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義理の兄と弟

新型コロナウイルス感染症は、令和5年5月8日から「5類感染症」になりました。そういうふうに政府が公言すると、もう以前のような威力を失ったように感じた人は大勢いると思います。あれだけ、感染予防に神経質になっていた夫ですら、友達と二泊三日の関西旅行に行き、仲間との飲み会やゴルフの予定も入れていたのですから。

夫は私の実家の新年会にも毎年参加して、私の兄家族ともすっかり打ち解けていましたが、兄と二人で、男同士の飲み会というものは一度もやったことがありませんでした。

夫が会社を引退し時間ができたのをきっかけに、私の兄が「今度ぜひ、都内のバーで、男同士で昼飲みをしましょうよ」と言い出したのは、コロナ感染騒ぎが以前ほどでなくなり「5類感染症」になってからのことでした。

ところが、その後、兄が喘息や坐骨神経痛、そしてコロナ感染やぎっくり腰になったりと立て続けに具合が悪くなり、男同士の昼飲みは開催未定の延期状態になっていました。

二人が最初に出会ったのはずいぶんと昔、私がまだ大学生の時でした。この出会いから、私と夫が再婚して義理の兄弟となるまでには26年もの年月が経ちましたが、とてもいい関係が築けていたと思います。


夫は私に自分よりも年下になる私の兄のことを話すときは「兄ちゃんが」という言い方をしていました。

そして、その兄は「僕のこと何度もアニキって呼ぶんだよ」と嬉しそうにいうので、夫がまさかそんなふうに呼んでいたとを知らなかった私は驚きました。まあとにかく二人は意気投合し、第一回「兄弟飲み会」は大成功だったようでした。

しかし、この4月に夫が亡くなってしまったので、この「兄弟飲み会」の第二回が訪れることはなくなり、兄はもっと早くにこういう機会を持てばよかったと残念がりました。

兄も夫も互いに会社勤めをしていた時代は、同じような業界に属していたのだから、共通する話題も沢山あったかと思います。

しかし、私の母と夫の父が相次いで亡くなるという双方の家庭の事情、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック、そういった様々な出来事が重なり、気持ちに余裕が持てなかったので、「兄弟飲み会」という発想もなかったでしょう。

今回、ようやくそういったことから解放され、兄と夫が義理の関係とはいえ互いに「兄弟」を意識しながら飲み会が出来たことは、本当に喜ばしい出来事でした。

新型コロナウイルス感染症さえなければ、もう少し兄弟の関係はこの先も続いたであろうと思い残念でなりませんが、たとえ一回でも「兄弟飲み会」が出来たことは幸せなことだったに違いないでしょう。

そして、自分より年下であるにも関わらず私の兄を「アニキ」と呼んでくれた夫の優しさと気遣いにとても感謝しています。


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