#02 101号室 カレー
「ラムネ色のドアが、真夏の山を思わせていいね」
と、夫の正一と決めたのは、15年以上前のこと。
当時、大きなお腹を抱えていた香織は、
「こっちへおいで!」
と呼んでいるような遥かな山々と
その麓に抱かれた
夕焼け町を見渡せるこのアパートを、
一目見て好きになった。
それから、
夕焼け町のいちとせ病院で、息子の卓哉を
2年後には娘の凛を出産した。
現在は、
中高生になった子ども達2人、
42歳の夫 正一、そして柴犬の餅太郎の
合わせて4人と1匹で、このアパート『こしあん