![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/77582883/rectangle_large_type_2_c5798ccb590b8a38db9c50b6bcbf30ad.jpeg?width=1200)
縄文杉に行かない旅ってどんな旅?―『屋久島で生きると戯れる、はじまりの旅』に参加して―
「屋久島」と聞いて、あなたが想像するものはなんですか?
屋久島に来るとしたら何を求めてやってくるでしょうか?
屋久島に来ても縄文杉に行かない旅。そんな旅もありでしょうか?
「はじまりの旅」への想い
2022年4月14日(木)~4月17日(日)、屋久島アウトドアガイド島結 -SHIMAYUI-のオリジナル企画『屋久島で生きると戯れる、はじまりの旅 -A journey back to the origin-』が開催されました。
この旅を企画したのは、屋久島でガイド業を10年営んできた島結代表ささっちょさんこと、笹川健一さん。
この企画が誕生した背景とは__。
これまで屋久島に訪れた方、まだ訪れたことがない方の多くが、「屋久島=縄文杉やもののけ姫の森」というイメージを持たれているように思います。でも、日本の大自然とそこに生きる人々の暮らしをまるごと味わえるような島で、それだけの体験ではもったいない。
ご参加いただく皆さんと4日間ともに過ごした後、「あなたにとっての屋久島とは?」という問いに、あなたが五感で味わう”ありのままの屋久島”を表現して、ともに分かち合えたら…そんな想いで、今回のツアーを作りました。
私も地域おこし協力隊として、「縄文杉だけじゃない屋久島を知ってほしい!」という想いで集落の魅力発掘をすべく活動をしています。
とはいっても私は縄文杉に1回しか行ったことがないし、屋久島に来てまだ数週間。10年屋久島に住んで10年ガイドを続けてきたガイドさんとは、言葉の重み、伝えられることも全然違いますよね。だからこそ今回この旅に参加したいと思いました。
多くの観光客が縄文杉を目指して屋久島を訪れているのは事実で・・・。
実際、縄文杉を見に行かない旅ってどんなものだろう。参加するお客さんはどんな人たちだろう。自分は、みんなは、この旅で何を感じるんだろう。
そんな想いで、この旅に参加させていただきました。
屋久島を五感で感じるために
まず最初に言っておきたいことがあります。写真がありません(笑)。
いつもの私ならところかまわず撮ってしまう写真。初日は張り切って一眼レフまで持って参加したのですが、森林浴プログラムの導入で撮るのをやめてしまいました。
この旅は五感で感じる旅。「レンズの中に映るものだけを見ていてはいけない。」そう思いました。
ということで、写真無しのすごく読みづらいnoteになる予定でした。
ところが救世主現る!!
この旅を共にした仲間の中にイラストを描ける方がいました。ここからは救世主あやこちゃんのイラストにも力を借りながら書き進めていきたいと思います。
五感を研ぎ澄まし、生きると戯れる方法を習得する
旅のはじまり、森林浴プログラムで、ファシリテーターのあかりんが教えてくれた森の歩き方。これがまさしく今回の旅のテーマ『生きると戯れる』方法だったのではないかと思うんです。
だから少し長くなってしまいますが、ひとつひとつ丁寧にやったことを残しておきたいと思います。
まず、見る___。
ただボーっと眺めるだけではありません。
見たい場所を手で囲ってみる。その中にある色や生き物の数を数えてみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1651197267777-UsnBrwQZdI.jpg?width=1200)
その一部分に集中して見てみると、不思議とそれまで見えていなかったものが見えてきました。この小さな円の中にもちゃんと世界がありました。
葉っぱの色をよく見てみる。いろんなミドリがある。新緑のミドリは明るい黄緑色。その目で山を見る。もっといろんなミドリがある。山を見ても一本一本の木々が見えるようになりました。
聞く___。
ただ耳を澄ますだけではありません。
手を耳の後ろに当て、川の音を聞いてみる。まずは川の方を向いて。
![](https://assets.st-note.com/img/1651197412443-ktaHXmo5UR.jpg?width=1200)
その後、川に背を向けて同じことをしてみる。さっきと聞こえ方が全く違う。私は川に背を向けて手を耳の前につけて聞く音が一番好きでした。
嗅ぐ___。
ただ空気の匂いを嗅ぐだけではありません。
葉っぱをちぎって嗅いでみる。葉脈の付け根にダニ部屋と言われる点々がある葉、クスノキの葉はいい匂い。新しい葉っぱと古い葉っぱでは匂いが違ったし、一枚ちぎって嗅ぐのと複数枚をぐちゃぐちゃにして嗅ぐのでは匂いの強さも違いました。
落ちている枝で土を掘って、土の中を嗅いでみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1651197449583-uP53WiGyVn.jpg?width=1200)
他の参加者が掘ったすぐ隣の穴を嗅いでみるとまたちょっと違う匂い。場所によって蓄積されてきたものや成熟具合が違うから匂いも違うらしいのです。
触れる___。
ただ手で感触を確かめるだけではありません。
参加者みんなで一列になり、前の人の肩を持って目をつぶったまま歩いてみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1651197484462-v3m1zG82tJ.jpg?width=1200)
足の感覚に集中する。苔の上は柔らかい。落ち葉の上はクシャクシャなる感覚が楽しくて、石畳の上は硬くて少し怖かったです。
木に触れて温度を感じてみる。木ごとに持っている温度が違う。冷たい木もあれば温かい木もありました。
様々な方法で自分の感覚を開きながら森を歩き、最後は大きな石がゴロゴロと転がっている川に到着しました。そこで思い思いに時間を過ごすことに。
もう自分の心と身体が開けている感覚がありました。
私は風を感じたくなり、目についた大きな石の上に登りました。いろんな方角を向いて耳に手を当て聞こえる音を楽しんだり、目を閉じて大きく深呼吸したり、風を一番気持ちよく感じられる向きを探したりしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1651387701559-6PYra91ATl.jpg?width=1200)
次は川と同じ目線になってみようと思い、できるだけ地面の近くに寝そべってみたけど、なかなか難しかったです。
川はやめて石になってみることにしました。しばらくの間、動かず静止していると青色の蝶が足にピタリ。虫が苦手なのですぐに動いてしまったけど、石にはなれたようでした。
あっという間だったような、すごく長い時間だったような。どちらにしても心と身体が解放されて、誰の目も気にすることなく自分の思うままに過ごせた本当に気持ちのいい時間でした。
きっと縄文杉を目指す旅では、こんなに自由な時間はなかったでしょう。普段は縄文杉までガイドをしているささっちょさんも言っていました。「いつもは決まったルートで時間配分しながら行動するから、お客さんが好きなところに行っていい時間や好きなところに留まれる時間は限られている」と。
ただ目的地に向かって森の中を歩くだけでなく、自然にどう接するか、自然とどう触れ合うか、生きるとどう戯れるか。その方法をひとつひとつ丁寧に実践していく。そうしていくうちになぜか自分の心や身体の声も聞こえるようになる。
どこに向かいたいか。何をしたいのか。
自由時間といえど、本当にみんなどこまでも自由だったよね。
![](https://assets.st-note.com/img/1651197569524-rb0MUjirwd.jpg?width=1200)
*
五感を研ぎ澄まし、生きると戯れる方法を習得した私は、見える景色が変わりました。
安房川での早朝カヤックはあいにくの曇り空だったけど、だからといってガッカリすることはありませんでした。この時期だけの美しい新緑、霧の中に浮かぶ幻想的な山々、ちょっと夏っぽい匂い、素足で歩くと気持ちいい中州、ニコちゃんマークのカニ、声が反響する岩場、川が逆流しているポイントなどなど、今日この瞬間にだけ出会えるものたちを見逃さずに戯れました。
![](https://assets.st-note.com/img/1651197635375-TrTFd03iFJ.jpg?width=1200)
食べる___。
そうそう、この旅は“五”感で感じる旅。
「食べる」もただ提供されたものを食べたわけではありません。
竹藪に入って、自分たちの手で竹の子を掘りました。ヒルに噛まれてもお構いなしに(私はお構いあったけど)スコップに全体重をかけて必死に掘りました。
![](https://assets.st-note.com/img/1651387863654-qaIXyVj3VK.jpg?width=1200)
竹の子一つ掘るのがこんなに大変だったなんて。私がヒルに噛まれてたまるかと暴れていたように、竹の子も掘られてたまるかと土に根を張っていたのでしょうか。まさに生きると戯れる体験だったと思います。
あく抜きをして次の日の焚火会で竹の子ご飯を作りました。こういうときのご飯が一番美味しいのは言うまでもありません。
うん、本当に美味しかった。
「はじまりの旅」は人生の主人公を取り戻す旅
![](https://assets.st-note.com/img/1651390305452-U8rJyU3c4N.jpg?width=1200)
参加者の多くは、仕事を辞めたり、新しいことにチャレンジしようとしているタイミング、いわば人生の転機ともいえるタイミングでこの旅に参加していました。
思えば、私が初めて屋久島を訪れたのも会社を辞めていた期間。そういう時間のとれるときにしか行けない、ということも勿論あるのですが、やはり何か大きなパワーをもらいたくて屋久島を訪れる人が多いように感じます。
樹齢何千年の縄文杉を目の前にすることで得られるパワー、それも相当なものです。しかし、与えられただけのものは、またすぐに消耗してしまう気がします。
今回のはじまりの旅はそうして与えられるだけではなかった。受け身ではなく、もっと能動的で自発的。自分の中からも芽生えてくる感覚。思うままに、ありのままに、表現できるようになって、それをみんなが認めてくれて、今この時を分かち合えているという感覚。自分の中から湧いてきたものや誰かと分かち合ったことは、そう簡単には消えたりしないと思います。
屋久島に来ても、この旅じゃなきゃ、この仲間たちじゃなきゃ、得られなかったものがある。
はじまりの旅は、本当に“はじまり”の旅でした。パワーをもらってまた明日から頑張ろう、みたいなレベルではなく、ちゃんと自分が自分の人生の主人公に戻ってきて、自分の原点からスタートするような。
ここからまた、それぞれの新たな旅がはじまります。
2022.05.05
最後に。
この旅を企画、サポートしてくださった
ささっちょさん、あかりん、やりさん、こぺ。
最高の旅をありがとうございました。
一緒に旅した仲間
あやこちゃん、かいるくん、かっきー、しーちゃん、みつ
出会ってくれて本当にありがとう。またどこかで会おうね。
▼イラストを描いてくれたあやこちゃんのアカウント
人柄のままの優しいイラストたち。ぜひ覗いてみてください。