大切に保管〜"ゴースト夫"に会いたくて〜
亡くなった人の遺品というのはなかなか片付けられないということをよく聞きます。その人が日常身につけていた衣類、使っていたもの、趣味で集めていたもの、そういったものは、すぐに捨てるにしのびなく、しばらく放っておこうという人が多いかと思います。
そんな中、私は夫が亡くなった翌日、心配して来てくれた娘に手伝ってもらい、夫が日常着ていた衣類、意味なくとってあった書類などをゴミ袋にどんどんと詰め込み、膨大な量を一気に処分しました。夫の衣類の入っていた箪笥は空っぽになり、その大胆な捨て方に手伝っていた娘が呆気に取られていたほどでした。
何故そんなに慌てて処分したかというと、ひとりでいる時にそれらを目にしたら、夫がいなくなってしまったという事実に耐えられない気がしたからです。そして、それは、私の心の奥底からわいてきた怒りを鎮める行為だったようにも思います。
「なんだって突然死んじゃうのよ!」
昨日まで一緒に暮らしていた空間に、もう二度と夫が戻ってくることはないと思うと、悲しいを通り越して怒りの気持ちがマグマのように吹き出してきたのでした。
その激しい大処分が終わると、心も落ち着き、後の片付け整理はのんびりとやればいいやという気分になりました。
今回の漫画は、そうした中、キャビネットの片付けをする前に何が入っているのか確かめようとした時の話です。
なんと、私が22歳の時に夫に書いて出した手紙が入っていたのでした。
それは、日記のように毎日夫宛に手紙を書いては封筒に入れ、7日分たまったところで、セットにして夫に送った、いわばラブレターセットでした。
読み返してみると、5つ年上の大人の男性によくもこんな小生意気なことが書けるものだと呆れる内容でもありましたが、別の見方をするとしなやかな表現で実に面白く、そして何よりも純粋でした。ああ自分はこの頃、こんな思いを夫に抱いていたのかと、その時の感情を全く忘れていたので、とても新鮮に感じられました。
そして、この手紙を夫が以前別の女性と結婚している時も、ずっと持ち続けていたということにひどく衝撃を受け感動しました。
もしかしたら私達夫婦はお互いにベターハーフだったのかもしれませんね。今ごろになって、そんなふうに思い始めても遅すぎるかもしれませんが。