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最後の砦はAfter Effects!? 〜脱Adobe検討〜

私自身、お仕事の道具としてAdobe Creative Cloudが支給されている。買い切りではなくサブスクで、個人で契約するには少し身構える程度のお値段はするため、巷では「Adobe税」と呼ばれることもある。

私が同僚のAdobe決裁をまとめて挙げている役割なのだけど、もしも話として「会社が支給してくれなくなったら、脱Adobeしても同じアウトプットが出せるか?」について検討してみた。

あくまで、私の目から見えている世界の話として、それぞれのソフトに対する脱Adobeの難易度を「★★★」で評価する。「おまえ、ろくにデザインしてへんやろ!」というツッコミは受けて立つ!



UIやワイヤーフレームには:XD → Figma(☆☆☆)

かつてWebのワイヤーフレームを描いたり、UIデザインを描いたりするツールとしては、XDが主流だった。ちょうど、エンジニアやってた頃はよくXDのリンクが送られてきた。

新しい業界は盛者必衰なのか、ここ数年でFigmaが台頭して追い上げてきている。2022年にはAdobeがFigmaを買収を試みるも、独占禁止法の観点から頓挫した事件もあった。

気付けばFigmaの方が強くなり、既にXD単体での提供終了されているよう(現時点でもAdobe Creative Cloudの中には健在)。

私も実際にFigmaを使っている。直感的にも分かりやすくて、同時編集できて、デザインツールとして優秀でありながら、実装を意識した組み方もできる。

既にXDで作った資産が多くある場合には、脱Adobeの難易度は上がる。だけど、移行のTIPSなんかもnote内にあるので、大変ながらも何とかなっていそう。

ちょっとしたバナーやSNS投稿なんかもFigmaで事足りて、「もうこれで良いんじゃない?」とさえ思えてくる。無料版だとボード数に限りがあるから、現実的に仕事で使うならば有料サブスクだろう。

でも、調子に乗って有料ボードに編集者を招待しまくると、気付かないうちに請求額が膨らむので注意。外部編集者を巻き込む場合は、無料ボードを使うような謎状況にはなる。


ドローイングには:Illustrator → Figma or Affinity(★★☆)

先述の通り、ちょっとしたドローイングの範囲で、最終的に画面表示するものであればFigmaで事足りる。難易度「☆☆☆」でもよい。

ガチのイラストを描くならAdobe Illustrator一択だろうし、画面用ではなく印刷用の入稿データが本業な場合も、Illustratorや場合によってはInDesignが必要となる。こちらであれば難易度「★★★」になるかもしれない。

少し調べると、検討した方が既におられた。もし自分が試すならAffinityを買うか、無料のInkscapeで凌ぐかは検討に値するだろう。


写真の現像にはLightroom → Luminar Neo(★☆☆)

写真のRAW現像に関しては、各カメラメーカーも提供しているが、いちいちSONYとNikonでソフトを使い分けるとかはメンドイ。

せっかくあるのでLightroomを使う。最新カメラに買い換えても、アップデートで対応してくれるのも、地味に便利なサブスクの恩恵だろう。

脱Adobeするならば、選択肢として挙がるのはAIレタッチに定評があるLuminar Neoだろう。こちらの記事、前半はRAW現像の基本的な話だが、後半にLuminar Neoについて説明しておられる。

値段はLightroomの半額程度でサブスクもあるし、買い切りでも1万5千円程度。時期を待てばセールもあるかもしれないので、今は困っていなくても狙ってみたい。


レタッチには:Photoshop → GIMP(★☆☆)

ちょっとしたゴミを取り除く程度であれば、現像ついでのレタッチで事足りる。そういえば過去に、レタッチとは何か?について書いた。

この節の話題は狭義のレタッチ、その中でも高度なものとなればPhotoshopに頼るだろう。例えば、別々の写真に写った被写体を同じ空間にいるように溶け込ませるとか。後から仕上がるUIイメージを、画面の映り込みも考慮しつつはめ込むとか。

この作業を脱Adobeするならば、フリーソフトのGIMPを検討する。というか、Adobeが支給される以前の私は、ちょっとしたレタッチをGIMPで頑張っていた。

細かい位互換性まで考えると支障はあるかもしれないけれど、私がPhotoshopやIllustratorを持っていなくても、他の誰かが持っていてお願い&変換ができるなら、組織としては回りそうな気がする。

この意味で、生産性・作業頻度・クオリティさえ許せば、「やってやれないことはない」印象を持っている。


定型の画像加工:AIでもPSDでもなくImagemagick(☆☆☆)

複数の画像をタイル状に並べるとか、数十枚のフォーマット変換とかの、ハードに組み込むために特定位置にはめこむとか。

枚数の多い定型作業であれば、マウスでPhotoshop操作を繰り返すよりも、コマンドベースで画像編集できるImagemagickを、スクリプトからぶん回す方が速い。

けっこうデザイナーのみなさんは、繰り返しのマウス作業を厭わずにやってしまう印象がある。ちょっとしたプログラミング的な工夫は必要だが、自動化できるもんは自動化するような引き出しも持っておいて損はないと思う。


動画制作にまつわる諸々はDaVinci Resolveに置き換えられる?

動画を作るにあたって、大きく分けて「動画編集」と「視覚効果」がある。
時間方向(横)に長いのが「動画編集」で、たくさんのレイヤーを縦に積み重ねるのが「視覚効果」である。

このあたり、Adobeは別々のソフトに役割を持たせており、それぞれを連携させている。対抗馬となるのは、オールインワンなDaVinci Resolveだろう。


Premiere Pro → DaVinci Resolve(☆☆☆)

「動画編集」に関しては、既に私はDavinci Resolveに乗り換え済で、脱Adobeしても困らない。無料版でもそこそこ使えるので、試す敷居は低い。アップデートで機能追加もあるし、色調整まわりはPremiere Proより操作性良いとさえ思う。

4Kの書き出しや、エフェクトなどは有料版が必要となる。私はセール時期にハードウェアついでに手に入れた。ソフトウェアの買い切りで4万くらいだったか。

強いてPremiere Proを使うシーンとしては、過去の資産がPremiere Proだった場合、共同作業者がそれを使っている場合、素材データにAdobeの編集データが多い場合が挙げられる。


After Effects → DaVinci Resolve Fusionタブ(★★☆)

動画の中で、ロゴジングルやトランジションをかっこよく動かしたい場合は「視覚効果」を作り込むことになる。

動画編集→視覚効果の連結:Adobeであれば、Premiere Proから別ソフトであるAfter Effectsへと送り、別ソフト操作となる。Davinci Resolveであれば、同一ソフト内のFusionタブで完結する。どちらも連携はできていて、慣れてしまえば大きな違いではない。

表現力と操作性:仕様上は同じくらいかもしれない。ただ、操作性のところで、レイヤーを重ねてキーフレーム打って作るAfter Effectsの方が直感的に理解しやすい。取っつきにくいFusionは使いこなせていない。

DaVinci Resolve Fusionはノードベースの思想で、システマティックではあるけれど、使いこなすのが難しい。「重ねたいだけなのに、いちいちMergeノードで繋げなあかんのかい!」みたいな。

スクリプト:After EffectsのスクリプトはJavaScriptベース。マウス操作で他の要素からピッグウィップを引っ張って、四則演算からとっつけるので、敷居は低い。
一方のDaVinci Resolve Fusionは、Luaやpythonで書けるっぽい。画面操作での手がかりは少ないし、TIPSも少ないので、ついAfterEffectsに逃げてしまう。note内に記事あったので挑戦したい。

↑これはノード配置をスクリプトで書く方法だった。キーフレームまわりまで書ければ、After Effectsのエクスプレッション相当にはなるだろう。

私の習熟度が上がれば解決する類のハードルとは言え、ユーザーが多い→TIPSやプラグインが豊富→またユーザーを呼ぶような循環は無視できない。この意味で、最後の砦はAfter Effectsじゃないかと思う。


整音するなら:Audition → iZotope(★☆☆)

Adobe Creative Cloudには整音のためAuditionなるソフトが提供されている。一方のDaVinci Resolveには、動画の音を整える機能もFairlightタブに集約されている。

ちゃんと録音できた動画であれば、イコライザーいじって、コンプかけて整えるのには困らない。この意味で難易度「☆☆☆」とも言える。

ただ、録音にミスって雑音が多い場合などは、DaVinci Resolve上でノイキャンかけてもイマイチ期待通りの効果が得られず、やっぱりAuditionに頼っている。

Auditionが無くて困るか?で言えば、DTM界隈の人々がブラックフライデーで買い漁りがちなiZotopeを手に入れれば、そっちの方がより強力に思える。


検討してみた所感

たぶん、いろんな人が幾度となく検討したであろう、脱Adobeについて書いてみた。

Adobe Creative Cloudユーザーであっても、使っているソフト・機能・要求は千差万別で、脱Adobeの難易度も私とは違うだろう。

昔と比べても、デザイナーの守備範囲は多岐にわたる。そう言う私は「デザイナー」と胸を張って言えない程度の仕事をしているけれど、それだからこそ、けっこう多岐に渡ってAdobe Creative Cloudに依存していることに気付いた。

勉強熱心になってAdobeの最新機能を使いこなせば使いこなすほど、依存度が高まり脱Adobeの難易度があがる。昔ながらの枯れた使い方だと、他のツールがキャッチアップしている可能性も高い。

他の人の記事も参考にはなりつつも、最終的に私が脱Adobeできるかは、私にしか判断できない。それなのに、「今この瞬間は困っていないから」でロクに試さず、使い慣れたツールに留まり続けている傾向にも気付いた。

支給されたAdobe Creative Cloudを使い続ける可能性も大いにある。そうだとしても、フットワーク軽く試しながら考えられるマインドは持ちたい。本当に脱するかはさて置き、それが「○○税」に縛られない生き方にも思える。

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odapeth
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