
日本で始まった精神療法①『内観療法』
精神療法という言葉を聞くと、ヨーロッパやアメリカをイメージされる方が多いのではないでしょうか?
フロイトの精神分析(オーストリア)
ユングの分析心理学(スイス)
ロジャースの来談者中心療法(アメリカ)
スキナーの行動療法(アメリカ)
これらの理論が精神療法の原型になっており、精神療法=欧米という認識が根強いのだと思います。
しかし、日本から始まった精神療法も幾つか存在します。伝統的な精神療法として、『森田療法』『内観療法』の二つが特に有名です。この記事では内観療法について紹介し、私の体験も交えて記事にします。
内観療法とは?
内観療法は、日本で生まれた精神療法の一つで、自己反省を通じて自己理解を深めることを目的としています。1953年に吉本伊信(よしもといしん)によって体系化され、主に依存症や対人関係の改善、不安やうつの軽減を目指して用いられています。特に日本的な自己観察の文化や感謝の感覚を重視した点が特徴です。
内観療法では、自分自身の過去を振り返り、特定の期間やテーマについて以下の3つの視点から深く考えます。
「他人から受けた恩」
「他人に対する迷惑」
「他人への恩返し」
この方法により、自分と他者との関係性を再評価し、感謝や反省の感情を育てることを目指します。
典型的な内観療法のセッション
クライアントは静かな環境で短期間(数日間)に集中して自己反省を行います。内観の対象としては、家族や友人、職場の同僚など、特定の人々との関係が挙げられます。これにより、自己中心的な思考や他者への不満を見直し、新たな気づきを得ることが期待されます。
日本では、学校教育や刑務所、企業研修、医療機関など多様な場面で活用されています。また、そのシンプルかつ深遠なアプローチは、仏教思想や禅の影響を受けており、精神的な安定や癒しを求める人々に支持されています。

私と内観療法
私が内観療法という言葉を初めて知ったのは、社会福祉士の養成講座だったと思います。先生から「日本の有名な精神療法⇒森田療法、内観療法の2つは最低覚えておいてください。」と言われた記憶が微かにある程度です。正直なところ、この当時は内観療法についても深堀することなく、試験対策の一環として暗記し、その後は暫く忘れていました・・・。
※他にもそんな、専門用語や法律用語が沢山あります(笑)
次に内観療法という言葉を聞いたのは、信頼できるヨーガ療法士からでした。私が仕事や人間関係で挫折、神経が過敏な状態が続いている時に、勧めてくれたのです。クライエントとしてのメンタル改善の期待と、専門職としての療法への関心が入り混じる中、内観研修所で一週間の集中内観を経験しました。
内観療法を終えて感じた変化
静かな個室に二開きの屏風を立てることで、音や光を遮断して内観しやすい環境が整えられていました。三度の食事、清掃活動、睡眠時間以外の殆どの時間、おそらく15時間近く内観しました。このような生活が一週間続きます。
正直なところ、じっとしていることが苦手な私にとってはかなりの苦行でした。集中力も続かず、意識が色々なところに彷徨っていました。
※内観以外のヨガの瞑想や座禅も苦手です。
しかし、苦手なりに一週間向き合う中で得られたものは、感謝の心でした。自分が今生きていること、仕事が出来てること、家庭生活を営めていること等‥。どれも、自分一人で成し得ているものではないということに改めて気づかされました。内観研修所を訪れるまでの自分は、この当たり前の感謝の気持ちを忘れてしまっていたのかもしれません。
集中内観中の気づきは、一日に数回実施される指導者との面接で言葉にすることで、より一層理解を深めることが出来ました。とても苦しい一週間でしたが、最終日を終えて内観研修所を出た時に、視界がとても明るかったことを今でも覚えています。

集中内観後、しばらくは周囲に感謝の気持ちを持ちながら過ごすことが出来ました。時間が経つとこの清々しい気持ちが少しずつ濁ってくる感覚に気づきます。その時には、日常内観(普段の生活を行いながら内観すること)やヨガの瞑想を実施して再び気づきを得るようにしています。
集中内観を経験して10年近く経ちますが、あの時の気づきを度々思い出すことで、心のバランスを図ることがあります。