#0060 令和の弥太郎?:日本製鉄 橋本社長の決断
昨日取り上げた日本製鉄がUSスチールを買収というニュースの続編ということで、橋本社長のコメントなど出てきたので、私なりに感じたことを書き留めたいと思います。
日本製鉄の橋本社長の買収の経営判断は、私にとって非常に興味深いものでした。
彼の経営判断に、三菱創業者:岩崎弥太郎の天下国家を見据えた経営判断や、四代目の岩崎小彌太が制定した『三綱領』に通ずるものを感じました。(1521文字)
○岩崎弥太郎
岩崎弥太郎が三菱を率いていた時、明治政府は1874年に台湾出兵を決定しましたが、多くの船会社は協力を拒否しました。そこで、政府は新興の海運会社である三菱に軍事輸送を委託しました。岩崎弥太郎は「国あっての三菱」という決断をし、10隻の大型船を運航することを決定します。
この時の岩崎弥太郎は、国家がやりたいことと企業がやりたいことを上手く重ねて決断をしました。彼は、国のために協力することで、政府との信頼関係を築き、海運業界での競争力を高めることができました。
後に三菱の政府との専横を嫌う中央官僚と、渋沢栄一、大倉喜八郎、浅野総一郎、そして三井財閥が結託し、共同運輸会社を設立して三菱潰しに走りますが、ガチンコで戦い勝ち抜きます。(勝負がつく前に弥太郎は倒れてしまいます)
また、台湾出兵での成功は、日本の近代化や国際化に貢献することにもなりました。岩崎弥太郎は、国家戦略と経営戦略を一致させることで、当時新興ベンチャーだった三菱をライジングさせたのだと思います。
○三綱領
四代目の岩崎小彌太は、三菱の三綱領として、所期奉公、処事光明、立業貿易の精神を掲げ、社会に貢献する企業としての使命感を示します。
○弥太郎と三綱領と橋本社長
橋本社長は、米鉄鋼大手USスチールの買収によって、日米同盟を軸とした安全保障の観点から、基礎素材の鉄で供給網の確立を進めることを目指しています。
これは、岩崎弥太郎が意識した天下国家を見据えた経営判断に通ずるものを感じます。また、日本製鉄は、環境に配慮した製品や技術を開発し、世界の鉄鋼業界の低炭素化に貢献することを目指しています。これは、三綱領に基づく精神に沿ったものと言えます。
岩崎弥太郎のこの経営判断と、今回の橋本社長の買収の経営判断が私には重なって見えてきます。
そして、日本製鉄の橋本社長の経営判断には敬意を表します。
○最後に
今朝の記事を踏まえて最後に再整理したいと思います。
2兆円という買収額について、「鉄鋼の買収では1トン当たり1000ドル以内が望ましい。買収金額をUSスチールの粗鋼生産能力で割ると1トン696ドル。割高感は乏しい」(SMBC日興証券山口敦氏)とのこと。
また、USスチールは、高炉に比べて廃炉にしやすく、機動的に需要に対応しやすい電炉を多く持つ点もプラス材料。
資金はLBOで賄うのでしょうが、ほぼLOIを取得できているのではないでしょうか。
1番のリスクは、「全米鉄鋼労働組合(USW)は早速、買収について遺憾の声明」を出した労組とのこと。労組と如何に対話するかが成否の分かれ目になりそうです。
今後の動向に注目です!
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