IT農業の中身を見ると
IT農業により施設園芸の生産性が上がったと言う話は、結構あります。
でもその中身まで中々報道されません。
実は、農業の研究者や生産者、農協や行政機関の指導者の認識もまちまちなんです。
それは、ITが直接生産性を上げたと言う事があまりないからです。
ITといっても、センサーと制御の装置があるだけなんです。
管理のアルゴリズムは、自分で作りなさい。と言うのがIT装置を提供する側の姿勢ですから、有効活用できる人とできない人が出るのは当然です。
オランダだと、IT農業=管理アルゴリズムの事なんで、大手の制御機器メーカー2社にアルゴリズムも集約されていて、研究機関はほぼ一つの大学が担っています。作物もトマト、キュクリ、パプリカ、花類、その他くらいで限られています。
各メーカーで育ったコンサルさんが世界中にシステムを輸出しています。日本でも導入されている。
面積が九州ほどのオランダで施設園芸が可能なのは、国土の1/4くらいの沿海部に限られます。内陸部だと寒くて無理。
夏も冬も温度湿度が安定している。緯度的に日照が少なく、大陸の川下なので水が制限されます。
だから、温度湿度のコントロールよりも、光と水のコントールが進んだ。温度湿度が安定しているとアルゴの変数が少ない。
だから、日本にオランダの仕組みを持って来ると役に立たない。でも、日本の生産者は、なんとか日本の気候に合わせた管理をして、オランダ並みの生産性に近付いています。日本だと水と光では有利ですし。
で、結局生産性を上げた人の中身を見ると、適当だった管理をちゃんとしたから上がったという人が多い。次に炭酸ガスの施用効果です。
だから、炭酸ガスを目分量で投入して、ちゃんと日誌つけてれば、ほとんど同じです。
もう、高価なITが要らない事がバレてしまった。
炭酸ガス投入だけちゃんとやれば30%増収くらいになる。施設園芸の祖利益率は、30%前後なので所得倍増です。でもトマトなんか参入が増えたので相場が下がって、設備投資負担で儲からない。
本当のIT農業は、光+水+炭酸ガスの投下量に対して、植物がどれだけ成長したかを計測して、それに合わせた環境管理をする事になります。
それができれば、どんな作物でも同じ農法で、誰がどこで生産しても同じ物が気候に関係無くできる事になります。
デジタル農業への道は遠い。
デジタル農業への道のりは遠い。でもたどり着けない訳ではありません。
施設園芸の分野は、世界的に見ると実は日本はトップグループにいます。例えば、人工光型植物工場。これが経済的に採算が合う経営をしているのは、小規模プロジェクトを除けばたぶん日本だけです。
日本農業は、自動車産業や工作機器、device、コンビニなどと並ぶ数少ない世界レベルの産業なんですけどね。
そういういみでは、銀行や家電などよりも、遥かにすごいんですね。
でも、遅れた産業だと思われている。
それは、世界農業自体の比較競争力が低いから、仕方のない事なんです。
オランダの施設園芸がIT産業より進んでいるわけではない。
これからの農業に関係する人は、世界の農業を変えるにはどうしたらいいか?という視点を持つべきなんです。
世界中の農業者とコラボしないと農業の比較競争力は上がりません。
生産技術面、生産組織、販売方法それをみんなデジタル化するにはどうしたらいいかを世界レベルの視点で再構築することが必要です。
目的は、誰でも、どこでも、いつでも、同じ農産物を計画的に生産するにはどうしたらいいか?
これを、全ての視点でデジタル的に再構築するのが、農業のデジタル化なんですね。ブランド化は、隙間産業みたいな物です。
収穫ロボットをつくる事は、優先順位のあまり高くないワンピースです。
技術的に優先順位が高いのは、植物生育情報のセンサーを作る事です。これ光合成能力を測る機械だと軽く1000万円。それでも井関農機が開発して数百万円で提供しています。でも光合成能力を測ってもまだ足らない。
それが、どこに転流して花や実になるのかまで測らないとダメなんです。
だから、植物生育スピードを測ればいいという事になります。今の数値で無く、変化率を追うのです。
でも、植物差や品種差がある。
トマトなら芽と茎の伸張、みかんだと果実肥大速度、キュウリは成長が早すぎるので、前週の収穫量らしい。
バラバラだとデジタル的に集約できません。
でも、画像認識を使えば、統一的な原理になります。
トマトもキュウリもみかんも毎日圃場の定点画像を取って、生育と相関させたデータをAIで作ればいいのです。
これには、気候変動まで網羅した大量のデータが必要になります。世界中の農家や研究者の知見の共有が必要です。
DXとかAIって、かつては外国語をカタカナ書きにしてわかったような気になるって言う習慣をさらにアルファベットにしてブラックボックス化させてしまっている。
実は、デジタル思考も理系脳もブラックボックス思考なんですよね。
ややこしい概念をいろいろややこしく考えて、数式や公式を発見する。
誰かが発見したその公式や思考回路を疑いなく使い回すのが理系脳=抽象化思考です。
経済理論や法律の概念も同じだから、知的生産とは、ブラックボックス思考の積み重ねだと思います。
その結果、全ての理由はわからないけど、電気や通信を使い火星にまでロケットを飛ばす事ができているのが人類の進歩とも言えます。
でも、時にはブラックボックスの中身をよく理解しておかないと、誰かに騙されてしまう事があります。又は、言葉にとらわれて無駄な投資をする事になる。
最近では、AIとかDX。だいたいなんでトランスフォーメーションがXなんだともうわからなくなる。
具体的に言うと、同じ物を誰でもどこでも同じように作るのはちょっと前でも難しかった。
ドイツ製のBMWと南アや中国製のBMWには違いがあった。タイで生産された日本車は、どこか違っていました。
で今はほとんど違わない。デジタルブラックボックスのおかげなんですね。
今、DXというと変革というよりも入出力データやアプリをデジタルプラットホーム上で使い回すようなニュアンスの総称になっています。
階層間の中間機能や仲介が不要になるので、コスト削減やアクションスピードが上がり、決定されたアルゴリズムに基づいて仕組みを回す事が可能。
それを社外のネットワークも包括するとマーケティングや調達の精度も格段に上げる事ができるという事になっている。
つまり需給の無駄が排除できる。
これによって、世界中の誰でもどこでも同じ物を作る事も買うこともできる仕組みがデジタル化の理想的な目標になると思います。
だから、格差の是正が終着地なんですね。
でも、たぶんそうはならない。DXやAIが進めば進むほど格差が拡大していきます。
それは、DXコミュニティが非DXコミュニティの需要や付加価値をどんどん奪ってしまうからです。
IT格差は、コロナ禍で急速に拡大します。例えば、リモートワークできたところとできなかったところの差は大きい。
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