せっかく生きていくのなら
先日、茶色の革靴を買いました。
パラブーツというブランドの、ミカエルというモデル。
僕らodolの「退屈」という楽曲の歌詞に出てくる「シャンボード」というモデルもこのパラブーツの別のモデルのことで、とにかく個人的に思い入れのあるブランドです。
シャンボードはあの頃より 少しくすんでいて
今では君の言葉が君の香りが 空気に混ざって
退屈さえ僕のものだったのに
歴史の長いパラブーツですが、雑誌などで特集されることも数知れず、ここ日本ではミーハー的、流行り物的というイメージもあります。
僕にとって「革靴を買う」ことは大きな出来事です。言ってしまえばこれから先10年、20年と連れ添う相棒を選ぶという行為だから。でもそんな僕の背中を押したのは「良いものは良い」という感覚でした。流行っていようが、街ゆく人で同じ靴を履いている人にでくわそうが、名品は名品なのです。
このミカエルというモデル、実はかの有名なエルメスにルーツのある靴なんです。現在は生産されていませんが、エルメスのOEM(ブランドに委託されて製品を作ること)を行なっていたパラブーツが、当時「ミカエルフォック」というモデルを作ったことが、このミカエルという靴のルーツだそう。
「ミカエルフォック」のアッパーには通常のスムースレザーではなく、「アザラシの毛皮」が使われています。
ちなみに、僕の敬愛する原宿Berberjinの元副店長・坂本一さんが、おそらく数十年前のモデルであろうエルメス名義のミカエルを持っていらっしゃる、というのも僕がこの靴に憧れた理由の一つです。
以前念願が叶い坂本さんと対談させていただいた記事はこちら。
普段、僕は革靴を買うときに黒を選びます。黒色の靴というのは基本的にはどんな色や物にも合うからです。反面、茶色というのは少しだけ他の服との兼ね合いを気にしなければいけないし、カジュアルな印象を与えるので、履くことのできる場面が限られることも少なくありません。
しかし、パラブーツの油分を多く含んだレザーの魅力を最大限味わうことのできる色は茶色だと個人的に感じています。もともとパラブーツは登山靴にルーツのあるカジュアルな靴なので、履き込んでいくにつれて、この茶色がいろいろな表情を見せてくれるだろうなあと今から楽しみです。
履く靴にしても、身につける服にしても、住む家にしても、口にする食べ物だとしても、せっかく生きていくのであれば自分が納得したものたちと共にありたい。高級なものだから、とか流行っているから、だとかそういうことに流されずにいたい。その価値観や感覚は、僕の中でずっと昔からあるものです。自分でも面倒な人間だな、と思うこともありますが、その感覚は今「誰かに音楽を届けること」を続けられている理由とも繋がっています。
みなさんにも、こだわりを持っているものはあるでしょうか。