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【シンポジウム開催報告】環境調和的で人々の幸福も叶える、新たな産業とは? –OEGs公開シンポジウム2024を開催しました

2024年7月31日、One Earth Guardians公開シンポジウム2024「人と地球のwell-beingを叶える新たな産業とは -微細藻類を基点に」を開催しました。

【東京大学 One Earth Guardians 公開シンポジウム2024 開催概要】
人と地球のwell-beingを叶える新たな産業とは -微細藻類を基点に
[日時]2024年7月31日(水)18:15~20:20
[会場] 東京大学 HASEKO-KUMA HALL(本郷キャンパス 工学部11号館) 
    +Zoomウェビナー(ハイブリッド)


  • 講演1 | サーキュラーバイオエコノミーの本質:ネイチャーポジティブとウェルビーイングの共存する未来
    五十嵐 圭日子 /東京大学大学院農学生命科学研究科 教授

  • 講演2 | Well-beingにまつわる国内外の動向
    石川 善樹 氏 /公益財団法人 Well-being for Planet Earth 代表理事 (*オンライン登壇)

  • 講演3 | 生物の力で、光合成を基点とした産業構造を組み上げる
    藤田 朋宏 氏/ちとせグループ Founder & CEO

  • パネルディスカッション | 人と地球のwell-beingを叶える新たな産業とは

  • 新講座「共生型新産業創出コロキウム」受講者募集について


この記事では、講演やディスカッションの様子を簡単にご報告します。
また、シンポジウムにて紹介した新講座「共生型新産業創出コロキウム」の受講者募集についても最後にご紹介していますのでご覧ください。

*シンポジウムのアーカイブ映像はOEGs公式YouTubeでもご覧いただけます!


開催の趣旨

昨今、「ネイチャーポジティブ」や「バイオエコノミー」、「バイオものづくり」といった概念が注目されているように、生物の力を活用しながらも、同時に、生物圏にできるだけ負荷をかけない社会のあり方が求められています。ただし、環境調和的であることを求めるあまり、人々の幸福が見過ごされてはなりません。環境と調和し共生しながら、人々のwell-beingも叶えるような、人々の生活や社会を支える産業とは?私たちは、このようなこれからの産業を“共生型”産業と呼ぶことにしました。

いま注目の集まる微細藻類を切り口に考える共生型産業とはどのようなものなのか?ヒトと他の生物、ヒトと環境、今を生きる世代と将来世代、さまざまな共生を叶える産業のあり方と、それを通じて社会をどのように変革していくのかを考える機会とするのが今回のシンポジウムの目的でした。

講演1 | サーキュラーバイオエコノミーの本質:ネイチャーポジティブとウェルビーイングの共存する未来

五十嵐 圭日子 /東京大学大学院農学生命科学研究科 教授

五十嵐圭日子 教授

最初の講演者である五十嵐教授は、生物圏に負荷をかけない経済活動「バイオエコノミー」を紹介し、これまで使っていた資源やエネルギーの”バイオ化”にとどまらず、さまざまな活動の評価も経済性ではなく”バイオ”の視点から行うようシフトしていくことが大切だと指摘しました。また、現在追求される「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を実現するには、循環するためにエネルギーを余計に使うのではなく、生物の力を活用しながら生物圏に負荷をかけない「バイオエコノミー」化が必要となり、世界は「サーキュラー・バイオエコノミー」へ向かっていくことになると説明しました。

さらに、自然を回復させようとする「ネイチャーポジティブ」と、人間のウェルビーイングは短期的には対立構造になりがちだが、一方で、地球環境が悪化すれば人間も住みにくくなり、人間の住みやすさを追求すれば地球環境を持続させなければならなくなるので、いまは相反しているものをいかに融合させていくかが重要である、と強調しました。

講演2 | Well-beingにまつわる国内外の動向

石川 善樹 氏 /公益財団法人 Well-being for Planet Earth 代表理事 

石川善樹氏はオンラインで登壇

続く石川氏はオンラインで出演し、ウェルビーイングをめぐる世界の最新動向を紹介しました。いま、「SDGs」の次に目指すべき目標に向けた議論がされており、これからの指標/価値として大切なのは、現在はまだ存在していない将来の世代に「正の遺産」をつなぐことであると語りました。この「正の遺産」をウェルビーイングと呼ぶことが合意となりつつあり、国際社会はポストSDGsとして、人のみならず社会や地球も含めた持続的ウェルビーイングを目指す「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」へ向けて動こうとしていると解説しました。

また、SDGsの目標の中には、達成に向けた取り組みが人々のウェルビーイングとトレードオフになるものもあるが、対立軸ではなく、人と地球環境のウェルビーイングをどう両立させていくかに目を向けることが重要だと、先の五十嵐教授と同じ指摘にも触れていました。

講演3 | 生物の力で、光合成を基点とした産業構造を組み上げる

藤田 朋宏 氏/ちとせグループ Founder & CEO

藤田朋宏氏

冒頭で「化石資源が前提の世界から、光合成を基点としたバイオの時代を到来させる」というちとせグループの目指す社会像を提示した藤田氏は、つづいてその実現に向けた自社の取り組みを具体的に紹介しました。太陽光と二酸化炭素を用いて増殖させる「独立栄養方式」によってこそ、社会に必要な物質の生産と二酸化炭素吸収を両立させる課題解決に貢献すること、世界のトウモロコシ畑と同じ面積で藻類を生産できたとしたら現在抱える多くの社会問題の解決に貢献するポテンシャルがあるということを、量的な関係も示しながら説明しました。

また、社会にはびこるグリーンウォッシュにも言及しました。経済収支だけでなく、なにが環境にいいのかを科学的に見極め投資をしていく重要性を指摘したうえで、科学的事実を重視し同時に資本主義も重視することを目指したいと、自身のビジネスへの思いも語りました。

パネルディスカッション | 人と地球のwell-beingを叶える新たな産業とは  

オンライン出演の石川氏を含めた講演者同士のパネルディスカッション

パネルディスカッションは、司会からの問いに応えてもらう形で進行しました。その一つは「将来世代に配慮した産業を、いまの私たちが興すことは可能なのか。そのために何が必要か」です。

石川氏は、年齢が上がるにつれて現状維持に傾きやすいという人間の性質に触れたうえで、政治も含め社会構造が、将来世代について考えづらい状況にあるという問題に目を向けました。藤田氏は漁獲制限などが機能している例を挙げながら、将来世代を考えた強制力のある仕組みをつくることへの関心を示しました。五十嵐教授は教育に注目し、学校で「環境」が教科として組み入れられ、子供たちがそれらを身に着けたうえで成人になることへの期待を語りつつ、そのような思いからOEGs育成プログラムを立ち上げた経緯にも触れました。

教育という点について、会場の参加者からは「教育すればいいという話はよく聞くが、実際の教育現場は大変だという現状もある中で、日本はほかの国と比べて何が問題なのか」という質問がありました。五十嵐教授は、日本ではカリキュラムが詰め込まれて余裕のない状況があるが、空いている時間で自らの興味を高めるような基本的な時間の余裕があるかどうかが、他の国とは違うのではないか」と自らの考えを伝えました。

新講座「共生型新産業創出コロキウム」受講者募集について

シンポジウムの最後に、One Earth Guardians育成プログラムが今年10月に新たに開講する新講座「共生型新産業創出コロキウム」のアナウンスと、受講者募集説明を行いました。社会人と大学生・大学院生(東京大学に限らない)が共に受講することができる本講座は、多彩な講師陣によるオムニバス形式の講義と、微細藻類を活用する企業の現場からのインプットや問題提起のほか、微細藻類を実際に扱う実習やフィールドワークによって構成されます。
この講座はまた、これからの新しい産業を考えるモチベーションと力を持つ人材のコミュニティを形成することも目指しています。


*新講座「共生型新産業創出コロキウム」受講者募集中 (9月10日〆切)

▼ 講座と応募についての詳細はこちらをご覧ください。
https://one-earth-guardians-colloquium2024.peatix.com/

<応募方法>
募集要項 に記載された申請フォームよりご応募ください。 〆切は9月10日(火)で、書類審査の上、2024年9月19日(木)にメールにて結果を通知予定です。

環境調和や共生を軸に新たな産業を考え、興し、率いていきたいという方、ぜひご応募ください!



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