GRAPEVINE LIVE a.k.a. 高野勲 誕生祭 at 新潟LOTS
覚えてるなかでライブレポ。
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キャパ400人ほどのライブハウスにプバイナーたちがごった返す。暗転の瞬間、久々の再開を喜ぶ歓声があがる。
現れた。GRAPEVINEだ。カズマサだ。髪が伸びている。前髪が片目を覆い尽くしている。親ぐらいの年代でこのヘアスタイルが様になるオッサンは他に知らない。
マイクスタンドの前に立って深々と頭を下げた。観客たちからは若干の笑い声と拍手。なんというか、安心した。中野の観客にも同じ感情が湧いたのかも、なんて思った。
そして始まった『ふたり』。亀井亨の重たいビートが腹に響く。熱い眼差しを弦に向けるアニキが鳴らすフレーズの哀愁。このアンサンブルこそGRAPEVINEのライブだ。目の前で彼らが鳴らす生音を再び身体中に浴びることができた喜びを噛み締めた。
お気づきかとは思うが中野に続いて、第一部は曲順を逆にした『another sky』。なので2曲目は『アナザーワールド』。最序盤に演奏されるキラーチューンの破壊力。カズマサは相変わらず歌が上手い。ラスサビの高音も伸びやかに歌いこなす。どうやらコンディションは悪くないようだ。
続くのはバイン屈指のエロソング『Sundown and hightide』。観客の腕が上がり出すのが見える。完全に場は温まった。異国情緒的なアルバムの世界観を象徴する『ナツノヒカリ』では、間奏でカズマサの顔に恍惚の笑みが。このライブを通して、なんだかカズマサは機嫌が良かった。
シャウトが炸裂しまくる『Let Me In〜おれがおれが〜』、続く『Tinydogs』、どちらも兄貴のギターソロがキレる。カズマサは相変わらずニコニコしている。
トーンを落として『Colors』。アウトロの轟音アレンジは大好物なのでまた聴けてハッピー。『それでも』ではアコギを弾くカズマサが抑えるフレットを間違えそうになって一瞬手をビクッとさせていた。俺は見逃さなかったぞ。
そして待ちに待った金ヤンのベースソロ、『マダカレークッテナイデショー』。中断前に続いてギターソロパートが伸ばされた『BLUE BACK』。加速したテンポそのままに『ドリフト160(改)』。アナスカ前半のアップテンポな曲たちはライブで聴くとやっぱり楽しい。逆行して後半にハイテンションになる構成も乙だ。
かの事件のおかげと言えば誤解を招きそうだが、本来想定されていなかったであろう逆行の構成での『another sky』を、ライブアレンジがピタリとハマった最高の完成度で見ることができたのはファンとしてとても幸せなことだった。
本来『ふたり』の後に配置されていた『マリーのサウンドトラック』のリプライズを第一部の最後に聴いて、そんなことを思った。
さて第二部だ。髪を結いハーフアップにして現れたカズマサがここでコメントを送る。
「この度は私ごとでご迷惑をおかけしました」
「今こうしてライブが出来ているのは周りの人たち、スタッフ、そしてみなさまファンのおかげ」
「妻と子供を裏切らず、誠実でいることを命題とする」
「笑い事じゃない、ほんとごめんなさい、ごめんなさい、ありがとう」
概ねこんな感じの内容だった。内容から分かるように客席からは笑い声も少々漏れていた。俺はこの言葉を心から信じているし、少なくともあの会場にいたファンたちは拍手でこれを受け入れた。
そんな雰囲気で始まった第二部、『Big tree song』のイントロが鳴ると、意外な選曲のせいか客席から驚きの声も。水色と緑の照明が綺麗で、みんなの拍手でリズムをとるところは楽しくて、多幸感に満ちた印象的な一曲だった。
ここから『新しい果実』の曲が続く。まず『目覚ましはいつも鳴り止まない』。"悪戦苦闘 抗ってるけど" ここでいつも以上に歌声に力が入る。原曲は都会的で洗練された印象だが、生演奏ならではのパッションを感じるアレンジに高揚。
『Gifted』も似たように熱が入った演奏。夜空の月を演出したかのような紫と白の照明の下、アニキのいぶし銀ギターソロが炸裂した。
そして例の繋ぎから『ねずみ浄土』。なんだか前より凄くなってないか?とすら思う。毎度訪れる静寂では、多分観客全員が呼吸を止めてた。既に新たな代表曲としての風格が漂う名曲。毎回演奏してほしい。
ここからもまた熱かった。原曲しか知らなかった『Suffer the Child』。初めて聴くイントロのギターリフ。押し寄せるヘビーなバンドサウンド。こんなにLIVE化けする曲だったのかという驚き。
こちらもイントロのギターリフが印象的な『フラニーと同意』。曲が始まった瞬間に歓声が。ほらやっぱりこの曲みんな好きじゃん。
朧げな記憶で恐縮だが、確かこの2曲のどちらかのギターソロでアニキが前に出てきて最高に盛り上がった。隣の恐らくアニキファンであろうオネエサンは高笑いしてた。
ここ最近のライブ定番曲『Alright』は、ここでもお馴染みの拍手煽り。とても愉快なので、散々演奏したからとやめることなく無限にセトリに入れていてほしい一曲。
そして『Our Song』が、アッパーな曲が続いた第二部をエモーショナルに締める。今演奏される意味を勘繰って、カズマサからGRAPEVINEへのラブソングのようで勝手に嬉しくなってしまう。ここで本編は終了。
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アンコールに応え現れた5人。一度はけて戻ったカズマサの手にはシャンパンボトルが。
この日、2023年3月5日は我らが高野勲の誕生日であった。アンコールのはじめに簡単な祝いの席が設けられたようだ。
コルク開けに苦戦するカズマサ。ここで観客による「おしりは〜?」の声が。サービス精神旺盛な彼らはこれに応え、イサオは尻を突き出し、カズマサは腰を下ろしてボトルを構える。コルクは見事イサオの尻にクリーンヒット。客席からは大きな拍手が巻き起こった。
シャンパンはステージ脇のスタッフの分も注がれ、ステージ上で乾杯。心温まる瞬間だった。コメントを振られたイサオは「この歳になってもバンドが出来て幸せです」と語った。
カズマサ曰く「高野勲猛プッシュで」演奏された『MISOGI』。「説法!説法!セッポセッポセッポッポッポッポッポーゥ…」果たしてカズマサによる自戒なのかそれとも。
「俺のMISOGIに付き合ってくれてありがとう!」
今日一番の笑いが起きる。
ピンク色の照明のなか、よりアブナイ雰囲気が漂う『EVIL EYE』もなかなかライブ映え甚だしい曲だ。軽快なエイトビートに観客は指で作った輪っかを高く突き上げてノリにノる。カズマサは指メガネで観客を煽っていた。
「最後に一曲やらせてください」とアコギ片手に演奏されたのは『作家の顛末』。こちらも意味を勘繰ってしまいそうだが、言葉を噛み締める前に音の洪水による快楽物質で脳がやられた。静と動が入り混じる曲展開に感情の行き場を見失う。散々盛り上がった末に着地点がぼやかされてしまうというGRAPEVINEらしいライブの幕引き。
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しれっと立ち去ろうとするイサオの腕をガッチリと掴み引き留めた金ヤン。そのままイサオの両腕を持ち上げ、本日の主役ですと言わんばかりにブルブルと氏の腕を振った。そのままメンバーが順にステージ脇へと消え、会場は明転。
丸一日経った今もあの熱が頭の中で冷めない。この余韻がどこまでも続く気がして。
セットリスト
↓
ふたり
アナザーワールド
Sundown and hightide
ナツノヒカリ
Let Me In〜おれがおれが〜
Tinydogs
Colors
それでも
マダカレークッテナイデショー
BLUE BACK
ドリフト160(改)
マリーのサウンドトラック
Big tree song
目覚ましはいつも鳴りやまない
Gifted
ねずみ浄土
Suffer the Child
フラニーと同意
Alright
Our Song
-Encore-MISOGI
EVIL EYE
作家の顛末