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断片小説

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箸にも棒にもかからんかもしれん短い小説です。
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2020年3月の記事一覧

【断片小説】フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

【断片小説】フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

キッチンの上で、朽ち果てつつある古代の塔のように積み重なった、そのインスタントコーヒーのカスを見るにつけ、私はほとほと嫌になりつつあった。決まって一日に二つか三つずつ、そびえ立っていくインスタントコーヒーの塔を解体しごみ箱に捨てるのは、いまではすっかり私の朝の役目になっている。雨上がりの洗い立ての朝に(とはいってもすでに昼前だが)、彼の家に来てまずやることと言えばこれだ。おはよう、も言っていないの

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【断片小説】ベティ、マイク、それからキャシー

【断片小説】ベティ、マイク、それからキャシー

幾人もの東の寡黙な読書家から、幾人もの西の雄弁な研究者の手にまで渡り歩いてきた、数多の古書が、独特のにおいを路地に放っていた。町は古本市場で賑わっている。ここは日本の真ん中、東京都心から少しはずれ、神保町。
 今日は良く晴れた日だ。空には雲一つなく、太陽は熱心に地球を暖めようと懸命に努力していた。溶けかけの板チョコのような気だるさが、黒々とした照り返しのアスファルトから漂っている。そして時折、針の

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【断片小説】眠れない夜に数えるのがやぎで、大事なお手紙を食べてしまうのがひつじだ

【断片小説】眠れない夜に数えるのがやぎで、大事なお手紙を食べてしまうのがひつじだ

 とても嫌な予感がした。
 気だるい身体をベッドからべりっと引きはがし、すぐにベランダへと向かわせた。立った瞬間身体がぐらりとする。血液がぐるぐる身体を駆け巡っている。そして脳みそは乾いていて水を求めていた。深く眠りすぎたのだ。うまく身体をコントロールできていない。ガラス戸を開けた瞬間、強烈な時化が襲ってきた。急いで洗濯物を取り込む。
 とても酷い気分だった。宇崎の天気予想の通り雨は降った。それも

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