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そして原因。
人間は常に動機づけをしたがる生き物なのだ。と常日頃思っている。何か悪いことが起こったら、日ごろの行いや何々したのが悪かったからだ、とついつい考えてしまう。悪いことが起こっても、別に動機など探す必要はどこにもなく、ただ受け入れればそれまでだろう。しかし動機づけをすると悪いことが起きたことへのダメージが軽減されたり、そもそも心地良いのだろうということも理解している。人間はそういうシステムで生きているのだろう。
人間と同じように、シリンダーの傷も動機づけ(原因追及)しなくても受け入れたらそれでいいじゃないか。そう済ましたいものだが、それを追求しなければ再発するリスクは残るし、そもそも飯を食ってはいけないだろう。というわけでシリンダーの傷の原因を探るべく分解、点検、考察のプロセスや結果を解説しよう。
この度の深い傷はピストンピン(リストピン)の抜け止めであるリテイニングリングが外れ、ピストンピンが抜け出てシリンダー壁と接触し傷を作っていた。シリンダーはあれ程削れているのにピンは角が丸くなる程度であるということに驚く。そして一つ疑問が湧いてくる。エンジン運転時の振動や何かでピストンピンが抜ける方向に動くということは理解し得るが、あの傷は言わばピンをシリンダー壁に強く押し当てて出来た様な物に見える。であればその方向の力はどこから生まれたのか?
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いやいや、そうではなくピンによってリテイニングリングが押し出されシリンダー壁に接触。その後に噛み込みリングはバラバラになり下に落ちた。あの傷はリングの噛み込みの際に出来た物だろう。そう考えることも出来る。後記するが実際リングはバラバラになって下から見つかった。どちらにしてもピンがその方向に動く、もっと言うと動き続ける何かがあるのではないか、その何かが今回の原因だろう。
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