#7-5 そうだ! 路地(ロウジ)を直そう
わざわざ自分たちでやる価値
今年の三田屋オフキャンパス建築改修チーム(中学生、高校生、大学生、大学院生、社会人の混成チーム!)は「町家の路地(ロウジ)」の修復に取り組みました。既存の路地は雨漏りがひどく、垂木や野地板、柱、基礎もガタガタでした。いつ本格的な改修が行われるかわからないため、それまでに崩壊しないよう簡易な改修を行いました。腐っている部材を解体する際には実測作業も並行しています。この記録は、路地の形成過程を明らかにする資料になると考えています。
というのは、三田屋の路地は、始めから内部化されていたものではなく、軒先の屋外空間に下屋(主屋に後付けされた片流れの屋根)がかかり、その後、建具がはめられて内部化されたのではないかと推測しているからです。形成過程がわかれば、本格的な改修計画の際、いつ頃の状態に戻していくかのヒントになります。
建具は、足元(下框)が腐り、ガラスが割れていました。一枚一枚使える部分と交換する部材を吟味して修繕し、足りない部分については新たに建具を製作しました。出来上がった空間は、地元の方も驚くほど見違えました。きれいに拭き上げられたガラス越しにみる屋外は美しく、距離も近く感じます。「次は庭をどうにかしないと」という気持ちが自然に湧いてくるから不思議です。
昔は(特に農家では)自分の暮らしにかかわるモノやコトの多くを、自分の手でつくり、修繕していました。現在、我々は、暮らしや仕事の大部分を「サービス」という形で対価を支払い外注化しています。建物の修繕や修復は、工務店や大工さんに頼めば早くできるかもしれません。しかし、「自分でやってみること」のなかには、モノが出来上がるだけでなく、技術の継承を含んだ学びや文化への理解、協働の楽しさ、その過程自体や工夫する喜び、自分でできることへの誇りなど、さまざまな価値が含まれています。そして、身の回りの環境にコミットし、自分たちで整えていけるという実感が、大人にも子供にも重要だと感じています。遠野オフキャンパスで、わざわざ自分たちの手で調査や計画、実施(施工)を行うのは、そういった価値を取り戻したいということが、その根底にあるように思います。
(文・安宅研太郎)
作業日記
基礎が歪み、桁が曲がり、垂木の屋根と一部がボロボロの状態。
基礎を水平に