女王ソムラッサミーの連勝は16でストップ、バーバラとクワンチャイが決勝へ~2024年11月2日のRWS
今年、5階級で開催されている、RWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)トーナメントだが、女子バンタム級、フェザー級2階級の準決勝が11月2日にラジャダムヌンスタジアムで行われた。
トーナメントでは半年をかけてそれぞれの階級の優勝者を決定する。選抜された8人の選手が、4人ごと2つのグループに分かれ、グループ内で総当たり戦(3回戦)を行い、上位2名づつが準決勝に進むことができる。準決勝(3回戦)を勝ち抜いた2人は12月の決勝(5回戦)で対戦する。
この日、女子バンタム級ではバーバラ・アギラーが16連勝中の”女王”ソムラッサミー・マーノップムエタイジムを下し、決勝進出を果たした。もうひとりの決勝進出者は、クワンチャイ・クワンチャイムエタイジムとなった。
フェザー級は前ラジャダムヌンスタジアム認定同級級王者のチャイラー・ポー・ラクブンが元ルンピニースタジアム認定3階級王者のロンナチャイ・メー・ミンブリーを下して決勝進出、優勝の本命であった、ビュー・ペッコーソンが元オムノーイスタジアム認定フェザー級王者ルアチ・ゴードン(イスラエル)に敗れる波乱、チャイラー対ゴードンが決勝カードとなった。
ソムラッサミー対バーバラ・アギラー
ソムラッサミーは2022年(女子フライ級)、2023年(女子バンタム級)のRWSトーナメント優勝者で、現ラジャダムヌン王者、それぞれのベルトを3本を掲げての入場は貫禄充分、リーグ戦のBグループでは3戦全勝で1位で勝ち抜けた。一方の、バーバラ・アギラーはAグループのリーグ戦でマリー・ルーメットに判定負けしたものの、グループ1位で準決勝に進出したクワンチャイには勝利し、2位での進出となった。
マリーに負けて若干、評判が落ちたものの、それまではバーバラも13連勝しており、優勝候補の一角でもある。(10月3日発表のラジャダムヌンスタジアムの女子バンタム級ランキングは、1位バーバラ、2位マリー、5位にクワンチャイとなっている。)
試合が開始されると、まず、バーバラのパワーが目立つ。ソムラッサミーは後手後手に回るような展開で、初回はジャッジ三者がバーバラを支持した。いつもはここから逆転が始まるソムラッサミーだが、二回になっても、執拗に首相撲を仕掛けてひざを叩き込んでくるバーバラを止められない。
身体が柔らかく、また首相撲で絡みつくバーバラは、ニックネームの”アナコンダ”そのもの。調子を落としているのか、いつものような冷静さも欠けているような印象を受けるソムラッサミー、このままずるずる二回、三回もポイントを取られた。ジャッジは三名共が30‐27を点けるバーバラの完勝となり、ソムラッサミーの連勝は16で止まった。
クワンチャイ対マリア
クワンチャイはニックネームは”THE TEACHER”で、普段は教員をしているチャイヤプーム出身の30歳、リーグ戦ではバーバラに負けたものの、マリー・ルーメットを下している。62勝24敗2分と抱負なキャリアと堅実なスタイルで、女子バンタム級で波乱を引き起こしているマリアと対峙する。
マリアはブラジル出身の21歳、6試合でノックダウンを7回奪取、リーグ戦初戦はメリーに引き分けたが初回にダウンを取り、カラケードにはKO勝ち。判定負けしたソムラサッミーにもダウン寸前に陥れた。キャリアはわずか3年だが、戦績は26勝5敗1分、ブラジルのムエタイチャンピオンに3度輝いているとのこと。鋭いパンチやヒジを振り回してくるアグレッシブなスタイルで、RWSでもKOを量産している。
試合は初回、危険なタイミングでパンチを振ってくるマリアだが、クワンチャイはミドルキックやパンチで攻撃を遮断、距離感も抜群でマリアを中に入らせない。クワンチャイのセコンドには元ボクシング世界王者のデンカオセーンの姿も見える。(現在シンハマーウィンジムのトレーナー)
初回の前半の攻防で、すでにマリアの攻撃でクワンチャイをKOできないことが見て取れる。初回の採点は、ジャッジ3者ともにクワンチャイの10-9。クワンチャイは二回には、浅くマリアのパンチを喰らうが、決定打はもらわない。マリアもミドル、ハイキックを見せて、パンチだけではない実力も見せる。この回、採点は分かれるが、ややクワンチャイか。そして三回はクワンチャイが抑えて、危なげなく決勝進出を決めた。
決勝のカード、バーバラ対クワンチャイは、9月のリーグ戦に続いての顔合わせとなる。前戦ではポイントを取り合う競った内容だったが、バーバラが勝利。この二人は2021年に MUAY THAI SUPER CHAMPでも対戦しており、この時はバーバラが三回にTKO勝ちしている。二人の対戦成績はバーバラの2勝0敗ということになる。12月14日の決勝では、クワンチャイのリベンジがなるか、または返り討ちに遭うか、再び会場で見届けたい。
クワンチャイは勝利者インタビューで「こうして決勝に進めるとは思ってもいなかった。今回、学校の学期が終了していたので、シンハーマーウィンジムで集中して練習する時間が確保できた。ジムに感謝したい。(バーバラとの再戦には)今まで以上の準備をして挑みます」とコメント。
続いてリングに上がったバーバラは「決勝に進めることができて幸せです。(クワンチャイとの再戦については)自分のスタイルで9月の前戦と同じことをするだけ」とコメントした。
ビュー対ルアチ・ゴードン
ゴードンは13勝5敗、ビューは122勝19敗1分とキャリアに大きな差があることから、前評判は圧倒的にビューであった。初回はビューが前蹴りと左右フックなどで積極的に攻めていくが、ゴードンの返しのパンチが重そうに見える。初回の採点は二者がゴードン、一者がビューを支持。二回が開始されるとゴードンは左右ミドル、前蹴りと積極的に攻めていく。二回終盤、ゴードンのヒジ攻撃でビューは右目上を切り、ビューの顔面が流血に染まった。三回はゴードンが必死に追ってくるビューの攻撃を遮断し続けて、試合終了、ゴードンが決勝進出を決めた。
チャイラー対ロンナチャイ
これまで63勝12敗1分のチャイラーと94勝10敗3分のロンナチャイは、共にサウスポー。元王者のテクニシャン同士の試合に、初回から会場は緊張感に包まれる。長身のロンナチャイの右前蹴りがファーストヒットすると、チャイラーも前蹴りを返す。ロンナチャイのダイナミックな左ミドルがチャイラーを襲うが、チャイラーも左ミドルを決めていく。チャイラーのワンツーなどパンチも良いタイミングでロンナチャイに当たる。初回の採点は二者がロンナチャイ、一者がチャイラー支持と割れた。
二回に入り、ロンナチャイがより積極的に左ミドル、前蹴りを仕掛けていくが、チャイラーのコンパクトな左ミドルのほうがより当たっている。時折、うまくパンチを織り交ぜるチャイラーが二回はポイントを取った。三回は、お互い流し気味ながら、ややチャイラー。3‐0の判定でチャイラーが決勝進出を決めた。
チャイラーは勝利者インタビューで次のようにコメントした「(四年前に一回負けたロンナチャイとの対戦は)はっきりと自分が勝つ自信があった。毎回しっかり準備して試合に臨んでいる。四年前にロンナチャイに負けた時は、ダメージで身体中が痛かった。今回もサポートしてくれたトレーナー、応援してくれる皆さん、ありがとう。必ずチャンピオン(RWS優勝と、ラジャ王者奪還)になります」。
続いてリングに上がったゴードン、インタビュアーにコメントを求められて「過去に同じジムでチャイラーと練習していた。その頃からチャイラーは私のアイドル、あこがれの先輩だった。決勝でチャイラーと対戦できるのは光栄です」と話していた。
※ラジャダムヌンスタジアムで現地観戦、写真は著者撮影のもの。
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