ホシヅクリ創星記(システム編)
ボードゲーム制作サークルミラーハウスの代表兼ホシヅクリのゲームデザイナーのODAです。
ゲムマ2023春で発売したデッキ構築型ゲームの「ホシヅクリ」を製作した際の取り組みや変遷について忘れないうちにまとめたかったので、この記事を書きました。
(私はドミニオンのゲームデザイナーであるドナルド・X・ヴァッカリーノ神が書いている「ドミニオンの知られざる歴史」シリーズがとても好きで、これを自分で書いてみたかったというのもあります。)
最初のアイディア
デッキ構築型×他のギミックのボードゲームが多数発売されていますが、ドミニオンが大好きであったためデッキ構築型ゲーム単体で新しいゲームが作れないか挑戦してみたくなりました。
考えているうちに思いついたのが、「ターンにカードを1回ずつプレイするデッキ構築型ゲーム」です。
カードを1回ずつ順番にプレイしていき、STOPを持つカードをプレイした段階でカードの購入に移ります。
カードは大富豪のような特定の条件で複数枚一気にプレイできるような形にして、手札で役を作って一気にカードをプレイすることを目指すゲームです。
初期のプロトタイプ
最初のアイディアを発展させて、プロトタイプを作りました。
コンセプトは
「分かりやすく、より戦略性が深まったドミニオン」
です。
具体的にはカードをプレイする際の悩ましさや楽しさを感じられるデッキ構築型ゲームを目指すことにしました。
ドミニオンはデッキを作ることに特化したゲームなので、カードのプレイ部分に関しては頭を悩ませる部分は少なめとなっています。
(ドミニオンは「デッキを作ることに特化したゲーム」なのはドミニオンのゲームデザイナーであるドナルド・X・ヴァッカリーノ神もドミニオンの知られざる歴史内で語っています。)
以下が初期のプロトタイプ作成時に書いたゲームの概要です。
プロトタイプの段階で3色のカード、時間の概念は既に考えられていました。ルール概要に記述はありませんが、カードプレイを終了させるためのカードであるStop(製品版でいうところのCreate)もすでにルールに組み込まれています。
各種システムの変遷
デッキシステム
デッキ構築型ゲームを作る、というのがスタート地点であったため山札、手札、捨て札の概念はドミニオンから頂いています。
ドミニオンは偉大です。
サプライシステム
最初はランダムで5種類ほど購入可能なカードが出てきて、購入すると新しいカードがめくれるシステムを採用していました。
しかし、購入可能なカードがランダムだとカードを見て戦略を考えるのが難しく、事前に計画を立てる楽しさを味わうのが難しかったためドミニオンと同様にランダムで選んだ数種類のカードが常に購入できる方式となりました。
同時プレイは1軌道での生産力を高めていると言えるので、ドミニオンでいうところの銀貨や金貨のようなカードは必須ではないと考え銀貨と金貨はデフォルトのカードからは削除しています。
特殊な効果を持たない、数字が増えるだけのカードを購入/プレイすることはゲーム体験としてもそこまでワクワクするものではないと考えていたため、銀貨や金貨のようなカードが無くてもゲームが成り立つようにできたのは非常に良かったと思っています。
サプライが10種類ではなく8種類になっているのは初回プレイの負荷を下げるためです。
ルールがやや難しいので、カードを読む時間を下げたい意図となります。
同時プレイ
カードに色をつけて複数枚プレイさせよう、という発想は大富豪から来ています。
大富豪*格ゲーのコンボトラックスというゲームがゲームデザイナーのODAはとても気に入っていて、初期のホシヅクリはこのゲームのプレイ感の影響も受けています。
最初は3色同時プレイをすると軌道増加が0となるルールはありませんでした。
3色を組むメリットが採用できるカードの種類が増えるというだけで、単色に比べるとデッキの安定性が大きく下がるデメリットが目立ってしまったので多色デッキに何かしらメリットを与えたくなりました。
3色デッキを作ると点数が高くなる特殊勝利点の追加や、3色同時プレイをすると星片が増えるという案もありましたが、プレイした際の軌道増加を0にするというコスト踏み倒し系のメリットが採用されました。
これは大成功だったと言えるでしょう。
今まで必須だったコストが踏み倒せるのはとても快感で、軌道システムともとても相性が良く、楽しいものになりました。
星片
プロトタイプ段階では、色に合わせて3色の星片がありカード購入のためのコストも3色ありました。
しかし、3色の星片があることは問題がいくつかありました。
デッキ構築型ゲームは、購入するカードを何回も使うため産出する資源が固定化される。特定の色の星片が出るカードを購入してしまうと、その色のカードしか買えなくなってしまう。
コストを数えるのが大変。カードをプレイして実物を獲得するのなら良いが、並んだカードの3色の資源を数えるのはとても大変。
そのため、星片は1種類となりました。
初期の段階では星(衛星、惑星、恒星等の勝利点)カードの星片は0であった上、他にも星片0のカードが存在しました。
しかし、星片0のカードをプレイするのはただただ軌道を進めるだけになってしまいとても不快だという問題が発生しました。
また、星片数のカウントをするのが面倒という別の問題もありました。
そのため、原則としてカードの星片は1として、2以上の物は特殊なカードとし、0のカードは無くしました。
この変更により、星カードの星片が1になってブラックホールのカードがとても楽しいものとなりました。
終了条件
初期の段階では、軌道は30までかつ誰かが軌道30に到達したら他のプレイヤーが1ターンずつ行ってゲーム終了となっていました。
軌道30までだと、拡大を感じる前にゲームが終了してしまう感覚があったので35に変更しました。
誰かが軌道30に到達したらゲーム終了という条件は、どこかのタイミングであえて軌道を無駄に使い軌道を30に到達させる動きを推奨するために設定したものでした。序盤は軌道を節約するが終盤はあえて終わらせる動きがあると面白いだろうと思ったのです。
しかし、この案には以下のような問題点がありました。
勝利点が先行しているプレイヤーが常に終わらせる権利がある。あえて軌道をたくさん使うのは簡単なため、勝利点がカウントできていればすみやかにゲームを終了させてしまう。軌道20付近で既に終了間際になってしまい、拡大再生産を味わえない。
ゲームを終わらせたプレイヤー以外のプレイヤーが勝ったとしても、勝った気がしない。相手もミスで勝たせてもらった感覚。
そのため、終了条件は何回か変更することになります。
終盤でゲームが終了に向けて加速するルールが欲しかったため、軌道が先に35に到達するメリットを与える+ゲームが終了に向かうなにかしらの要素を追加したいと思いました。
次の案は、いずれかのプレイヤーの軌道が35に到達すると天体カード(サプライのカード)が生成出来なくなるというものです。
天体カードを生成できなくすることにより、拡大を止めゲーム終了に向かわせるという効果を期待しました。
しかし、この案にも問題がありました。
特殊ルールが終盤に適用されることにより、考える事が増え、余計に時間がかかってしまう。
天体カードに勝利点があるケースがあり、それを買えなくなるのは直感に反する。
そこで、もう一度内容を変更をしました。
軌道が35に到達したら、他の人の軌道を増やすというルールを追加しました。
これは直接的にゲームを終了に向かわせるルールとなっており分かりやすく、軌道35付近での駆け引きも生まれるので良い形となりました。
この変更は入稿直前に行われたものなので、少し心配しましたが結果としては成功になったと思います。
おわりに
こうして振り返ると、プロトタイプ版からかなりの変更が入っています。
中量級ゲームの製作なので、最初のアイディアと同等、もしくはそれ以上にルールやカード内容のブラッシュアップがゲームを面白くすると感じます。
カード編、アートワーク/コンポーネント編も書く予定なので、興味を持っていただいた方はぜひ続きも読んでいただけると幸いです。
ホシヅクリ創星記(アートワーク/コンポーネント編) Coming Soon
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