井岡防衛戦のアンダーカードで、ナワポンとダナイの世界戦経験者が出場~12月31日東京
12月31日に東京の大田区総合体育館で行われるWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ、井岡一翔対ホスベル・ベルス戦で、アンダーカードにタイのNKL(ナコンルアン)プロモーションから、ナワポンとダナイが出場し、いずれも日本人選手と対戦する。
ナワポンとダナイは、共に過去に世界タイトルマッチを経験しているタイで第一線級の選手。ナワポンについては、8月のWBCバンタム級指名挑戦者決定戦のKO負けからの再起戦となり、セミファイナル10回戦で、元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾と対戦する。
ナワポン・カイカンハ(タイでは、ナワポン・ナコンルアンプロモーション、またはナワポン・ソールンビサイ)は、元スーパーフライ級世界王者のスリヤン・ソールンビサイの弟で、これまで、プロ戦績58勝48KO3敗1分の戦績を誇るベテラン選手。対戦相手の比嘉大吾同様に、元々はフライ級で戦っていたが、現在、WBC世界バンタム級5位にランキングされる。
2017年には、ナワポンはデビュー以来37戦無敗(36勝1分)を記録し、WBC世界フライ級1位に上り詰め、当時世界2位のファン・エルナンデス(メキシコ)とバンコクのナショナルスタジアム併設の体育館でWBC世界フライ級王座決定戦を行った。
これは、当時の3階級王者でスター選手のローマン・ゴンザレス(ニカラグア)の階級アップで空位となった王座を狙ったものだが、この世界戦でナワポンは、良いところがなく、3ラウンドKO負けで散った。兄のスリヤンや、同僚のシーサケット・ソールンビサイに続く世界王者誕生かと関係者やファンの期待を集めていたが、厳しい結果に終わった。
そしてナワポンに勝利したエルナンデスは、初防衛戦で東京で比嘉と対戦し、6ラウンドKO負けでWBCフライ級のタイトルを手放した。比嘉が世界王座の防衛ロードを進んでいる際には、ナワポンはスーパーフライ級で再起し、WBCアジアコンチネンタル王座を獲得し、さらにバンタム級に進出してWBCアジア王座に輝いた。
オーソドックスな構えから、丁寧にジャブをついて、試合を作る基本に忠実なスタイルで、同じく元世界王者のアムナート・ルエンロン(タイ)、ソニ・ーボーイ・ハロ(フィリピン)、コンパヤック・ポープラムック(タイ)らを下した。ハイペースでの試合で様々なスタイルの選手と対戦し、幅を広げていったが、なかなか世界戦線には復帰できずに5年が過ぎた。
そして、2022年10月に、ようやくチャンスが訪れる。フライ級以来2度目となる世界戦に繋がる試合として、WBOバンタム級挑戦者決定戦に出場することになった。NKLプロモーションは、WBCとのコネクションが強い印象だが、先にWBOから話が来たため、また充分に勝ち目があるとして試合を決めた。
対戦相手は井上尚弥に挑戦したことのある、ジェイソン・モロニー(オーストラリア)で、ナワポンは敵地メルボルンで12ラウンドを戦い抜いたが、大差(110-118、110-118、109‐119)でモロニーが勝利してWBOバンタム級の指名挑戦権を手にした。
WBOバンタム級は、井上尚弥が王座を返上し、モロニーは元世界王者のリゴンドーをドバイで破ったビンセント・アストロビオ(フィリピン)と対戦して、判定勝ちを収め、三度目の挑戦で悲願の世界王者となった。そしてナワポンは、モロニー戦後、格下と二戦をこなした後で、WBC指名挑戦者決定戦に出場するチャンスが舞い込んだ。
対戦相手はモロニーに負けたばかりのアストロビオで、モロニーに負けた者同士が今度はWBCの指名挑戦権を争う。当時58勝2敗1分のナワポンに比べて、アストロビオはプロ18勝4敗とキャリアはナワポンの半分以下。
ナワポンのバンタム級での世界戦を実現させたい陣営は、交渉の末、この試合をなんとか地元のバンコクでの開催に漕ぎつけた。12回戦で行われた試合は、好勝負で序盤を失ったナワポンが中盤から接近戦に転じ、後半を追い上げた。終盤はナワポンペースで、そのままアストロビオを押さえるかに見られたが、くせ者のアストラビオは11ラウンド強烈な右フックカウンター一発で全てをひっくり返した。
強烈なダウンを喰らったナワポンは必死に起き上がるが、アストロビオ連打を浴びてストップ。勝利まで、あと一歩まで来ており、負けたものの評価を落とす試合ではないと感じた。世界ランカーの実力を証明したと言える。タイのファンの間では「福地主審のストップが早すぎる」という声も聞かれた。ムエタイも含めて、タイではストップが遅い例が多い。
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その後、アストロビオはWBCの王座決定戦をノニト・ドネアに譲った形だが、新チャンピオンのアレクサンドル・サンティエゴ(メキシコ)への挑戦は中谷潤一が優先され、また待たされることとなる。
そして非常に厳しい日本での再起戦を決めたナワポン、これが世界へのラストチャンスになる可能性も高い。バンタムでモロニー、アストロビオと渡り合ったナワポンがどこまで比嘉に通用するか興味深い試合でもある。
接近戦でアストロビオに肉薄したナワポンは、比嘉の圧力にも屈しないというタイ側の予想も多い。ナワポンが距離をとるとかなり懐が深く、離れても比嘉は攻め難いと見る。
比嘉にとっては、明白な形でナワポンに勝利すれば、バンタム級での実力を示し、現在16位の世界ランキングも大幅にアップする。
そしてもうひとり、タイからナワポンの同僚、ダナイ・ニアプーキウ(ダナイ・ナコンルアンプロモーション)が出場する。ダナイは豊富なアマチュアボクシング経験があり、パンヤ・プラダブスリ(タイ)が保持していたWBC世界ミニマム級王座に挑戦したこともある。今回はスーパーフライ級8回戦で重里侃太朗と対戦する。
ダナイはWBCアジアライトフライ級王者として世界戦のチャンスもうかがってきたが、6月の防衛戦でフィリピンのマルコ・ジョン・レメンティゾにまさかの4ラウンドKO負けで王座を失った。
タイのライトフライ級では、矢吹正道とも対戦したタノンサック・シムシーと並んで世界王者候補と言われていたが、大きく後退してしまった。その後、格下を相手に3連続KO勝ちで重里戦を迎える。
ライトフライ級で強烈なKOも演出してきたダナイは、1階級下のミニマム級の世界戦では、パンヤを追い込んであと一歩の健闘を魅せた。今度は2階級上のスーパーフライ級、しかも初の海外遠征で、どう戦うのかタイのファンから注目されている。
Photo credit : NKL (Nakon luang) Promotion
↓ ↓ パンヤ対ダナイ戦ミニマム級世界戦のハイライト動画(ダナイの判定負け)
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