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われ、こもれり

われ
「こもれり」

それは
われを大切に
おもうゆえ。

われを
傷つけないように
おもうゆえ。

われは
思われているほど弱くない。
自分を守ろうと必死なだけ。

強がりなんかじゃない。

ただ、ただ、
われを大切にするあまり、
きみたちの扱い方を
忘れてしまっただけだ。



だって、
きみたちは
われを哀れみの眼(まなこ)で
凝視するだろ?

だって、
きみたちは
われを触れてはいけない存在として
見なかったことにするだろ?


そんなのさ
「こもれり」してれば
痛くも痒くもないのさ。

「こもれり」はわれの表現なり 。

われは自分に生きている。
われは弱くないんだ。


きみたちからの
カワイソウが込められた
上から振り下ろされる視線に
強くないだけだ。

だから、
だから、
「こもれり」するよ。

きみたちから振り下ろされた鉛を
受け止めるくらいは出来るけど、
それを抱えて生きるのは
もうごめんだ。


でも、でもね。

そろそろ、
「こもれり」も飽きてきたんだ。


ねぇ、誰か?
弱くない
われの弱さを
否定せずに聞いてくれよ。


そうしたらさ、
きみたちの扱い方を
知りたいと思うはずだから。


ねぇ、誰か?

ねぇ、だれか?

ねぇ…。

「こもれり」に
われの声だけこだまする。

その中に
希望のような願いを叫ぶ
わたしを見つけた。

「そうだよな」

顔を上げ、瞼の裏に映る
ありし日のわたしを見ていた 。

もう、十分、われと向き合った。

「おつかれさま」

わたしはわれに言葉をかけていた。

わたしに
木漏れ日があたる。

ああ、
日の光ってこんな
あったかかったんだな。


目をつむると
頑張ってきたわれが
頬をつたって落ちていった。

※「こもれり」とは
古文で「引きこもる」「閉じこめる」「隠れる」の意味

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