#0078 薬局の在庫不足はなぜ起こるか?
娘を小児科に連れて行ったら、風邪薬や咳止めなどの薬が、隣の薬局にないので少し離れたところにある薬局まで行ってくださいと案内を受けました。風邪やインフルエンザなどの感染症や、慢性的な疾患の治療や予防に欠かせない医療用医薬品は、人の命に関わるものです。しかし、近年、薬局で医療用医薬品の在庫不足が発生することがあります。在庫不足によって、必要な医薬品が入手できないという事態は、患者さんの治療や予防に影響を与えるだけでなく、安全保障の面からも不安を感じる事象です。
薬局の在庫不足がなぜ起こるのか、その原因と対策について考察します。また、安全保障の観点から、薬局の在庫不足に対する国の取り組みについてもリサーチしました。(2324文字)
○薬局の在庫不足の原因
薬局の在庫不足は、医療用医薬品の製造から流通、販売までのさまざまな段階で起こる問題が影響しています。主な原因としては、以下のようなものがあります。
- 医療用医薬品の製造や輸入におけるトラブルや遅延:原材料の不足や品質の問題、天災や事故、国際的な紛争や制裁などが原因で、医療用医薬品の生産や輸送が滞ることがあります。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、マスクや消毒液などの医療用品の需要が急増し、供給が追いつかない状況が発生しました。また、日本は医療用医薬品の約8割を海外から輸入しており、輸入国の政治や経済の不安定さや、関税や物流の問題などが供給に影響を与える可能性があります。
- 医療用医薬品の需要の急増や予測の困難さ:新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症の流行や、災害や事故などの緊急事態によって、医療用医薬品の需要が急激に高まることがあります。また、需要の変動や季節性などを正確に予測することは難しいこともあります。例えば、インフルエンザの流行はその年によって異なりますが、日本では一般的に11月後半から4月にかけて患者数が増加します。しかし、令和5年のインフルエンザの流行開始時期は、11月下旬と前シーズンと同様に早い開始でした。流行のピークは12月下旬から1月上旬にかけてで、過去2シーズンより早いピークでした。流行のピークの高さは過去2年と比較して低く推移しました。このように、インフルエンザの流行は予測が困難であり、医療用医薬品の需要に影響を与えます。
- 医療用医薬品の流通や保管における問題や事故:医療用医薬品の流通経路は複雑で、製薬会社、卸売業者、薬局などの多くの関係者が関わっています。その過程で、在庫管理や発注のミス、輸送や保管の際の事故や故障、品質や安全性に関する規制や指導などが原因で、医療用医薬品の供給が途絶えることがあります。例えば、令和2年には、インフルエンザ治療薬のタミフルや、抗がん剤のジェムザールなどの医療用医薬品の出荷が一時停止される事態が発生しました。これらの医療用医薬品は、品質に問題があると判断されたため、自主的にもしくは行政からの命令によって、出荷や販売を停止したのです。
- 医療用医薬品の品質や安全性に関する規制や指導:医療用医薬品は、人の命に関わるものであるため、品質や安全性に関する厳しい規制や指導があります。そのため、製薬会社や薬局などが、品質や安全性に問題があると判断された場合、自主的にもしくは行政からの命令によって、医療用医薬品の出荷や販売を停止することがあります。例えば、令和2年には、インフルエンザ治療薬のタミフルや、抗がん剤のジェムザールなどの医療用医薬品の出荷が一時停止される事態が発生しました。これらの医療用医薬品は、品質に問題があると判断されたため、自主的にもしくは行政からの命令によって、出荷や販売を停止したのです。
○薬局の在庫不足対策
薬局の在庫不足を防ぐためには、国や自治体、医療機関、製薬会社、卸売業者、薬局などの関係者が連携して、医療用医薬品の安定供給・確保・備蓄・管理・情報共有などの取り組みを行うことが必要です。具体的には、以下のようなものがあります。
安全保障の観点からの取り組み
薬局の在庫不足は、安全保障の面からも不安を感じる事象です。医療用医薬品は、国民の健康や生命を守るために不可欠な物資であり、その安定供給・確保は、国の責務であると言えます。しかし、日本は医療用医薬品の約8割を海外から輸入しており、国際情勢や自然災害などによって、供給が途絶える危険性があります。そのため、国は、医療用医薬品の国内生産や備蓄などの対策を強化しています。
今年5月には、医薬品など国民生活に不可欠な物資の安定確保・供給を目的とした「経済安全保障推進法」が成立しました。この法律では、医薬品を「特定重要物資」として指定し、国が備蓄などの必要な措置を取ることができるようになりました。これは、薬局の在庫不足や医療用医薬品の供給不安に対する一つの対策となると期待されます。
また、厚生労働省は、医療用医薬品の供給状況に関する調査や情報提供、供給不安の報告や対応、安定確保医薬品のサプライチェーンの把握などの取り組みを行っています。薬局や医療機関などは、これらの取り組みに協力することで、医療用医薬品の安定供給・確保に貢献できます。
○まとめ
薬局の在庫不足がなぜ起こるのか、その原因と対策について考えました。また、安全保障の観点から、薬局の在庫不足に対する国の取り組みについても調べました。薬局の在庫不足は、患者さんの治療や予防に影響を与えるだけでなく、国の安全保障にも関わる重要な問題です。生産拠点の海外移転や医薬品の許認可の問題等様々ありますが、まずは法律の整備によって、改善されることを願っています。