つまらない!?「サムライ8 八丸伝」の文学部流〈楽しみ方〉【その1】
ジャンプ・コミックス原作:岸本斉史、作画:大久保彰「サムライ8 八丸伝」
つまらないですか!?!?
実際どうなのでしょう。
本記事では、
ジャンプ・コミックス原作:岸本斉史、作画:大久保彰「サムライ8 八丸伝」
(以下、「サム8」)の
〈楽しみ方〉を
いかにも文学部らしくご紹介していきたいと思います。
その中で
なぜつまらない(という声が聞こえる)のか?
という問にも迫りたいと思います。
本ページの【その1】ではその導入として、
現状の楽しまれ方(受容のされ方)を
分析していきましょう。
「サム8」の内容の分析は、【その1】以降に行いたいと思います。
【その1】のまとめ
現状、「サム8」は以下の受容層に分化できます。
1 テクストを受容する層
2 パラテクストを受容する層
①ペリテクストも受容する層
②エピテクストも受容する層
ワケわかんないですね。
一つひとつ見ていきましょう。
1 テクストを受容する層
これは単純です。
「サムライ8 八丸伝」の本編を、
純粋に一つの物語として読む人たち
のことを指します。(単純ですね)
もう少し詳しく説明すれば、
漫画のページに描かれた絵と文字(つまり紙に印刷された情報=テクスト)を対象として、物語を受け取る人たち
のことを指します。
だから、テクストを受容する層なんですね。
「当たり前じゃん」
「みんなそうでしょ」
と思った方
実は違います!
僕が思うに、この層はほとんどいません。
なぜなら、この層は
「サム8」という本編のページに印刷された情報(=テクスト)しか読みの対象としないため、
以下のような人は当てはまらないからです。
・ジャンプコミックスに連載していることを知っている人
・岸本斉史先生の漫画であることを知っている人
つまり、どこの連載の漫画なのかor誰の漫画なのかなどの前情報を何も知らないまま本編を手に取った人だけが、テクスト受容層に当たるのです。
おそらく、ほとんどいないですよね。
では、「サム8」を「NARUTO」シリーズの生みの親の新作または週刊少年ジャンプジャンプの新連載と知って読む私達は、どのように受容しているのでしょうか。
2 パラテクストを受容する層
これはさらに2つに下位分類されます。
①ペリテクストも受容する層
②エピテクストも受容する層
まず①から見ていきましょう。
ペリテクストというのは、本に物理的にくっついてくる周辺情報を指します。
具体的には
帯、中の広告、表紙
などがそれに当たります。
普通見ますよね。見て買いますよね。
だからみんな、まずこの層に該当するわけです。
次に②について説明します。
エピテクストというのは、書外の周辺情報を指します。
つまり作者のインタビュー、「NARUTO」シリーズ週刊少年ジャンプそのもの
まで含みます。
ではそれぞれの層でどんな読み方がされているかを見ていきましょう。
①ペリテクストも受容する層
これはいわゆる単行本派です。
または「サム8」目当てにジャンプ買う人たち。要するに、
「サム8」のファン
ですね。主に物語そのものを読んでいる層とも言えます。
次に、
②エピテクストも受容する層
これは
・岸本斉史先生ファン
・ジャンプファン
がそれに当たります。
たとえば、岸本先生の特徴として、独特な言い回しが挙げられます。
「ま…俺も熱くなるまで時間のかかる方だが…今回は久しぶりに沸点が低かった
千の術をコピーしたコピー忍者のカカシ…! これより通り名通り暴れる!」
「NARUTO」より引用
これを「サム8」にも見出す読者たちがいます。(それは一部に「読八」と呼ばれていたりしますが…)
この方々は、インターネット上で議論を交わしながら「サム8」の難解(ガバガバ)な設定を読み解こうとしています。
これはかつて、少女雑誌の投稿欄における 交流で成立した読者共同体を彷彿とさせるファン共同体であり、岸本先生への強い愛が結束させた層とも言えるでしょう。
しかし逆のパターンもあります。
愛憎という言葉があるように、
岸本先生の大ファン故に、前作である「NARUTO」シリーズと比較した結果、失望してしまったファンも少なくありません。
同様に、現ジャンプのアツい連載陣と比較し、ジャンプの看板漫画のクオリティに匹敵しない、あるいはあまり心に響かない(つまらない)と感じるジャンプファンもいます。これも、ジャンプという漫画ブランドへの愛情ゆえに、漫画に対する価値観が厳しくなっているのだと思います。
このように、エピテクスト層は、
「サム8」の賛否どちらの論も混在したカオス状態になっており、
そしてそれは
岸本作品およびジャンプ作品との比較という視点に起因しています。
○【その1】のまとめ
現状、「サム8」は以下の受容層に分化できます。
1 テクストを受容する層
→理論的な存在。現実にはいない。
2 パラテクストを受容する層
①ペリテクストも受容する層
→「サム8」を好んで読むファン
②エピテクストも受容する層
→岸本先生ファンorジャンプファン
それぞれへの愛のための比較によって、賛否両論が巻き起こる。
本ページは、ここで終わりますが、
受容層はまだあります。
それは、
3 メタ的視点から、
テクスト生成の場ごと受容する層
です。
これは物語を読むという次元より、さらに上の次元に立って、この物語はどのように生み出されるのかという思考の枠組みから、物語を読むという層です。
簡単に言えば、作り手の意図に迫った読み方に挑戦している人々です。
その層はどんな構造になっているのでしょうか。【その2】で見ていきましょう。
それでは。