日清の焼きそば、生まれて始めて汁気をゼロに出来た
始めて日清焼きそばを作って二十年近く経つだろうか。
そのとき僕は黒い涙を流して焼きそばが泣いているのかと思った。
焼きそばにジョージアのエメマンをこぼしてしまったのかと思った。
それくらい汁汁しい焼そばが完成したのだ。
僕は焼きそばとそれを言うことができなかった。
昨今流行ってる「まぜそば」に近いのではないだろうか。
そのころ、まぜそばというものは世間に認知されておらず、初めてまぜそばを作った人はもしかしたら日清焼きそばを初めて作ったひとなのかもしれないとまでは思わなかったが、あのときのショックは何歳になっても色褪せない。
パッケージ後ろの作り方を見て、首がもげるかというほど傾げた昼下がりもあった。
それが本日、なぜか成功してしまったのだ。
時が解決してくれたのだろうか。
もちろん今日まで色々あった。
補助輪なしで自転車に乗れた。
トランセルがバタフリーになった。
テストで100点が取れた。
好きな子に消しゴムを借りて返したら、また書き間違えてまた借りて嫌な顔をされた。
大学受験に受かった。
併願で受かった。
アルバイトをして初めて給料をもらった。
始めて彼女が出来た。
企業説明会で隣の女子に喋られたことを「逆ナンされた」と五年は言った。
気が触れたのかというほど訳のわからない理由で彼女に振られた。
仕事を通じて人に感謝される喜びを知った。
そのどれよりも嬉しく、難しい偉業を本日成し遂げたのだ。
焼きそばの湯気がクラッカーのあとの煙に見える。
始めての汁のない日清焼きそば。
何か物足りないと思ったのは、気のせいだろうか。