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夫が大事にしていた絵画
夫はアートが好きな人でした。
かなり前に義妹が画廊に勤めていて、その時に海外のある作家さんの絵を3枚購入したそうです。ずっと箱にしまって保管していたので、私もよく見ていなかったのですが、当時義妹もその作家さんの絵を購入したそうなので、きょうだい揃ってとても気に入って購入したのだと思います。夫は当時勤めていた可愛い妹のため、おそらく売上に貢献してあげたかったのだとも思います。夫にはそういうきょうだい思いでとても優しいところがあります。
私と再婚した直後の賃貸マンションは、2畳は楽にあるトランクルームがついていました。それで壁には飾れなかったそれらの絵画は箱ごと3枚そこに保管しました。
子供達が自立し、私達夫婦は、夫がもともと所有して他人に貸していた部屋に引っ越すことになりました。引っ越し先はスペースがかなり狭くなり、それまで保管していた絵画の置き場所に困って、近所のトランクルームに預けることにしました。
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生前、飾ることのない絵画なのだから処分すれば?と何度も夫に言っていたのですけれども、僕の絵は価値があるからそんじょそこらには売れないと言い張るのでした。それでいてトランクルーム代の毎月8千円の支出はどうにかしたいと思ってはいたのですけれども、とにかく「処分」という二文字がどうも苦手なもったいながる性分のため、気づくと4年も経っていました。
夫が亡くなり、相続の手続きをお願いしていた公認会計士さんが、もし絵画などを持っていたらそれは財産になるので、査定をお願いしますと言われました。そこで、夫がトランクルームに預けている絵をまずは査定してもらうことにしました。
すると、夫が生きていたら悲しむような査定金額で、私もびっくりしました。油絵だったらもっと高い評価額になるそうですが、あちらも埃まみれの箱に入った絵画を取り出してガッカリした様子でした。私も3枚もありますと業者に電話連絡して来ていただいたのに、とても申し訳ない気分になりました。しかし、今後は支出をできるだけ減らして生きていかなくてはいけないので、その場で買取金額を承諾し、夫が大事にしていた絵画を処分したのでした。
子供達にもそのことを伝え、公認会計士にも絵画査定と買取の件を話して一見落着しました。その後、同じ作家さんの絵を持っているはずの義妹にあの作家さんの絵はどうなりましたかと聞くと、「ああ、私は額縁から取り出して破いて捨てたわよ」と。
えええーーー!お兄さんと違って、なんと割り切りが早いのでしょう!その話、夫が生きている間に知ったなら、もっと早くに絵を処分して無駄なトランクルーム代を節約できたのにと思うと、なんだかな〜と思ったのでした。
でもまあ今後のことを考えると、これで遺品整理が一つクリアできて良かったです。