夢がひとつ叶った
こんにちは!作曲家のodasisです。
ギターの演奏・録音で参加させて頂いたアニメーション映画がめでたく公開になりました!わーい!
狐野智之さんの劇伴(=劇中のBGM)のギター演奏です。僕が弾いているのは歌楽曲以外のBGMです。
アニメ作品に関わるのはこれが初めてです。
1000話/年で視聴するアニメ好きにとっては、ささやかな夢がひとつ叶ったというところでしょうか。
サウンドトラックもリリースされています↓
ギターもとても心地よい存在感です。編曲とエンジニアリングのおかげです。
作曲の狐野さんは熱量が凄かったです。作曲家としてもとても刺激をもらいました。僕も頑張ります。本当に…
数分間のエールを
扱う題材はMV(ミュージックビデオ)です。
自分も普段から自主制作で歌を作ってMVを公開しているので、まさに自分の活動の延長にあるようなテーマ。
作曲の狐野さん曰く、僕を選んでくれた理由のひとつがこれだったとのこと。試写会でいろいろ感極まってめっちゃ泣いてしまいました。
クリエイターとしてのキャリアは8年目になる僕ですが、これまで捨てたものや手が届かなかったことがそれなりにあります。
もちろん得たものもあったし、意地になって喧嘩したこともあります。
そういう自分のこれまでが少しずつ散りばめられているような、そんな作品です。泣いちゃいますね。
ネタバレもよくないので、ぜひ劇場に足を運んでください!
ES-335
楽器がブランド名付きでアニメ作品に登場するのは珍しいことでは無いのですが、今作ではなんとGibson ES-335が登場します。しかもチェリーカラーです。
これは大事件です。ES-335がキービジュアルに出てくる時点で僕は満腹です。
大きいボディにバイオリンのようなf字の穴が特徴。
ジャズやフュージョン系のギターというイメージが強いですが、僕が大好きなオアシスのノエルギャラガーはじめ(彼は上位モデルのES-355)、ロックでも見かけることが多い形状のギターです。
世界の名だたるギタリストたちが使ってきた由緒ある楽器ですが、”令和の日本のギターサウンドの中心にいるか”というと微妙な気がします。
でもそれが良い。
往年のスターに対する憧れ、温故知新、独特の形状が放つオーラ…
時代の流れに取り残されそうでも絶対に消えない普遍的な魅力を感じるのがES-335です。
今作でギターの選定にどれくらいの意図が込められていたのか分かりません。大人の事情も多そうです。
でも、ES-335からは登場人物の「夕」の音楽性やキャラクターの背景への想像が膨らむし、なにか必然性のようなものが感じられてドラマチックです。
長くなるので割愛しますが、今作で登場するアコースティックギターのGuildも同じくでしょうか。こっちはそこまで詳しくないのですが。
僕自身、オアシスのノエルギャラガーに憧れてギターを始め、そのうちにリーリトナーでフュージョンにハマり、これまでのギター人生の中心にはずっと赤色のセミアコがありました。
僕が愛用するES-335はずっとお世話になっていた個人経営の楽器屋の店長が亡くなる直前に僕のために仕入れてきてくれた1本です。
電機メーカーの人事の仕事から、開発会社のサウンド職へ転職した際に奮発して買った思い出の1本です。
楽器は思い出の数だけ音が良くなります。大事にします。
演奏家が関わる時間
作品が完成するまでの中で、演奏家が関わる時間はとても短いです。
スタジオミュージシャンはもちろん、宅録で関わる僕のような演奏家もそうです。
スタジオミュージシャンは本当に凄いです。
彼らはレコーディングスタジオに来て、数回練習して、録り始めて3〜4回目くらいにはほぼ100点の演奏を返します。(もちろん人によります)
演奏する曲をスタジオの現場で初めて聞くというミュージシャンも多い気がします。(もちろん人によります)
売れっ子は引っ張りだこです。1日に複数の現場を回りますし、ローディがつくこともあります。何十曲を1日で弾くこともあるし、数日経てば弾いた曲を忘れてしまうかもしれません。
僕は縁あってようやく1作品の楽器演奏に関わることが出来ましたが、売れっ子は毎日そういう作品に関わっています。
僕にとっては「夢が叶った」ですが、スタジオミュージシャンにとってはそれが「日常」です。そういう知り合いがたくさんいます。そういう世界と思います。
■作曲家が関わる時間
演奏家の関わる時間が凄く短い一方で、作曲家が作品に関わる時間はもう少し長くなります。
曲を作るのには時間がかかるし、いろんな人の意見を聞いて修正したり作り直したりしますし、仕様や演出が変わればやり直しになる作業も出てきます。
僕は遊技機の開発会社にサウンドとして勤めていたので、年単位で曲作りを進めたことがあります。曲数が多いのもありますが、業界的な事情で時間がかかるのもあります。
何ヶ月もチマチマ修正を重ねて、一生懸命作った楽曲もレコーディングの現場に持ち込めばそこからは一瞬です。1番重要な、1番時間をかけた楽曲が1テイクで終わったりします。あっけないです。
でもそれで良いのです。それだけ良い準備ができていたということだし、ミュージシャンやエンジニアを初めとした関係者の腕が良かったという話です。
■もっと上流の工程
音楽制作より上流の工程になるともっと時間がかかります。
専門外なので具体的にどんな工程があるのかわかりませんし、業界によっても違ってくるはずなのですが、一般に企画(ゲームならゲームデザイン)と呼ばれる領域でしょうか。
3年半…凄いです。
かけた時間の分だけ愛情が湧くのが自然と思います。
「時間をかけないと愛情が生まれない」という話ではないです。
「時間をかけるべき」という話でもないです。
あくまでそれが自然だと僕が感じるだけです。
かけた時間にはやっぱり重みを感じるし、演奏家のような短時間の関わり方では見えてこない熱量や思い入れがあるのだろうなと思います。
制作と演奏の両方を行う自分は、かけた時間に応じて動くそういう感情をより一層強く感じます。
どっちが良い悪いの話では全くなくて、単純な役割の違いです。
僕だって仕事は早く終わらせたいですし、上手な人ほど早いのが世の常です。
ただ、時間をかけて積み上げてきた人たちの想いを理解したつもりにはなりたくないし、形にして世に送り出すことはそれ自体が凄く尊いことと思います。
おしまい
というわけで、
■初のアニメ作品
■自分の人生が散りばめられたような創作をテーマにした作品に
■自分の1番の愛機と同じモデルが登場し(アツい)
■本分は作曲家ながら
■演奏という比較的短い時間で関わる
という刺激の多い仕事の報告でした。
選んでもらえた嬉しさと、憧れだったアニメ作品に関われた嬉しさと、制作のド真ん中にいるわけではないという少しの切なさと…
いろんな感情が込み上げてきました。これも青春群像劇です。
というわけで今後に活かしていきたいと思います!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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