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第4話 急用中の幸

今日はおっくんと公園で遊ぶと約束したのに、父さんが水槽の水の入れ替えをするから手伝えって強制的に手伝わされることになった。

全くツイてない。

父さんは派遣会社を経営していて、いろんな会社や寮の従業員のところへ毎日かけずり回っているのをおれは知っている。

どちらかというと家では家族に無愛想な方だけど、外では相当な世話焼きというのも知っている。

この前なんて従業員の家のテレビの写りが悪いというだけで、その人の家にその様子を見に行った後、すぐ買い換えるぞとリサイクルショップに行きテレビを買ってあげたらしい。

そうやってみんなに『マジか……』と驚かれるようなことを数えきれないほどしてきている父さんは、いつも時間を作るのに必死なことも知っている。

だから今日のこれを手伝えといってきたのもきっと、誰かを助けるためにつながるだろうと思うとおれも断れなかった。

熱帯魚をバケツに移し、ポンプを突っ込む。

水に何やら薬品を入れて混ぜたりして、その最中おれがやらされることは「あれを取って」「これに水入れてきて」とかの雑用だ。

水槽に手を突っ込んで珊瑚や岩を配置しながら「んっ……」とか「……んはっ」たまに「しゃぃっ」岩を動かす度に「んっと……」と声を漏らす父さんがいつになく気持ちが悪い。

「なんでそんな声出すの?なんか情けない声」

「あ?そんな声出してねーよ」

父さんは少しオカマの素質みたいなのがあるのかと思ったが、幸い気付いてないようなので聞いてないフリをすることにした。

かなりの時間が過ぎたように思ったけど、やはり父さんは手際がいいのか用意がいいのか水槽の水の入れ替え作業は思ったほど時間は掛からなかった。

父さんは綺麗にした水槽を眺めて、濡れた手を拭きながら

「完璧じゃん。ショウタありがとうな!これお駄賃」

と言いながら、千円札を僕に渡してきた。

「ありがとう」とお礼を言って時計を見た。

もしかするとおっくん公園にいないかな?

もう怒って帰っちゃったかな?

居ても居なくても公園に行こう。そう思った。

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