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"WEFT"はあなた

こんにちは、森山です。
6月24日に、odolの新しいEP『WEFT』がリリースされました。
今日は、このEPについて書いていこうと思います。

“WEFT”について

収録曲それぞれについての話をする前に、まずはEPのタイトル"WEFT"のことについて。
"WEFT"には、「横糸」という意味があります。
「縦糸(経糸)と横糸(緯糸)」を人間関係の比喩として使った表現も耳にしたことがあるのではないかと思いますが、今回のEPのタイトルも、そういった人と人との関わり合いを軸にキーワードを探していきました。

このEPは3曲収録で、それぞれがタイアップにより制作された楽曲です。
タイアップとなると当然、odolメンバーや普段近くにいるスタッフ以外にも沢山の人たちと関わり合いながら、意見を出し合いながら曲を作っていくということになります。

表現の中で関わる人数が増えると、その分焦点がぼやけてしまう、純度が下がってしまうというようなイメージもあるかもしれません。
しかし、僕たちはたくさんの関わり合いの中で作品が生まれるということを、とてもポジティブに捉えています。

(なぜポジティブに捉えているのかという話は、じっくり話すと長くなりますが、僕たちがそもそも「バンド」という形で活動し、音楽を誰かに届けようとする限り、それをどんなに避けようとしても、必ず関わり合いの中でしか音楽は生まれないという考えが関係しています。)

そういった、関わり合いの中で生まれる表現にポジティブであることの意思表示、そして感謝の気持ちとして、この曲たちを作らせてくれた、出会ってきた人々(つまり「横糸」である人々)のことをEPのタイトルとして表しました。

ジャケットについて

そして、この作品のジャケットの話もしておきたいと思います。

こちらは、写真家の濱田英明さんの作品です。
(「DISTANT SKIES」というシリーズの中の一枚です。)

僕たちの『WEFT』に込めた思いやコンセプトをやりとりし、収録曲を聴いていただいた上で、いくつかの素晴らしい作品を提案していただいたのですが、
その中でもこの風景からはまさに"人々の生活の折り重なり"を感じられ、これこそがWEFTで表現したかったものだ!と思ってしまうほどでした。

濱田さんとは、収録曲である「小さなことをひとつ」を作らせていただいたradiko ブランドムービーの制作の中で出会いました。
その出会いがあり、今回のジャケットをお願いさせていただき、さらに「小さなことをひとつ」のリリックビデオまで作っていただくという
まさに"WEFT"のコンセプトを体現しているかのように、色々なことが進んで行きました。

こちらのリリックビデオに関しても話したいことは山ほどあるのですが、こちらもどうしても長くなってしまいそうなので、またどこかで記事を書けたらと思います。
単なるリリックビデオを超えた、素晴らしい映像になっています。是非ご覧ください。

「小さなことをひとつ」について

では、ここからは収録曲それぞれについて話していこうと思います。

1曲目に収録されている「小さなことをひとつ」を作ることになった経緯やradikoブランドムービーについては、以前記事を書いております

また、歌詞についてのお話もミゾベが書いておりますので、是非ご覧ください。

ということで、「小さなことをひとつ」について詳しくは上の記事を読んでいただければと思いますが、この曲が生まれた背景についてここでも少しだけ触れておこうと思います。

radikoブランドムービーの監督は、「four eyes」「GREEN」などodolのMVを何作も撮っていただいている林響太朗さんでした。
響太朗さんとは、先ほどの記事に書いたことを中心に様々に会話を重ねていたのですが、特に印象に残っていることのひとつとして、ミーティングの最後の方で「いつも通りodolらしく、好きに作ってください」とおっしゃっていただいたことがあります。

響太朗さんがどこまで意図してそうおっしゃていたのかは定かではありませんが、尊敬し信頼する響太朗さんの「いつも通り、odolらしく」という言葉は、
僕が「odolとは何か」ということに改めて向き合うとても重要な一言になったことは間違いありません。

タイアップでの制作は普段以上に、odolとして何が求められているのか、どんな音を・メロディーを表現するべきなのか、自覚的になるとても貴重な時間です。
その結果として今この曲を生み出せたことには、本当に納得感があるしこの機会をいただけたことに感謝しています。

「かたちのないもの」について

この曲は、UCC BLACK 無糖のキャンペーン「#この気持ちは無添加です」に書き下ろした作品です。

「小さなことをひとつ」が、MVを作るようにある意味で「いつも通り」に、曲に合わせて映像が展開していったのに対して、
こちらの「かたちのないもの」は、劇伴のように、映像やストーリーの展開、感情に寄り添うように組み立てていきました。
監督やプロデューサーと、ギターの残響の長さやピアノの1音があるか無いかといった、音の細かい部分まで、映像と同時進行で会話をしながら制作しました。

映像のリズム感や感情の展開に寄り添うことでodolには無かった発想が生まれながらも、この作品のプロデューサーとは以前も一緒に制作をさせていただいたこともあり、その信頼関係の中で、あくまでodolらしく表現できた曲になりました。

しかし、寄り添って表現したからこそ、ムービーの120秒間でストーリーや感情のダイナミクスが完結している分、曲としてリリースする際にどのように”その後”の展開をつけるかということには少し苦労しました。

色々と考えた上で、結論としては、ムービーの尺の時点で存在していない新たなメロディを登場させるのではなく、そこにもともと存在していたメロディーを発展させていくことで曲を構成していきました。

そうすることで、サウンドとしてムービー尺には無かった、最後のギターの轟音の中で歌のコーラスが何重にも響くセクションは、
キャンペーンムービーで表現されていた愛や葛藤のようなものに対しても、それに対してodolとして表現したかった「かたちのないもの」に対しても、深く繋がりながら、とてもフィットするサウンドになったのではないかと思います。

ちなみにこのセクションは、少しずつですがだんだんとBPMが上がっていっています。
つんのめりながらも前に前にと進んでいくような、この曲やストーリーに求められていたスピード感になっているのではないでしょうか。

「かたちのないもの」というタイトルや、歌っている内容については、ミゾベが書いたこちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。

「瞬間」について

「瞬間」は、今年1月に公開された『サヨナラまでの30分』という映画のリード曲として、劇中バンドECHOLLに提供した曲です。
先日、Blu-ray/DVDの発売が発表されましたよ!
(そして噂によるとまだ一部の劇場では好評により上映が延長されているようですので、ぜひ探してみてください。)

この曲はもともと、映画のオープニングシーンに使用される楽曲を依頼され、制作を始めました。
最初は、今の「瞬間」よりBPMも低く、開幕の壮大なイメージで構成したデモを提出しました。
しかし、監督やプロデューサーの方と会話を重ね、あくまでもECHOLLの楽曲として、疾走感や爽やかなサウンドと、少し影のあるメロディの共存を軸に据えた楽曲になりました。
そういった意味でもまさに”WEFT”として、odolだけでは作り得なかった音楽になっています。

ただ、だからといってその表現に違和感は全くありませんでした。
それは劇中で描かれていたECHOLLが、odol自身とも重なる部分がとても多くあったからだと感じています。
つまり、ECHOLLという他のバンドのことを想像しながら制作したというよりは、僕たち自身の少しだけ過去のことを思い出しながら、この曲の制作を進めていったのです。

ちなみにこの曲はECHOLLに提供した曲ですので、あくまでもセルフカバーという形でリリースしたのですが、既にたくさんのバージョンがあるところも楽しんでいただけるのではないかと思います。

「瞬間」/ ECHOLL 映画のオープニングシーンに使用。劇中のみで聴けます。Blu-ray/DVDで是非!
「瞬間(sayonara ver.)」/ ECHOLL 映画のエンドロールに使用。サウンドトラックにも収録されています。
「瞬間(piano ver.)」/ odol ミゾベと森山によるピアノバージョン。YouTubeで公開しております。
「瞬間」/ odol odolのセルフカバー。EP『WEFT』に収録。
(・「瞬間(Cover)」/名古屋ギター女子部 番外編です。)

是非聴き比べてみてくださいね。

ちなみに、この曲も歌と歌詞についてミゾベによる記事が公開されています。

“WEFT”はあなた

今回書いてきたように、このEPは、決してodolだけでは作ることのできなかった楽曲が収録されています。
しかし、それは今回のEPに限った話ではありません。
ミュージシャンとして・バンドとして音楽を誰かに届けようとする限り、どんな音楽も自分だけでは作ることができないこと、つまり常に「WEFT」は存在していたことを、今は確信しています。

それは、この記事に書いてきたような直接楽曲制作に関わりながら意見を交わす方々のことだけでなく、odolの音楽を見つけ、聴いてくれている皆さん一人ひとり、今この記事を読んでくれているあなた自身のことです。

あなたがこの音楽を、このコミュニケーションを受け取ってくれているという事実こそが、僕たちに次の音楽を作らせているということを強く実感しています。
そんなコミュニケーションを続けていくことが、odolとして目指す唯一の目標なのかもしれません。

コミュニケーションの手段は様々にありますが、ライブが出来ない現在、インターネットを介したコミュニケーションがとても大きな割合を占めているのは事実で、
そんな背景からこの「odol | backyard」もスタートしました。
様々にあるコミュニケーションの形のほんの一部でしかないSNSの存在が大きくなりすぎる中でも、ゆっくりと丁寧に、関わり合える場所になれば良いなと思っています。

少し話が逸れましたが、あなたが無限の選択肢の中からodolの音楽を選び、この記事を読み、一本の糸としてこの音楽に参加していただけたことに心から感謝しています。ありがとうございます。

繋がりを錯覚する時代。隙間へ満ちる音楽。

少し昔の話になるのですが、2018年、odolがTOWER RECORDSの「NO MUSIC, NO LIFE.」に参加させていただいた時に掲載したメッセージがあります。

繋がりを錯覚する時代。
隙間へ満ちる音楽。

ますます”ほんとうの繋がり”とは何なのか、見えづらくなっているような世の中ですが、ようやく今作『WEFT』で、この時考えていたことがほんの少しは形にできたのではないかと感じています。

「縦糸(経糸)」と「横糸(緯糸)」が数え切れないほど沢山に織り重なって出来ている大きな布の、その網目・その隙間こそに音楽が満ちているような、
そんなイメージを持ちながら、これからも音楽を作っていきたいと思っています。


森山


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