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創作の言語化と頭の整理が、メディア出演で役に立つかもしれない話

メディア出演について頭を整理してみたいと思います。
今まで結構大きな番組で、長時間出演をし、自分の考えを話す機会をいただいてきました。絡む方も、マツコさん、片桐仁さん、チャンカワイさん、小島奈津子さんなど、テレビでよく見る方ばかりです。「緊張しないんですか?」と聞かれますが、緊張します。
そんなときにおじさんは何を考えているのか、今までどんなことをしてきたのか、書いてみようと思います。

本業でのスキルが、メディア出演に活きている

僕はメーカー勤務のデザイナーとして、20年以上働いてきました。
入社した頃は絵を描くのは得意でしたが、人前で話すのがとても苦手でした(笑)。当時の上司から「お前は駅前で大道芸でもやって、心を鍛えてこい!!」と、プレゼンの度に言われていました。
デザイナーはプレゼンがとても多い仕事です。しかもデザインを決める場には、必ず見るからに偉い方がいらっしゃいます。
さらに営業から、「このコンペに勝てるかで、売り上げが数億変わるから、気合い入れてね!」と笑顔で言われます。
20歳そこそこの若者には、吐き気を催すほどのプレッシャーでした。。。

プレゼンの型を持ちなさい

プレゼン苦手克服プログラムの中で、まず教えたいことは、何事にも型があるということだ。まず色々な人のプレゼンを参考にして、自分の型を作りなさい。そうすると余裕が生まれるからだ。そして、型の中で一番最初に入れてほしいのは、プレゼンの最初に大きな声で挨拶をすること。緊張していると声が小さくなるから、最初に勇気を出して大きな声を出せ。そうすると最後まで同じくらいの声量でいけるから、まずはそこから始めてみなさい。

次に、相手の反応をよく見ることだ。プレゼンに慣れるまでは自分のことで精一杯で、10話すことがあったとしても、3つしか話せないうえに、どの3つを話したか忘れてしまうくらい緊張するものだ。それでも相手の顔を見て、自分が話したことを理解してくれているのか、理解できていないのか、しっかり見極めなさい。

型は自分なりにアレンジしなさい

いつも新しい話し方をする必要はない。例えば、
1. 提案の条件の確認
2. 今日の提案内容、ゴールの確認
3. 実際の提案、コンセプト、案ごとの特徴
4. お客様のご意見を伺う
5. 提案のまとめ、今後のスケジュール確認
必ずこの順番でやるようにすれば、自然と自分の型になっていくし、話すことも決まってくるので完成でが上がる。さらに、自分で手応えのあったものを強化したり、順番を入れ替えたり、型があればアレンジもできる。これを意識しないで自己流でやると、訳のわからないプレゼンになる。型があって破るのは「型破り」、型がなくて失敗するのを「型無し」と呼ぶんだ。何度失敗してもいいから、考えて提案しなさい。
そう言って、いつも丁寧にフォローしてくれた上司に、今はとても感謝しています。

非常勤講師をやることになった

上司がデザインの母校桑沢デザイン研究所の非常勤講師を務めていて、年齢もあり勇退することになり、後任に僕を指名してくれました。「お前もそろそろ非常勤講師をして、母校に恩返ししなさい。また、非常勤講師として教壇に立つと、今の自分のデザインスキルを学術的に分析し、言語化、再構築して話す必要が出てくる。そうすれば、お前はもう一つ成長できるはずだよ。」そう言って送り出してくれました。

10年ほど非常勤講師をさせていただきましたが、学生に教えるという立場になると相手の人数も多く、毎回どんな質問が出るかわかりません。毎年試行錯誤し、自分の知識、スキル、経験を学術的に整理し、頭の引き出しに入れておくことで、学生の様々な質問に対応できるようになりました。この経験が、今の自分の作家活動において、とても役に立っています。コンセプト、モチーフ、技術、道具、素材について十分に調べ、自分の言葉として言語化し、頭の引き出しにしまうクセがついています。そして、いつ質問されてもこの引き出しを開けて、サッと答えることができるのです。

作家活動でメディアに出るようになって

これがもう、ここまでの経験なんですかね、緊張はするんですが、頭が真っ白になることもなく、アワアワすることもなく、自分で自分をコントロールできます。
これは僕の強みだと思います。

自分の作家としての理念、創作方針、制作方法、各作品のコンセプト、将来の展望等々、いつも反芻のように何度も何度も考えて、頭の引き出しにしまっているので、急に質問されても、答えられるんです。
メディアの方にも褒めていただけることもあり、長年やってきて良かったなと思います。

台本がしっかりあると思っていた

テレビに出るようになり、何度か打ち合わせをしていく中で、色々質問されて答えていくのですが、ふと疑問が浮かび、質問してみました。
「台本って無いんですか?」
笑いながら、ディレクターが教えてくれます。
オダカさんのようなクリエイターの方に出ていただくときは、考えていることを私たちが聞いて、台本に落とすことはとても難しいです。実はここに台本があるんですよ。見てください。「オダカさんの考えをいただく」「オダカさんの展望について伺う」台本にはこんな感じで書いてあります。なので自由にお話ししていただいて構いません。生放送じゃないので、噛んだら撮り直しましょう!
そんな感じで進むことがほとんどです。僕は台本を覚えるのが苦手なので、こちらのほうが助かります(笑)。

しかし、この方法にはとても大きな落とし穴があります。自分の考えを整理して、言語化できていなかったり、緊張がコントロールできていないと、若かりし日の僕のように、小さな声で、不安そうに話し、何を話したか覚えていない、なんてことが起こります!!!!一大事!!

更に上級編が存在した!!!

某TVチャンピオンに出場したときには、もっと高度なコミュニケーションが求められました。
台本には最初の挨拶や絡みくらいしか書かれていません。スタートすると、制限時間内に作品を完成させるタイムトライアルが始まります。僕には常時ディレクターとカメラマン、照明さんが付いて記録しながらの制作で、余裕なんて全くありません。

しかも一つ一つの作業の前に、「今日一日の作業の目的、工程、かかる時間、何が完成するかを教えてください。」
「その作業、解説しながら進めてください。」
「いいですね!そこもう一度この角度で作業しながら解説してください。」
「区切りがいいので休憩がてら、レポーターの方にコンセプトや製作上のポイントを話しつつ、楽しく絡んでください。」
という注文が次々と飛んできます。

注文多くない? 俺余裕ないよ(笑)と言いながら、手を動かしつつ、笑顔で対応。
都度作業を中断して話しますが、気持ちは制作を止めたくなくて焦っています。でも話さないと番組にならない。3日間で相当鍛えられました。
出演希望の方は、ぜひ練習してみてください(笑)。

そして続く無茶振り

ありがたいことに、メディアに何度も出演させていただくと、前の番組を見てのオファーも増えてきます。「オダカさん、あの番組でこんなことを話していましたよね。子供たちに伝えたいことをテーマに、5分くらい話してもらってもいいですか?」

個展で在廊して、休憩時間にカレーを食べているときも、「いま急に新聞社の方が取材に来ているのですが、対応できますよね?新聞の一面に載るように、いい感じで説明してきてもらえますか?」
在廊初日の夕方に「明日の10時から1時間半ほど、ギャラリートークをしていただけませんか?お得意そうなので、内容や進行はお任せします!」
皆さん、無茶振りが過ぎますよ!!全部対応できるんですけどね!!
このあたりは引き出しの数と、授業での時間配分、謎に鍛えられたハートで乗り切っています。

まとめとしてお伝えしたいこと

多分準備をせず、これらの対応をすることは不可能です。
僕は結果25年血反吐を吐いて、このスキルを手に入れました。
これを読んでくださって、プレゼンが、取材が苦手な皆さまにお伝えしたいことは

自分の活動理念、制作方法を言語化しておく
たぶんとても大事です。ここをしっかり書いて、何度も何度も何度も何度も読んでおくと、何回聞かれても同じ話ができるようになります。
どんなコンテンツのときにも聞かれる話なので、一度話しに足りない部分は補い、話しにくいところは修正して、話すたびに完成度を上げておくことをおすすめします!

作品のタイトル、コンセプト、制作方法、ポイントをまとめる
僕は各作品に、キャプション用の100文字テキストを書いています。
もちろんそのときに整理するので、膨らまして書くことも可能です。
これも整理しておけば、急な取材でも対応可能になります。

コンセプトは作る前に考える
そもそも作品は、コンセプトを立てて制作するものです。
作品が完成してから考えるのではなく、考えてから作るべきですし、作りながらそのことをずっと反芻していると、頭に入ってきます。
作りながら考え、おかしなところはブラッシュアップし、修正版をアウトプットすることも可能です。
そうすれば原稿がなくても、すらすらと話すことができるようになります。

話す時間を意識する
テレビだと時間制限があります。5分で、3分で、と指定されることもあるので、自分で話す時間を測り、時間に合わせて話せるようになれると楽になります。とても難しいですが、意識することからはじめましょう。

本を出版する
これはとてもとても、超必殺技的に効果があります
僕は今までに出版社と一緒に2冊出版していますが、ここまで話したことを「編集」という視点で、客観的にブラッシュアップして、言語化してもらうことができます。なので、自分ひとりで作る本では駄目です。編集が入ることがとても大事なのです。
まさに、自分の制作工程が学術的に整理され、言語化されていきます。

言語化されることで、他の人に伝えることができます。
また、様々な取材をいただくときに、事前に拙著を読んでいただくことで、僕の理念や作り方を正しく理解していただくことが可能になります。そうすれば、多少話すのが苦手でも、本が補ってくれます。

最後に

そう言ったって、そうそうメディアになんて出ないよ!!
ごもっともです。
これらのことを整理、言語化して準備しておくことで、精神安定剤になります。また、HPの制作や在廊時の説明で、言語化して頭の引き出しにしまい、話す練習ができます。話すのが苦手な方は、パネルにしておいて読んでもいいと思います。
ただね、どんなに準備しても、いざカメラを向けられると緊張します。
もうそこは、慣れしか無いかもしれない(笑)
おじさんの経験が、少しでも参考になれば幸いです。
長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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