ボーナストラック
先日、テレビで松重豊さんが「60歳すぎたら人生のボーナストラック」という話をしていました。ボーナストラック、つまりオマケのようなお得な人生ということですよね。
私は今67歳だから、まさに松重さんのいうボーナストラック真っ最中というわけです。人生は、誰でも一生に一度しか送れません。このボーナストラックは長生きできたからこそ訪れるもの。今を生きているということが、ボーナストラックなのか、と思うと色々と考えさせられます。
泣いても笑っても限られた人生の時間が刻々と過ぎてしまうのだったら、やっぱり小さなことでも喜べることを見つけて楽しんだ方がいいですよね。
しかし、もし私が先に死んで、夫が残された時、夫は残された人生を「ボーナストラック」と喜べただろうか?
女性は、炊事・掃除・洗濯は、日常のことだから夫が生きていようがいまいが、それをやることに苦痛は感じないし、それをやることで惨めになったりはしません。むしろ一人になったら全て楽になる気がします。
今、部屋の片付けや、生ごみを片付けながら、ふと思いました。夫が万一私に先立たれ生き残ってしまったら、きっと日常の全てが面倒で苦痛になったことでしょう。
そういうことを考えると、夫の人生のボーナストラックというものは、毎日妻である私が健康でいて、生活の細々としたことを全てやってもらっていたここ何年かの人生だったに違いありません。
そう考えると、夫は息を引き取る瞬間、私に手を握られながら、ちょっとだけ幸せを感じてくれたかな〜なんて、私は私自身を慰めています。
ということで、私も残されたボーナストラックの人生を大事に生きていこうと思います。
そして、小さなことから楽しもうと、かつて毎日のように描いてた4コマ漫画を再び描き始めることにしました。きっかけは、夫が亡くなって少し落ち着いてきたある日の電話で、娘が「やっぱりお母さんは創作をやるべきよ」と言って背中を押してくれたからです。私が夫の世話をすることから解放され、一人の自由な時間ができたのだからまた描き始めたらいいと。
けれども、あまりにサボっていた時間が長かったので、パソコンのペンタブレットもすっかり使えなくなっていたし、そもそもCLIP STUDIO PAINT(お絵かきソフト)のやり方もまるで忘れていました。
それで、まずはパソコン使うお絵かきではなく、アナログで紙にネーム(下書き)を描き始めたら、毎日瞬間的に頭をよぎる夫との思い出や会話が次々と浮かんできたので、これなら4コマ漫画が作れるかもしれないと気持ちが前向きになりました。
そして先日の「60歳すぎたら人生のボーナストラック」という素敵なフレーズに、そうだ、このボーナストラックを自分だけ楽しむのではなく、ちゃんとネットに投稿し他のひとにも読んで楽しんでもらおうと思っている今日この頃です。
今は夫不在なのに、何故か夫参加型の夫婦漫画になっていて、漫画の中で夫が生き続けている非現実のような現実がなんだかとっても面白いなと思っています。