[短編小説]フェニックスの尾
週末、母が倒れた。認知症の祖母の世話による過労だった。
姉からその連絡があったとき、私は上田さんと口喧嘩の最中だった。
きっかけは、パスタを茹でるために入れる塩の量だ。多いだの少ないだのといった他愛のないやりとりが悪化して、それなら自分で作ればいいじゃないのと癇癪を起こした私は、茹でているパスタをお湯ごと流し台へ放った。
「そこまですることないのに。悪かったよ。ごめん」
苦笑する上田さんに、あなたのせいだと内心で悪態をついた瞬間、いつもの悪い癖が頭をもたげてきた。男性