今日一日だけ
昔読んだ中島らもさんの小説だったかエッセイだったかに、ご本人のアルコール依存症の治療のことが書かれてあり、どうしても酒を飲みたくなってしまった時の対処方法として、「もう飲もう。もう飲む。ただ飲むのは明日。今日一日だけは我慢しよう」というような一文があり、アルコール依存症の治療というのはこの決断を毎日繰り返して、禁酒を一日でも引き伸ばすことだと書かれていた。
もちろん基本的には投薬であったり、カウンセリングであったり、医学的に効果のある治療をしながらというのが大前提で、その上でこういう対処方法というか気構えみたいなものが必要ということなのだが、この考え方自体は様々な依存症の方だけでなく、健康ではあるもののストレスなどによって、一時的に気分が落ち込んでしまって正常な判断が下せなくなってしまった時にも効果的で、状況が良くない時に自分にとってリスクのある重要な決断をしてしまうことを回避できる。
このことを本で読んでから自分も事あるごとに「今日一日だけ。今日一日だけ。」
と念仏のように心の中で唱えている。
世間一般では、先延ばしという言葉にあまり良いイメージはないと思うが、私個人としては先延ばしすることで開く扉も見える景色もあるんじゃないかと密かに思っている。
どうしても辛くて悲しくて良からぬ決断をしてしまいそうな時は、
「明日になったら何をやってもいい。そのかわり今日一日だけ、今日一日だけはどうにか耐えてみよう」
そう思うようにしている。
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