資金が企業に届く
という流れになっています。資金調達約定後はキャンセル可能期間があり、9日間設けており、募集開始から発行者への振込着金までに約半月~1か月半程を擁しています。
FUNDINNOが掲げている理念は「フェアな金融機関を目指します」。そのために以下のことを行います。
①連続した資金調達環境の整備
資金調達は一度で済むでしょうか。通常は製品開発、マーケティング、人材確保などそれぞれのフェーズでお金は必要です。銀行へ融資をお願いしても与信枠があるため、必要以上の資金は調達できず、返済履歴も不透明だと次の融資が中々受けられません。FUNDINNOでは調達した資金が資本金に積まれるので、バランスシートが調整でき、次に資金調達するときに銀行で融資を受けやすくなります。ゆえに、融資を受けたお金を事業成長に使用して更にバランスシートをよくしていき、またPLにも残っていくので、Equityと融資を繰り返すことで連続して資金調達ができるのです。
②発行者様目線のサービス提供
金融機関に行くと少し高圧的な担当者が多いのですが、FUNDINNOでは銘柄の代表と事業計画や成長戦略を考えます。一人のキャピタリストが一人の銘柄の代表と考えていくので、常に寄り添ったサービスを提供してます。中小企業で問題視されなった部分にフォーカスをあて、ベンチャー育成に取り組んでいきます。
ひとりの銀行の融資担当者、もしくは数名の融資担当チームの下す意思決定の精度は高いとは言えません。貸し倒れや上場しても倒産したりすることがあるからです。これはなぜかというと、知見がその数名に限られてしまうからです。
FUNDINNOでは約15,000人超のユーザーたちに企業理念や財務三表、事業計画などすべて開示して判断をしてもらうため、非常に精度が高いのです。
一人のキャピタリストと300人の学生が投資に関して判断を下した際のリターンを比較するというアメリカの研究があるのですが、キャピタリストのリターンは15%だったのに対し、300人の学生のリターンは45%でした。このような研究結果もあり、FUNDINNOでは集合知という概念を高い位置に置いています。
投資家たちがどのような点で判断をしているのか、というアンケートを取りました。一番多かった回答は「今後成長するかもしれない」そして「製品、サービスに独自性がある」というものでした。
続いて株式会社漢方生薬研究所の橋口さんに登壇いただきました。
株主と一緒に創る漢方生薬研究所
橋口さんはWeb専門の通販屋。最近ではダイレクトマーケティングワークショップという30年続く勉強会の代表理事を兼務してます。また、株式会社漢方生薬研究所のある福岡県は“単品通販王国”といわるほど単品通販(一つの商品を定期的に買ってもらう通販業界の一つのビジネスモデル)をしている会社の多い県です。
通販業界は今や6兆円以上の市場を持ち、着々と市場規模を拡大させている業界です。スマホの普及、高齢社会化による健康市場の拡大、大手企業の参入などが要因として挙げられます。
漢方生薬研究所さんの強みはインターネットのみで展開していること。プロモーションも得意なのですが、どちらからというと0から商品やブランドを作ることにも長けており、これらの経験をもとに4年前に漢方生薬研究所を創立しました。
そもそもコンサルティングをしていたのになぜ自社ブランドを始めたのでしょうか。通販業は模倣品や粗悪品などをインターネットで作って広告費だけで販売する、というビジネスモデルが一番儲かると言われています。しかし、このようなモデルでは儲けは出てもお客様が喜びません。橋口さんはこの状況に嫌気がさし、加えて、旧薬事法、景品表示法に合わせたビジネスモデルに限界も感じ、「自分たちでブランドを作りたい!」と思いました。
また、単品通販はリピートが要です。最初は商品の写真や説明のみで購入しますが、2回目以降は実際に商品を体験して購入するので、1回目と2回目の購入動機が全く異なります。その点漢方では、「健康改善をするには継続して飲まなくては」という意識になるので、単品通販に向いているな、と感じ、漢方に特化することにしました。
しかし、漢方生薬研究所さんが通販業界に参入した時というのは、通販業界自体に変革が起きている時期でした。2000年以前、通販業界は100万円広告費をかければ1000万円もうかる時代。それが2001年から2014年頃になるとインターネットの普及、決済周りの利便性の向上などによりEC市場が拡大し、2015年頃になると類似品が市場に多く出回り、よくわからない状態になっていきました。
広告媒体の値上がり、競合他社との価格闘争、大手企業の参入などでスタートアップには向かない市場となっていった通販業界。お金を積まないと戦えない状況を何とか変えようと橋口さんは考えます。
銀行に融資をお願いしようとしても、通販事業は基本、先行投資型のモデル。事業計画書は赤字になってしまうので、なかなか融資は受けられません。融資が受けられないと会社として急成長もできない…。そんな時にFUNDINNOに出会いました。
勉強会で松田さんや日本クラウドキャピタル代表の大浦さんと出会って話を聞いてみて、橋口さんはとても面白いと感じたそうです。その理由はテック+組織力があると感じたこと。通常、○○テックといわれる企業はテクノロジー先行型です。テクノロジーを先行してどんどん先に行こうとし、そこについていけない人を少し小バカにするような風潮がありました。一方で、新しいテクノロジーを使おうという人の中には、ライセンスや既得権益、既存企業へ配慮をして前に進めない人たちもいます。FUNDINNOはそのテクノロジーとライセンス、金融庁との折衝など、テクノロジーだけではない部分含めて前にどんどん進めていくところがあり、橋口さんはそこに感銘を受けました。こうして橋口さんはFUNDINNOをやろうと決意します。
また、通販とFUNDINNOとの相性もいいと感じました。そう思ったポイントは以下の3点です。
①顧客親和性
通販では類似品が多く出回ります。顧客は「品質が良くて安いもの」という視点で商品を探しているので、企業側はそういう点をよく理解しています。なので、あまり説明責任を果たさなくてもよいという状況がありました。しかしFUNDINNOを使用すれば、上場した後の株主総会などを開かなくても顧客に説明ができる機会を設けることができるのです。
②PRとしての活動
FUNDINNOはメディアにとても活用されます。メディアに取り上げられることで、時には数億円分の広告効果を見込めることがあります。
③消費者=株主
橋口さんはずっと「消費者の皆様に株主になってもらいたい」と考えていました。しかし法律など様々な壁があります。FUNDINNOを使用することでその期待がかなえられるのではと考えました。
実際に募集をかけてみました。目標は1200万円、上限は3000万円。なんと目標金額を9分で調達し、上限金額を1時間45分で達成しました。どのようにこれらの数字をたたき出したのでしょうか。
3000万円は457名の人たちに支援していただきました。実は457名の内4名はもともとのお客様なのです。この4名という数字に橋口さんはとても可能性を感じていました。この募集は事前告知として1週間しかありませんでしたが、FUNDINNOの投資家登録には5日間かかります。その5日間を乗り越えて、募集開始までパソコンの前で待機してくれてようやく株を買えた、というお客様が4名もいるのです。これはすごいと思いました。
また、橋口さんは募集のコースにFUNDINNO史上初めて1万円コースを設けました。50万円、30万円、10万円とほかのコースも設けた中で、この1万円コースを購入した人が278名。株主数はFUNDINNOの銘柄の中ではトップでした。
ちなみに調達した資金を何に使用したかというと、「遺伝子×AI×アプリ」ということで『いでんし手帳』というアプリをリリースするのとその広告費に使用しました。(iOS版のみ)提携している遺伝子検査を一元管理でき、また家族・友達同士でデータもシェアできるアプリです。現在は検体数が1000人分も集まりました。
FUNDINNOを使用することで効果・反響が色々ありました。株主が会社へ訪問してくださったり、また、IRが面白くなりました。普通の会社ではIPOを目指していたり、単発的にVCにアピールしたりする機会でもない限り、PRには注力するのですが、IRにはあまり注力しないものです。しかし、全体としてPRとIRの両方を考えようとすると自然と社員の考え方も変わってくるもので、そういう点が面白いなと思いました。また、メディアからの取材も来るようになりました。
先程松田さんも言っていたのですが、銀行は過去を見て融資をするか否かを決めます。しかし、ファンドは未来の可能性や期待感から投資をします。そのバランスが難しいのですが、FUNDINNOだと調達した資金は貸借対照表上の資本の部に加算されるので、資本の部が厚くなっていきます。(増資)そうすると、銀行などのデット・ファイナンスが調達しやすくなるのです。実際にFUNDINNOでの調達後に銀行から与信枠を増やせますよ、と連絡がありました。ダブルで資金が調達しやすくなりましたね。
今後は株主たちと商品開発をしたいと考えていますので、購入型クラウドファンディングに挑戦したいと考えています。また、株主招集通知開封率を100%にして、株主総会の出席率をグンと上げたいです。株主消費者比率(株主の中の消費者の比率)のKPIも作成し、経営の基盤としていきたい、そして経営や商品開発などに関して株主と一緒に考えて、株主のコミュニティ、ゆくゆくは株主からスタッフ採用もしたいと考えています。
実現したい世界観は以下の3点だと橋口さんは話します。
①株主消費者世界での共同創造
②経営指標をみんなで一つに
③TOB(株主公開買付)を実施して長期保有者への株主優待券
また、今後の方向性としてIPOをするのか、事業をバイアウトするのかとよく聞かれるのですが、投資家の人たちもその方向性を見て投資判断を下す人が多いです。IPOをすればわかりやすいリターンが返ってきますし、バイアウトも投資した分返ってきます。投資家の望みとしては自分が投資した分が返ってくるか、+で返ってくるかです。
橋口さんは株主優待に関して新たな取り組みを行いました。通常株主優待は単発的なものが多いです。優待券を使用してその時に買った商品が何割引き…。など。しかし漢方生薬研究所さんでは株を長期保有していれば、保有している期間ずっと割引をする、という優待を設けたのです。アクティブで商品を購入してくれる今のお客様にとって、1万円だけ株を保有していればさらに安くなる、だから株主になろう、という考え方にすることができるのです。
まだ前例がないことも多く、大変なところも多いですが、だからこそ挑戦していきたいと橋口さんは話しました。
トークセッション
会場からの質問を中心に橋口さんと松田さんにトークセッションをしていただきました。最初の質問はこちら。
橋口さん
「具体的な内容としては定期価格から割引、という内容を実装していました。
株主優待は通常、利益から配当金を出すことが多いのですが、株を保有している限り有効、というものはあまりないんですよ。利益が減ってしまうからですね。しかし、弊社では長く株を保有している方がお得、ということに取り組みました。やってみたい、ということもましたが、そっちの方がいいと考えたからです。他社の事例も見てみて、どうせ同じ商品を使おうと思うなら株主の枠を使用しよう、と消費者も考えるのではないかと思いました。
また、通販で薬品というのは差別化がとても難しいのです。薬品はすべて同じ製法で作らなくてはならないので、プロダクト自体で差別化はできません。差別化をするならば会社のファンになってもらって継続的に購入してもらう必要があると感じたことも理由の一つです。」
漢方生薬研究所さんが初めてこの株主優待を実装した、ということでその後の派生に関して松田さんからもお話をいただきました。
松田さん
「漢方生薬研究所さんのあとからもアパレル系の会社さんが同じような株主優待を実装した、という事例もありました。この方法はBtoCの企業には特に親和性が高いといえますね。
20年ほど前、トマトジュース界隈でも同じようなことが起きました。今でこそトマトジュース業界を牛耳っているカゴメさんですが、当時、他の企業と差別化するために行った施策が株主を増やすことでした。原材料がほとんど同じのトマトジュースでは味で差別化ができないので、ファンを増やそうと考えたのです。
株主優待で継続的に株主に商品を送ることでファンを作り、幼少期から『トマトジュースといえばカゴメ』と思わせることができ、またその人たちが成長したら啓蒙をしてくれる、という流れを作ってきたという歴史があります。なのでBtoCの業界では『ファン株主』を作っていくといいと思います。」
橋口さん
「相性いいですよね。」
松田さん
「相性いいですね。」
橋口さん
「株主の方達に対して新商品に関するアンケートを送ったのですが、普通にやると30分くらいの大変なアンケートだったんですね。普通にお客様に送ったら無視されるんでしょうけれど、457名の株主さんに送ったらなんと260名も返答がありまして!すごいなと思いました。
先行で新商品をリリースした時も反応がありましたし、また、ざっくりとしたアイデアや応援メールが来たりと、いろいろとレスポンスもいただけました。
商品開発は1年2年かかりますが、そういう意見を出してくれたりするアクティブな人たちをどんどん巻き込むことで長く商品を買っていただけるのでは、と仮説は立てています。」
松田さん
「ファンですからね。」
橋口さん
「そうですね、きちんとしないといけないとも思うので、緊張感もありますね。」
松田さん
「株主総会は通常、面倒なものと思われがちですが、株主総会は自分たちの今後や今までの頑張りをファンの皆さんにお披露目する場でもあります。FUNDINNOはフェアな金融機関を目指していますので、そういったお披露目の場となる株主総会も推奨していますし、そうすることでファンの支援が増えてきて、業績が伸びると考えています。株主も従業員も取引先もすべて巻き込んで会社のバリューを成長させる世界観を創る、ということなので、今後の橋口さんには大変期待しています。」
橋口さん
「それでいうと、私もいくつか株を持っているのですが、自分も株主総会に行こうと思うときは決算書を見るんですね。すると経営が危なかったりすることもあるのですが、そういう時に株主総会に来る人がスタートアップ界隈では多いようです。弊社は11月決算なので1月の末に株主総会を開きました。告知が1か月前だったことと、場所が東京の五反田だったということもあって、当日誰も来なかったんです。これは間違っているな、と思って、そこで『今年は株主総会にいっぱい来てもらう』というKPIができました。
決算書は黒字だったのでその時はよかったのですが、次からは開催日の曜日や時間帯を変えて、告知も2カ月前にはやって、特典やプレゼントもつけて、そうして株主に来てもらうための株主総会を目指そうと考えています。」
株主は出資者ではなくてファン、もっと言えば事業パートナーとして捉えているのですね。
松田さん
「FUNDINNOを利用しているBtoB企業の比率は87%~88%くらいで、圧倒的に多いんですね。また、FUNDINNOのプラットフォームを見ている人は大方が投資家、そしてFUNDINNOのサービスに興味を持ってくれた一般の方と様々ですが、中にはプロの投資家もいます。VCや銀行の人たちですね。この人たちは掲載している中小企業の表情も見ているんです。すると、資金調達以外にアライアンスを組みたいという問い合わせが増える、ということもあります。
またFUNDINNO内での企業同士のマッチングやFUNDINNO以外の場面でのVCからの投資、銀行からの融資、さらにはアライアンスから顧客に転じるということが最近では続発しています。現状ではこのような色々なコネクトが生まれてきた、という状況がBtoBの企業には魅力的に見えているのではないでしょうか。今後はもっと違う展開もあるかと思います。
BtoCではファンができる、BtoBではパートナーと出会える。この点がFUNDINNOのバリューではないかと考えています。」
松田さん
「何度もご説明しているように、僕たちは『フェアな金融機関』を目指しています。特にベンチャーに特化していることもありますが、こういう会社だからだめ、こういう会社だからいい、という線引きはしていません。
過去の事例では登記3ヵ月で出展した企業もありました。もちろん売り上げはゼロですし、システム開発も完了していません。しかし、こういうことを実現したいんだという絵を描き、それを事業計画にきちんと落としこみました。それを見た人たちの集合知で資金調達に成功した、ということもあります。
わかりやすく言うと成長性があったのです。これなら出資したい、これなら将来成長するだろう、という投資家たちの集合知で成功しました。会社ではなくモデルが重要なのです。投資家たちは今後成長するであろう会社に投資をしたいのです。
VCとFUNDINNOの違いは中立であるか否か、というところにあります。VCはバックに数千人の投資家を抱えています。投資家の出したお金を預かって投資先をVCが決めています。なので、VCの仕事は低リスクで早くキャピタルゲインをして、かつリターンを投資家に返すことなのです。一方で、FUNDINNOは成長性のある企業をプラットフォーム上に掲載することまでしかしません。あくまで投資の意思は投資家自身が持っており、FUNDINNOは出展企業と投資家を直接金融で結ぶだけの役割なんです。ここが大きくVCとは違うところになります。
FUNDINNOで重要視しているのは成長性ともう一つは独自性です。差別性があるか、という点です。先程話にも出ましたが、トマトジュースは差別化が難しいですよね。独自力で勝負ができるという点を2番目くらいに重視しています。
3番目は財務の点です。投資家の保護という観点からある程度は債務の部分などもチェックしています。あまりにも営業キャッシュフローで黒字に転換する見込みがなければお断りするケースもありますね。
成長性・独自性・財務の3点をFUNDINNOでは重視しています。」
“アイデアだけの段階でくすぶってるような会社にはどんどん応募してほしいという認識でいいのでしょうか?”
松田さん
「おっしゃる通りですね。FUNDINNOとしてはそういった会社の方にどんどん応募してほしいと考えています。僕たちが草の根的にいろいろな会社と話しているのも、そういった会社に応募してほしいという想いがあるからです。ビジネスモデルがしっかりしていれば、ぜひ募集していただきたいと考えていますし、大学の学内ベンチャーなど年齢や社歴に関係なく募集していただきたいです。
ただ、実現性はどうなのか、という点ももちろん考えていただきたいです。」
橋口さん
「確実に売れる方法ですよね?(笑)話せる範囲で申しますと、商品開発と同時に広告開発も考えていただきたいですね。いい商品を作ろうという方はいっぱいますし、実際にいい商品は世の中にはたくさんあります。しかしどのように売っていくのかというところまで考えられている人は実はそんなにいないんですね。だから広告代理店やマーケティングの会社が成り立っているのでしょうし。商品だけではなく、併せて売り方の部分も考えましょう。」
橋口さん
「株主の比率で言うと、漢方生薬研究所の僕が持っている株の放出は7%なんです。実質66%持っていれば経営権はある状態なので、どの権限で経営をしたいのかを間違えなければそんなに心配することはありません。
他の点で言うと、先ほども申したように現状、株主総会の出席率が0%なので、ここを伸ばしていきたい、という点と、あとは創業期で倍々ペースで来ているので、仕入れるほどお金が無くなる状況で、売れなくなる時代ももうすぐ到来する…。ますますこの動きは加速する中で生き残っていきたい、という点が今一番思っていることです。生き残ります!(笑)」
松田さん
「最終的には0.何%で株主の集合知が形成されていくので、特別、支配権に関しては問題はないと考えています。また、仕組みとして、まず最初に事業計画を提示するので、そこから5年後などの時価総額を算出します。現状の時価総額の数%だけを株として放出するので、実質の経営権にはあまり影響がありません。加えてファンが増え、償還しなくてもいい資金が増え、それを事業に投下できる、このモデルがFUNDINNOの一番の魅力であるといえます。
僕たちの課題としては片方向であるという点です。投資家たちは出資して株を保有して、あとは待つだけ。これを株主コミュニティを作ってバイセルできるようにしようと、今はこの流通市場を作ろうと考えています。
今の日本にはベンチャーの力が必要です。ベンチャーの力なくしては日本のGDPは向上しないでしょう。しかし、今の日本は世界と比べて圧倒的にベンチャーの数も企業数も少ないのです。それはファイナンスがぜい弱だから。
僕たちは大義と正義と理念をもって、この課題に細かく取り組んできましたし、これからも取り組んでいきます。」
このあと30分ほどの交流会と相談会をしてイベントは終了しました。
資金調達のことももちろんですが、お二人の今後の展望や想いがたくさん込められたイベントでした。
漢方生薬研究所さんのホームページ
FUNDINNOさんのホームページ
billage OSAKAではこれからもこのようなイベントを随時開催します!
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