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透視図法の勉強方法について 【透視図法の科学0】

どうも透視図法オタクのお絵描きホーホー論です。今回はお絵描きで透視図法を使うときに、どのような知識を持っていれば迷わずパース作画作業が進められるかを突き詰めた結果、理論的な三つの視点から透視図法の仕組みをメタ認知することと、透視図法に関する用語や手法の名称をからめて要約することで、客観的かつ体系的なイメージを掴んで安心して透視図法を使うことができるという結論にたどり着いたので、そのことをわかりやすく解説します。

その三つの視点とは何か。一つ目は透視図法という呼び名の由来にもなっている、透視図法の装置の仕組みについて考える視点。二つ目は消失点やアイレベルを使って、いくつかの直線を描いて作図する図学的な理論としての視点。三つ目は透視図法を使って描いた絵は、人間が肉眼で見ている風景と異なるかどうか、違和感のある絵なのかどうかという透視図法と肉眼との矛盾を考える視点。つまり、透視図法とはどういうものなのかを三次元的に捉える具象的な視点、図学として使うために二次元的に捉える抽象的な視点、そして理論的に信用できるのかという視点、この三つです。透視図法をお絵描きに使うには必ず二次元的に捉える抽象的な視点に立ち、そこから三次元との矛盾点を考察します。抽象的な視点に立つために透視図法を幾何学に置き換え、それにより再現性のある手順を言語化していく、つまり理論化していくというわけです。

この三つの視点を獲得できると、多くの人が犯してしまいがちな透視図法の間違った運用方法を回避することできます。この間違いというのは、勉強不足だから犯すものではなく、ただひたすら透視図法はデリケートな理論だから仕方のない失敗なのです。これから解説する三つの視点を獲得できていれば、パース作画の違和感が透視図法の機能の限界によるものではなく、デリケートな透視図法に無茶振りをしていたのだと気づけるようになります。つまり、三つの視点を獲得するメリットは、透視図法に詳しくなるというよりは、間違いを犯さなくなったり、仮に間違っても原因を特定できるようになる、というのが大きいです。

この記事には、透視図法を正しく理解するための三つの視点という考え方に加えて、透視図法に関する用語辞典を収録していきます。透視図法をメタ的に理解し、用語を覚えられる、そんな教材として書いています。後ほど本編の記事を随時公開していきます。だいたい5~6パートくらいに分割して「透視図法装置と空間」「幾何学と透視図法の原則」「作図手法の種類」「実用化と応用」「透視図法の認知脳科学」「勉強効率化と教材紹介」といった区切りでまとめていきます。

下図は「透視図法の科学」シリーズで執筆する知識体系の例で、今回の記事で解説する範囲の「序論」と「透視図法概論」を示しています。以降の項目も執筆が晋につれて多少は変化していくと思いますが、記事購入の際の参考にして貰えればと思います。

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図 透視図法の全知識をまとめたマインドマップ

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図 上のマインドマップを簡略化したもの

※以後の【note】の部分は憶測が含まれます。この部分については根拠の確認が取れ次第改善する予定の部分です。

【はじめに】

透視図法の勉強で苦労している皆さんへ

僕の透視図法歴はそこそこで、割と高密度な向き合い方をしてきました。2013年頃に透視図法入門して以来、長い時間をかけて勉強してきて、ほぼ全てを理解できるようになったのは2018年頃でした。基礎の理解に5年近くかかったのは、ひとえに適切な教材選びの難しさが原因でした。全く知識のない初心者が教材の善し悪しを判断することは不可能なのに、透視図法を正しく理解できる良い教材の存在が周知されていないことが、結果として初心者の透視図法への苦手意識を増長している気がします。

透視図法の教材は数多ありますが、それらの多くはちょっとかじった程度の知識の著者が完全初心者向けに書いたものか、建築パースの現場やガチの芸術の現場などの専門家向けのもので、いわば「理論の解説より手順の紹介を重視」した入門書や専門書に遭遇することが多い印象です。もっとその中間レベルを対象にしたような「透視図法の原理を理解したい」というニーズに答えた本が必要なのです。透視図法の原理とは人の認知能力に関わる要素もあり、多岐にわたる知識が必要となるためかなりニッチな内容となり、需要が無いと思われて数が少ないのかもしれません。そして透視図法をお絵描きに応用するにはどうしても臨機応変な対応が求められるので原理の理解は必須ですが、手に取った本が良い本であったかが判明するのは結局は透視図法が理解できた後になります。ちなみに僕はこれまでに透視図法やパース関連の書籍を十冊程度購入したことがありますが、透視図法への理解が始まったのは良い本に出会ったときではなく、なんと2016年頃に専門家のTwitterアカウントを見つけた時でした。結局、理論を理解できるまで何が良い本なのか判別できませんでした。

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図 教則本の分類

皆さんはどうやって透視図法の勉強をしていますか?僕と同じように非効率な勉強をしている透視図法ユーザーは多いと思います。現在はTwitterで透視図法を解説したり、お絵描きに使えるノウハウをシェアしてくれる人が多いですが、結局それをインプットするのは透視図法を勉強中の人です。つまり、いくら詳しい人が知識を分け与えてくれても、それを解釈する側の人が誤解や曲解をしてしまったりそもそも理解が追いつかなかったりすると、せっかく有益な情報がタイムラインを流れているのに、まるで入手困難なレアアイテムが並べられたショーウィンドウの前で指をくわえて眺めるだけになってしまいます。それをショーウィンドウごしではなく、自分で手に取って分解したり組み立てたりと試行錯誤をする為のカギが必要です。それは言わずもがな透視図法の知識体系のことです。

透視図法の知識がなくてもお絵描きは楽しめるので、自分のレベルに合わせて学べばいいと思いますし、知りたいと感じた時に学んでおくというだけで十分だと思います。知識体系というものはそのまま暗記するのではなく、個々人の既存の知識と結びつけることで記憶するものなので、興味が湧いた状態でないとなかなか身につきません。この記事ではできる限り平易な説明を心がけますが、情報量が多いので一回で理解するのは大変かもしれません。なので、もし興味が湧いたときにこの記事に目を通してみてください。

透視図法ライトユーザーのススメ

透視図法の原理について、その全ての知識をお絵描きに全力投入するわけではありません。この辺りが誤解を受けやすい部分なのですが、透視図法をお絵描きで利用するときには必要な機能をピンポイントでちょこっとだけ使うことの方が多いです。よく耳にする「自由に絵を描くのには透視図法に縛られてはいけない」という考えはまさにその通りで、一から十まで透視図法に従うわけではありません。ただこの考え方とセットで「透視図法の機能は部分的に使うものだ」ということまで指摘されていればより的確だと思います。

例えば、被写体のアングルを正確に作画したいときは足線法を使って平面図上でアングル調整したものを透視図に変換したり、被写体の奥行き方向の位置関係を知る為に地面に正方形をタイル状に作図して距離感を可視化したり、建築物の壁面の模様を正確にパースに乗せるときにはM点法で奥行き方向の間隔を測定したり、このように、ある目的に対して最適化された手順というものがすでに発明されています。

初心者はまず、透視図法の全てを理解しなくとも十分に使いこなせるということを知っておくべきです。ただそのときに部分的に持ってきた透視図法の機能が、知識体系全体のどの辺りの位置に属するものなのか、それが分かっていないために、まだ覚えるべきことが大量に残っていると思い込んで難しいと感じてしまいます。重要なのは、部分的に学ぶ際にもそれがどういう文脈で使われているかを把握しながら使うことなので、たとえ一部であっても正しく理解しておけば完璧と言っても差し支えありません。不要なことまで覚える必要はないのです。

絵を描いている時に何かしらの問題に遭遇すると、それを解決するには透視図法を学ばなくてはいけません。そのときに知識体系が構築されていない段階で、例えばM点法のみを使おうとすると、わけの分からない作図手順をそっくりそのまま真似するしかありません。もしこの時に知識体系だけでも把握できていると、M点法は何をするための手法で、どういった原理からの派生で、どういった機能の組み合わせで構成されているか、といったことが初めから把握できた状態になります。であれば、自分がこれから作図しようとしている目的に必要な作図手順が見えてきます。初心者が透視図法を効率的に理解するには知識体系のピンポイントな知識への最短距離となる道しるべが必要です。

その透視図法の全知識がまとめられた知識体系という道しるべの中から、実践する過程で必要にかられた部分的な知識と、既知情報や閃きとの結びつきが始まり、その瞬間に必要な手順を編み出すと同時に知識体系全体の理解も捗ります。初っ端から難しい理論を全て理解しようと気張る必要はないのです。

透視図法ヘビーユーザーのススメ

いずれにせよ透視図法は廃れつつある技法かも知れません。3DCGは、遠近感が正確なうえ様々な試行錯誤がしやすいテクノロジーです。2DCGでも平面図を遠近変形させられるので、遠近感を気にせず平面的に作画した後でパース調整することもできます。ただ、そんな中でも人間しかできない表現という最後の砦はどこかに残されています。3DCGでは嘘がつけないのでモデリング段階で嘘を盛り込む必要がありますし、2DCGの遠近変形も画角や被写体寸法を踏まえると3DCG並みの正確さを再現するには透視図法の知識による遠近感の調整が必要です。そう、古い知識を持っている事に越したことはないのです。

【note】
廃れた手法は無能だから手放されたのではない。上位互換が現れて、吸収された。つまり昇華された。上位互換があるからといって古いやり方が無くなってもいいわけではない。上位互換はいわゆるβ版で、どこにバグがあるかわからない。

透視図法の知識はアナログで絵を描くことだけでなく、トリックアートや空間デザインのように目の錯覚を利用する分野の作品で活かせますし、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)のように鑑賞者が作品の周りをウロウロと空間移動することを前提とした3Dモデリングにも応用できるかもしれません。透視図法とは、絵を描くための手法ではなく、人が空間認識をするという現象を抽象化した概念だと捉えるべきなのかもしれません。そういった概念をお絵描きに応用しようとしているのだから、理論をそのまま使おうとしてもどこかで破綻してしまいます。だからこそ必要な部分のみを取り出してきて、最適化された手法として透視図法を編集するために、基礎理論の知識体系を獲得しておく必要があります。

絵を描くことを目的とする透視図法の運用では、透視図法の全てを理解する必要はありません。しかし、透視図法でできる表現を試行錯誤するには全てを理解しておくと有利です。このような習得の度合いを小説の執筆にたとえると、相手に状況説明をするだけなら率直な文章で済みますが、相手に情緒まで伝えようとしたら巧みな言い回しや語彙を使う文章にする必要があります。つまり、絵を描くだけなら透視図法の基礎だけ学べば十分で、一方で透視図法を使い倒して新たな表現の実現や効率的な作画法の発明をしたいなら全てを理解すればいいということです。そう考えると、透視図法の運用方法は、クリスタやフォトショなどの扱いと大して違わないと思えてきます。どれくらい勉強すればCGソフトが扱えるようになるかという感覚で、透視図法にも向き合えばいいと思います。

全ての透視図法ユーザーに捧ぐ

この記事には、透視図法を理解する為の三つの視点で理論的な正誤を判断する方法と、透視図法の用語をカテゴリ別にまとめて覚えやすくした用語辞典が収録されています。これは「判断力」と「知識体系」をセットで習得できれば、そこから独自の解釈の枝を伸ばして自由に知識体系を拡張できると思ったからです。今回ここで提示される知識体系を踏み台にして、透視図法ユーザー各位の実践によって洗練された、あるいはピンポイントな場面に最適化された新たなノウハウを発明しまくってください。


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