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【人的資本関連情報の開示義務化】 70%以上の上場企業が準備できていない現状と今後の対策①~調査結果から見えてくる日本企業の準備が進まない理由とは~

オデッセイ秋葉です。昨年11月に、金融庁が23年3月より「人的資本」と「多様性」に関する情報を有価証券報告書に記載することを義務化しました。
日本においても人的資本に関する情報開示の第一歩を踏みだしことになりますね。
その対策や今後の人的資本情報の開示に備えて、昨年12月23日に弊社から「Ulysses/人的資本ダッシュボード」をリリースいたしました。
今回は「有価証券報告書への人的資本関連の情報開示」と「人的資本ダッシュボード」にフォーカスしてお届けしたいと思います。

1.いよいよ日本でも始まった人的資本情報の開示義務化


2022年9月 ニューヨーク証券取引所で「人への投資」について講演する岸田首相                         岸田文雄公式サイトより

 このnoteでも2021年5月に2021年のキーワードとして「人的資本」を初めて取り上げましたが、
それから約1年半、いよいよ日本でも、人的資本に関する情報開示の義務化が決まりました。
2022年11月7日に金融庁より公表された『「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について』の中で「人的資本、多様性に関する開示」として、以下2項目について有価証券報告書への記載を義務付けています。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20221107/20221107.html
①    人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備の方針及び当該方針に関する指標の内容
②    女性活躍推進法等に基づいた、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」
岸田首相も、 2022年1月の所信表明演説や同年9月にニューヨーク証券取引所で行った講演で
「人への投資」の重要性や「人的資本」に関する情報開示のルール整備について述べられており、その一部が実現した形です。
 今回の開示ルールによれば、2023年3月31日以降に事業年度を終了する企業は、早速有価証券報告書への記載が必要になります。具体的には3月末決算の企業であれば、6月末までに有価証券報告書に記入して提出しなければならないということになりますね。
開示要求されている情報は、基本的な情報ではありますが、まだ人的資本に関する情報が整理できていない場合は、今後のことも考慮して急ピッチで人的資本に関連する情報を収集、整理、出力する仕組みを整える必要がありそうです。
しかし、企業の準備状況を調べるとそれほど進んでいない現状が見えてきます。

2.70%以上の上場企業はまだ準備が整っていない


2022年5月にパーソル総合研究所が「人的資本情報開示に関する実態調査」を実施していますが、その結果から日本企業の現状が見えてきます。
 まず、日本の上場企業が人的資本に関する情報やその開示をどのように捉えているのでしょうか?
 「人的資本情報やその開示について、取締役会や経営会議で優先度高く議論されている割合は56.1%」と過半数の上場企業において取締役会等で優先度高く議論されているので、上場企業の経営層は重要視して議論を重ねている様子が伺えます。(図表1)

(図表1) パーソル総合研究所 「人的資本情報開示に関する実態調査」 調査報告書 より

一方で、上場企業の準備状況は?というと
「自社にとって重要な人的資本情報をデータとして蓄積できている」と回答した企業が37.6%、更に「自社にとって重要な人的資本情報をデータとして蓄積、活用するためのHRテクノロジーが導入できている」と回答した企業は、29.9%と人的資本関連情報を活用する仕組み作りについては、上場企業の70%以上が具体的に進められていない現状が見えてきます。(図表2 赤枠)企業として重要事項と認識しているものの、人的資本に関するデータを活用する準備が進んでいないというのが実態のようです。

(図表2)パーソル総合研究所 「人的資本情報開示に関する実態調査」 調査報告書より

また、「自社にとって重要な人的情報を指標化(KPI化)できている」と回答した上場企業が35%だったことから、人的資本として収集/管理していくべきデータの選定とその評価方法に60%以上の上場企業が苦労していて、それが準備の遅れに繋がっていることが想像できます。(図表2青枠)

3.人的資本情報の開示に向けてやるべきことは?


 多くの上場企業が人的資本情報の開示に関する準備に苦労している一方で、投資家等からの人的資本に関する情報の開示要求は高まっているため、今後は更に情報の開示範囲が増えていく可能性が高いと思っていた方が良いでしょう。
各社進めることが難しい点も多々あるかと思いますが、着実に進めていかなければなりません。
対応すべきことは、企業によって差はありますが以下の基本的な4点と思います。
①    人的資本として管理する項目を選定する
上述の調査結果でも「人的情報を指標化(KPI化)できている」上場企業が35%程度だったように、どの情報を管理してモニタリングしていくかを決めることが日本企業にとって高いハードルになっているので、まずはここからクリアしていく必要があります。
本来であれば、自社として社内でどの情報をモニタリングして、社外にどの情報を開示すべきかを、じっくり検討することが望ましいですが、まだ検討が進んでいない状況であれば時間の制約もあるので何か対策を考えなくてはなりませんね。対策のひとつとしてISO30414での管理項目の活用が挙げられます。世界の国々や企業において、人的資本情報の開示や管理する情報をISO30414ベースにしているケースも多いようなので、ISO30414に規定されている項目を中心に、何を開示すべきかを決めていけば、比較的早く情報項目を決めることができますね。ここでは人的資本関連の開示する情報を、ISO30414と同様と仮定して進めさせていただきます。
②    対象とするデータの管理状況を確認する
 どの情報を人的資本に関する情報として管理していくべきかが決まれば、対象となる情報がデータとして管理されているか否か、データとして管理されている場合、そのデータが活用できる状態になっているかを確認する必要があります。データとして管理できていない場合は、少々大変ではありますが、次項番で出てくる仕組みの整備のなかで必要情報を収集し、管理するところまで一気に進めてしまう方法も考えておいた方が良いでしょう。
③    人的資本データを活用する仕組みを整備する
人的資本に関するデータが、分散はしているものの存在しているということであれば、それぞれのデータを都度集約したうえでBIツールの活用により、自由度高く情報を加工できる環境を構築するという手段が考えられます。BIツールを活用することで見やすく、操作性の高い可視化環境を構築できる反面、分散しているデータを都度集約する仕組みは変わらないため、データの保管場所によって情報の鮮度管理等管理レベルに差が生じるリスクがあります。また、データの保管場所や情報を管理しているシステムが変更された場合等は、連携の仕組みを見直す必要も出てきます。
そこで私がお勧めしたいのは、タレントマネジメントシステムの活用です。
タレントマネジメントシステムは、ここ数年で急速に普及しているため、既に導入されている企業も多いと思いますし、未導入でもこれから導入を計画されている企業も多いと思います。
その仕組みを活用すれば、分散したデータを集約する仕組みの構築も不要です
2022年1月26日に掲載したオデッセイnote
「人的資本経営とタレントマネジメント(その3) ~「人的資本経営」にタレントマネジメントは有効か?~」https://note.com/ods_note/n/n28b55faa6b8f
でもご紹介した通り、人的資本関連で開示が要求されるであろう情報(ISO30414に規定されている11領域58項目)のうち、過半数はタレントマネジメントシステム(SAP SuccessFactorsの場合)で標準項目として管理されています。また、更には会計システム、勤怠管理システム、エンゲージメントシステム等と連携させれば、9割程度の項目が管理可能になります。
なので、現在利用中の(利用予定の)タレントマネジメントシステムを有効に活用する方法が、現実的かつ効率的な実現手段になりそうですね
④    社外への開示や社内活用を進める
人的資本データを活用できる仕組みが整ったら、あとはそのデータを活用して社外への開示や社内でのモニタリングができる環境を構築するという最終段階に入ります。
社外への開示については、ISO30414の項目であれば、既に必要情報等は明確化されていますので、そのルールに則ってデータを加工して、開示したいレイアウトで出力すれば良いと思います。
 
昨今、人的資本関連の情報については、開示することがクローズアップされていますが、同時に社内で活用することも重要です。社外に開示して機関投資家が参考にするような重要な情報なので、社内でもモニタリングできる環境を作り、実態を把握したうえで、必要に応じて対策を打つことが必要ですね。
社外への開示や社内でのモニタリングに役立つ仕組みとして、人的資本に関する情報を簡単に可視化できるダッシュボードを弊社で開発し、昨年末に1次リリースいたしました。
その概要については、次回のnoteでご紹介する予定です。
それまで待ちきれないので早く確認したいという方は、以下のURLからご連絡頂ければ、デモンストレーションを交えてご紹介させていただきます。
 https://www.odyssey-net.jp/contact/index.html

お気軽にご連絡ください。
よろしくお願いいたします。

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https://www.odyssey-net.jp/


 
 

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