Mr.Children 私的アルバムランキング
独断と偏見ブリブリのランキングです。
当然ネガティブな評も入ってくるので悪しからず。
今回対象にするのは公式にアルバムとして発売されている作品の中で、「1/42」を抜いた全18作。
ということで早速やっていきます。
18位 EVERYTHING(1992)
記念すべき1stアルバム。全7曲ということでサイズ的にはミニアルバムと呼ぶのが適切と思われる。
最下位ですが、この位置に置くのは比較的同意してもらえる方も多いかと。
いや、良いアルバムです。1stとはいえ桜井和寿の作曲センスはこの頃から非凡なものだったことが伺える。『君がいた夏』なんかはその良い例で説明不要の名曲。未完ツアーで久々に披露された『CHLDREN'S WORLD』なんかも、キャッチーなメロディを文字通り、少年時代の感覚を思い起こさせるようなコーラスに乗せてイノセントな音像を作り上げた、所謂初期ミスチルっぽい佳作。
とはいえ、やっぱり後の彼らの諸作と比べると物足りないのは事実。「80年代かな?」って感じの音響に古臭さを感じるし、『風〜The wind knows how I feel〜』のイントロなんかから分かるが、ギターフレーズがほぼAメロのメロディをなぞっただけだったり、そういう演奏の馬鹿正直さにはもう一捻り欲しいと感じざるを得ない。
というわけで、演奏面やアレンジ面での未熟さからこの位置。
17位 Versus(1993)
メガヒット前夜、1993年のアルバムが17位。三部作として括られがちな初期アルバムの最後の一枚という位置付けでもある。
このアルバム、タイトル通り明暗が"対"として交互に並べられた構成となっているのは有名だが、「明に比べて暗よわ〜…」と思ってしまう。
ファン人気の高い『Another mind』のような曲でもね。正直、Split The Defference版の方しか聴かないです。
世間一般の好みと同じように、ベストアルバムに収録されており、個人的に"三兄弟"的な印象を抱いている『Replay』『LOVE』『my life』はかなり好きな曲。だけど1stほどではなくても全体的に古臭さ、青さはまだまだ残っているという印象。
それと、こっちも完全に個人的な趣味で恐縮なんですけど、初期(〜94)の桜井さんの歌唱があんま得意ではなくて…。コステロ風とはよく言われるが、コステロ本人の声質も好きじゃない。あとJENボーカル誰が聴いてんの??
16位 KIND OF LOVE(1992)
さっきの時点で気付かれたかもしれないが、私、初期ミスチルへの評価が基本低い。
声質もそうだけど、歌詞がほぼ恋愛に関するものという点も理由の一つで、もちろん人間の感情を深い場所まで掘り下げようと試みる歌詞もあるにはあるが、その後により広がる詩世界と比べると見劣りしてしまうように思う。
と、ここまで初期ミスチルをこき下ろしてしまったが、その3枚の中で今作が上に来たのにも理由がありまして、まず『星になれたら』の存在が大きい。ハネるようなベースリフに、聴いたことがあるようでない、煌びやかなサウンドが心地いい最高のポップス。明るいメロディで別れを歌っている点もツボ。
他に曲を挙げるとすれば、重たく冷たい80sハードロック風ギターフレーズに乗せて終わる恋を歌った『Distance』。この曲なんか先ほど言った「深い歌詞」に該当する、複雑な心の動きを描こうと試みている良曲だと思いますね。
アルバム全体としてみると、後のミスチルにはあまりないシティポップ的なオシャレな音像が通底していて、小林武史プロデュースの妙を感じる。代表曲のひとつ『抱きしめたい』も収録されており、一般的な評価で見ると入門級の完成度であることは間違いないと思います。
15位 Atomic Heart(1994)
最大のヒット作。すでに紹介した3作ののち、シングルでメガヒットを飛ばした彼らが満を持して発表した4作目。しかし、個人的な評価はここ。
先述のように桜井さんの歌唱、このアルバムまであまり好きじゃないっていうのはあるけどもう一つ、後半の曲が弱い。『ジェラシー』なんかはドラムのリバーブに昭和歌謡っぽさを感じるし、打ち込みのサウンドは今の耳からすると正直ダサいし。『Asia』はオリエンタルな曲に演歌っぽいストリングスの入れ方でこれまた古臭く感じる。『雨のち晴れ』もベスト盤に収録される人気っぷりだが、この能天気さは得意じゃない。
『innocet world』や『CROSS ROAD』といった、邦楽を代表するレベルの曲と並んでいると余計に弱い曲が悪目立ちしちゃって、アルバムとしてのまとまりが希薄に感じる。
最後に『Over』が無ければもっと下に置いたかも。半世紀へのエントランスでの半音下げの演奏も素晴らしかったですね。YouTubeで先行公開しちゃったのは絶対セールス的に間違ってるけど。
ということで個人的には代表作とされることに違和感。最初に聴くアルバムとしては他に適当なものがあるんじゃないかなー、と。
14位 BOLERO(1997)
メガヒット作が続きます。前作『深海』で拾いきれなかったシングルを収録し、ベストアルバムと呼んでも差し支えない内容に仕上がったアルバム。
それゆえにアルバム曲とシングル曲の乖離が印象として強く、『Tomorrow Never Knows』や『シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜』などの代表曲を擁しながらこの順位に。
『タイムマシーンに乗って』や『Brand new my lover』などのアルバム曲は、歌詞もサウンドもパンキッシュで、初見のインパクトは大きいが「ミスチルがやらなくてもいいかな…」という印象に落ち着き、シングル曲との落差が大きすぎるというのもあって、アルバムの完成度をあげるうえで効果的な役割を果たしてはいないと判断。ギスギスしてた彼らを見れるということで面白い曲たちではあるんだけどね。
『幸せのカテゴリー』は隠れた名曲として素晴らしい曲なので未聴の方は是非。桜井さんもファンから人気な曲なのでライブで是非。ぜってーやんねーだろうけど。
13位 SUPERMARKET FANTASY(2008)
個人的にミスチル入門として最適ではないかと思っているアルバムをここに置きます。
『HANABI』『GIFT』など、若い世代でも耳にしたことがあるような有名曲が収録されており、全体的に"まさに小林武史"という、良くも悪くも耳障りのないポップなサウンド。
ただこのアルバムに関しては少し言いたいことがあって、最近Twitterで投票によるミスチルアルバムランキングみたいなものを見かけて、このアルバムが結構な差をつけて1位だったんですね。先述の理由からそうなるのも分かるけど、「これがミスチルの代表作とされるようになるのは嫌」っていうのが正直な感想。
というのもこのアルバムって、近年のミスチルのパブリックイメージそのまんまの内容というか、確かにポップスとして物凄く作り込まれた完成された作品っていうのは分かるんですけど、予想を裏切るような驚きもないし、4人の楽器の音が小さいミックスで、ロックバンドとしての要素が希薄なのも事実で。
僕はどちらかというと後者の要素に惚れたミスチルファンなので、近年のミスチルに対する評論へのカウンターの意味でもこの位置に置きました。
12位 [an imitation]blood orange(2012)
来ました。問題作です。悪い意味で。
このアルバム、一般的な評価は酷いの一言。スパファン評で語ったようなコバタケアレンジの悪い側面ばかりが見えて、加えてスマホスピーカーからも聴けるように作られたという抑揚のないミックス、更には当時震災直後の時勢で音楽家もしてスランプに陥っていたというコンポーザー桜井和寿の不調。
僕としてもこのアルバムが酷評されまくっている理由は理解できる。「じゃあなんでアトハやスパファンより上なんだよ!」というお叱りが聞こえそうだけど、納得させられるような返しは出来そうにない。というのも、このアルバムを好きな理由が個人的な思い入れから来るものだからです。
『インマイタウン』なんかを聴くと、どうしようもなく温もりを感じてしまう。年末のこの時期だととくに。
あと、悪い意味でJ-POP的な大味アレンジの裏で、実はベースが動きまくっている。(それのおかげでなんとか体裁保ててる感はある)
付け加えてもう少し擁護すると、『Happy Song』や『イミテーションの木』の歌詞、音が甘々なため見過ごされがちだけど、かなりシニカルなプロテストソング。こういった側面、意識してみると少し違った作品への見方ができるかもしれない。
と色々語ってきたけど客観的に見たら駄作なのは間違いない。愛ゆえに、冷静な、フラットな耳で彼らの音楽を評価できなくなってしまったいちファンとしての姿勢が現れたこの順位。
11位 深海(1996)
一般的に最高傑作とされることが多い本作。11位と言えど、ここらへんから"マジで好きなアルバム"になってきます。
このアルバムはしばしば最高傑作として名前を挙げられますが、ミスチルの「ニコニコポップバンド」みたいなパブリックイメージへのカウンターになるので"最高傑作"と扱われることについては概ね賛成。
内容はプログレと形容されることも少なくない、シームレスでコンセプチュアルなもの。とはいえミリオンヒットを記録したシングル曲もアルバムの持つ暗い世界観を損なっていないので、通しで聴いても疲れない。一見浮いているようにも見える『名もなき詩』ついては、前に置かれた『Making Songs』によって主人公が観ているテレビの中の曲という風に演出されている点が上手い。
『ボレロ』と対になるような作品として、録音はほぼアナログテープで行われており、クラシックロックを好むような耳の肥えたリスナーにもリーチしうる骨太なロックサウンドが心地いい。全体的な曲調もジャケットの印象通り暗く、当時の桜井和寿の精神状況が伺い知れます。
さて、ではなぜ一般的は評価とは違い、下から数えた方が早い順位にしたかというと、『ゆりかごのある丘から』でダレる、という点からですね。悪い曲ではないんだけど、スローテンポで展開も、アウトロのブラスパート以外特に驚くようなものはなく、もう少し短くてよかったんじゃないかな、と思ってしまう。本作のような"アルバム一つで一曲"みたいな作品だと、そういった点が余計に気になってしまうというか。
ただ、多くの音楽ファンに支持されるような内容であることは間違いないです。ミスチルのリスニング体験において最序盤に置かれるべき名盤。
10位 HOME(2007)
普遍的な名盤、というよりはファン人気の高い一枚という印象。
キャリアの中での位置付けとしてはコバタケサウンドが強まり、ロック対ポップ(相対するものでもないが)の比重がより後者に傾いた時期。タイトル通り"日常"がテーマの穏やかなサウンドに乗せて美メロを聴かせる作品です。
ただこの時期の"リスナーに寄り添う"という姿勢、功罪あると思ってます。あんたら、寄り添いすぎだろ、と。ミスチルの甘々なイメージって、これとかスパファンから来てると思うから。もう少しリスナーを突き放すような音楽性でも良かったんじゃないかな。
でもやっぱりすぐ後に語るような名曲たちが生まれた理由でもあるので、まあそんな作品が1個か2個あってもよかったか、と書きながら思っているところです。
『Another Story』や『もっと』がその例で、コンポーザーとしての桜井和寿の才能が遺憾なく発揮された珠玉のメロディを堪能できます。特に前者のコード進行については「上手くできた」本人も語ってました。
一方で、『フェイク』や『ポケットカスタネット』は、ギター偏重の位相でMr.Childrenのバンドアンサンブルを見せ、こんな曲もあった方がいいでしょ?的な意図を少々感じつつアルバムに幅を与えます。
一個だけ言わせてもらうと『Wake me up!』だけは理解できません。歌い出しもサビもコーラスも、なにもかも臭い。
なんか凄い酷評しているようだけど、普通にいい曲多いです。根強い人気の理由は聴けば聴くほど分かる、そんな作品。
9位 シフクノオト
こちらもファン人気の高い一枚。
開幕の爆音で一気に引き込まれるロックナンバー『言わせてみぇもんだ』、珍しく打ち込みを使用し、4人の演奏にシンセベースや弦楽四重奏を織り込んだ緻密なサウンドの社会的ナンバー『掌』、号泣MVでお馴染みのミスチル流正統派ポップソング『くるみ』など、ジャケット通り、12曲に実に多彩な色を見せてきます。
愛する"君"との関係が悪夢の中で描かれる『奇妙な夢〜pink』と、葬式をイメージして作られたという不気味なイントロが特徴的な『血の管』の2曲が小学生の頃トラウマで、現在に至るまでこのアルバムに怖いイメージを抱いてます。
そういう点もあって、個人的な思い入れはそこまでということもありこの順位に落ち着いたのですが、そういった曲たちもこのアルバムに色を加える重要なパーツです。
個人的MVPは『天頂バス』。POP再検証の最中においても遊び心は忘れないという彼らの一面を垣間見れる異色作。
駄洒落を用いた歌詞もそうだが、かなり曲展開が大きく、掴みどころがない構成。
しかし緻密な、電子音と骨太な4人の音が合わさったゴージャスなサウンドで聴く者を圧倒します。
この曲ライブで化けるのでYouTubeから是非。
8位 It's A Wonderful World(2002)
POPSAURUS 2001を経た彼らが、先述の"POP再検証"として、リスナーに寄り添ったポップスに回帰した本作ですが、前作『Q』までの毒々しさも同時に内包しています。
『LOVEはじめました』や、『Bird Cage』などのダークな曲で顕著ですが、『ファスナー』や『いつでも微笑みを』などといった、穏やかなメロディの一見親しみやすい曲も、性や死といった生々しいテーマを扱っており、Mr.Childrenの音楽の懐の深さを窺い知れます。
またサウンドにおいても、00年代ミスチルにありがちなストリングス過剰の大味なポップスとは一線を画しており、4人の鳴らす音とのバランスが非常に優れています。『youthful days』や『蘇生』はその良い例なんじゃないでしょうか。
個人的には尺が長いし、若干地味な印象のアルバムなんですが、1,2を争うレベルのファン人気を誇る作品なので聴く順番として優先度は高いと言わざるを得ません。
お気に入りなのは「冷めかけたスパゲティ」という表現がしたいがためだけに作られたという『UFO』という曲。全然ライブでやってくれない。キー下げ歌詞飛ばしてまで「fanfare」やるくらいだったらこっちやれよ
7位 重力と呼吸(2018)
発売直前には例の如く、桜井和寿による「今回は最高傑作です!」の触れ込みがあり、更には今作においては「若いバンドが音楽を辞めたくなるほど」とまできました。果たして音楽を辞めた若人がいたかは定かではありませんが、Mr.Childrenのフルアルバムに得てして伸し掛かる高い期待は乗り越えてきた、というのが発売時の印象でした。
48分と、彼らには珍しいレベルで尺が短い本作。この傾向が最新作まで続いていて個人的に嬉しいことは置いておいて、この尺と4人の鳴らす音が主となった簡潔なアレンジが相まって、通して聴いてももたれない。まずここがアルバムの質を高める点ですね。
キャリアの中での位置付けとしては、このアルバムでMr.Childrenは完全にセルフプロデュースのバンドになりました。こうした背景も本作が先述のようなロックサウンドになった大きな理由でしょう。個人的にはセルフプロデュース路線大好きなので継続されたら嬉しい。(久々の再タッグ曲『永遠』も全く刺さらなかったし…)
リリース時期が10月なこともあり、聴いていると秋の情景を同時に思い浮かべるので、それによって増すノスタルジーのおかげで愛着が強いのも好順位の理由。 タイトルが絶望的にダサいせいで話題にされることが少ない『day by day(愛犬クルの物語)』が本作1番のお気に入りで、『星になれたら』『Over』で語ったように"明るい曲調に暗い歌詞"というキャップもツボなのだが、ヘヴィーなパワーポップサウンドは"ロックバンドMr.Children"を求める自分のスウィートスポットを突いてくるし、ワンちゃん視点の歌詞もかわいらしくて余計に切なくなる。近年屈指の"隠れた名曲"。
6位 SENSE(2010)
コバタケの干渉が最も強い時期の一枚ですが、それが最もプラスの方向に働いたのが本作です。
『I'm talkln about lovin』のような、『KIND OF LOVE』期を思わせる都会的な音像を作り上げることについてはやはり彼の得意分野だろうし、『ハル』『蒼』『ロザリータ』など、割り切ってストリングスやピアノを主体にした曲ではやはり彼の編曲が光ってますね。
LIVEだと「主張強…」と胃もたれしそうになるプレイヤーとしてのコバタケも今作を彩る重要なピース。『I』のシンセによる演奏も、ただでさえ攻撃的な曲の狂気を増す素晴らしいエッセンスになってます。『フェイク』や『花の匂い』を聴くときにも同じようなことを思うんですけど、暗い曲の方が小林武史って上手くできるんじゃね?
そして、本作で最もコバタケが輝いた瞬間だと感じるのが『Forever』の間奏。あの効果音を多用した壮大な間奏で大量の快楽脳汁が出るのは僕だけでしょうか。セルフプロデュースでは生まれなかったであろうあの演奏だけで、Mr.Childrenと小林武史が出会った甲斐があったとさえ考えてしまいます。
相変わらず1時間を越える長尺ではありますけど、ミニマルなアレンジの曲が多いおかげで聴くのにカロリーを要しない良作です。
5位 I LOVE U(2005)
『Door』以外全部シングルでも違和感レベルの強い曲が並んだ傑作。特に『and I love you』は全曲の中で1,2を争うくらい好き。
『靴ひも』『CANDY』このあたりの曲は桜井和寿お得意の美メロラブソング。前者なんかはイントロ開始1秒でリスナーを惚れさせる魔力を持ってると思いますね。
ラストを飾る『潜水』も素晴らしい。空間的な田原ギターと分厚いコーラスがシューゲイズライクで夢見心地な音景色。日常の脱力感が同居したAメロ。エフェクティブな桜井和寿の声によって一気に深い水底に引き込まれる感覚を覚えるサビ。
ただ、曲順にちょっと違和感を覚えていて、とくに『CANDY』から『Door』までのところ。前後のテンションが全く違う曲が続いて、お世辞にも良い流れには感じれなかったんですよ。これに関して、本作の曲順を深く考察した方がいらっしゃったので気になる方は是非。
これ、若干「本当かなあ…?」と疑いつつも、本作へのイメージを換えてもらいました。ここまで考えてたら驚きだけど、単純に音だけ聴いてると違和感を感じるし、『Door』という曲の存在自体が根拠になっている気もする。若干逸れた話をしたけどこの記事、おすすめです。
というか、そこも本作の大きな魅力のひとつで、桜井さん本人は「このアルバムの詩世界がリスナーに理解されなかった」と思っているようなんです。確かに歌詞の具体性が増して、一つ一つの曲が物語のようになっているという点で、佐野元春の言う「最も文学度の高いアルバム」という評も同意できる。そういう見方でも楽しめる作品。
4位 DISCOVERY(1999)
見ての通り、ジャケットがまんまU2。1曲目の表題曲なんか思いっきりレディヘの『Airbag』だし、『Prism』も『Let Down』を意識してそうだし。『アンダーシャツ』なんかは彼らがファンクを自分流に解釈したソウルフルな一曲ということで、これまで以上に洋楽志向の強い作品。
そういうこともあって、かなりギターをフィーチャーした、ロックバンド然とした曲が多く、先述のように僕の好きなミスチルが詰まっている一作です。
シングル曲の強さでいうと全アルバムでもしかしたら1番かも。大正義『終わりなき旅』は説明不要として、ライブで演奏しすぎな『ニシエヒガシエ』、そして僕の中で『and I love you』とミスチルNo.1の座を争っている『光の射す方へ』。どれも分厚いバンドアンサンブルが最高。
『終わりなき旅』を抑えてアルバムの終幕を担う『image』の超然とした存在感もアルバムの価値を引き上げてくれてます。
あとJEN、ごめん。『#2601』めちゃくちゃかっけーよ。
ミスチルファンってポップスが好きで、歌メロと歌詞に最も比重を置く、所謂邦楽ライトリスナーが多い(彼らの知名度からして必然ですが)から、こういうUKロックやブラックミュージックに接近した全体のグルーヴを聴かせる種のアルバムが評価されにくいのは理解できるんですけど、それでもやっぱりこのアルバムはもっと持ち上げられるべきでしょ!!
『終わりなき旅』も入ってて話題に上がる回数がこのぐらいってことは、みんな相当聴いてないでしょ、『DISCOVERY』。
本当にカッコいいアルバムです。もっと愛しましょう。
3位 SOUNDTRACKS(2020)
2022/12/28現在の時点での最新作。発売から2年が経ち、そろそろ冷静にこのアルバムを評価してもいい頃だと思いまして、冷静に評価した結果、この位置が妥当。本当に凄いアルバムだと思います。聴けば聴くほど魅力が増す。
本作、ストリングスが多用されているという点でセルフプロデュース以前の作品群と共通してますが、コバタケのそれとは全く違う。サム・スミスのプロデューサー、スティーブ・フィッツモリスを迎え入れ、ムードの演出で終わらない、飛び道具としてのストリングスの演奏が組み込んだMr.Childrenの演奏は、30年の円熟味を帯びてさらに凄みを帯びています。
曲の構成においても、新しい試みが多くあって、良い例がアウトロで驚きの展開を見せる『君と重ねたモノローグ』と『others』。
後者なんかOasisの『Champagne Supernova』を思わせる壮大なアウトロはいつまでも聴いていたくなる心地よさ。
Aメロ2回サビ4回という、J-POP定型から外れた構成ながら強力なメロディでキャッチーに聴かせる『Brand new planet』。
極め付けは1曲目『DANCING SHOES』。初めて聴いたときは、イントロで「今作凄いかも…」と全身総毛立ちでした。
作品全体に通底するテーマは"死"。中盤に位置する『losstime』なんかはその象徴でしょう。本人も発売当時のインタビューなどでは「終わること」について考えることが増えたということを語っていました。
しかし、そういった憂いだけではなく、死すらも受け入れる懐の大きな優しさを同時に内包しているのがこのアルバムです。二度と会えない「君」に、二度と会えないままに愛を注ぐ『memories』が飾るアルバムの終幕は、まさにそのスケールの大きな優しさの象徴です。
2chやYouTubeのコメント欄によくいる、昔のミスチルは尖っててよかったおじさん達はこのアルバムを聴け。今の彼らには、当時とは別種類の毒がある。そしてこのキャリアだからこそ育まれた深い優しさと。
2位 Q(2000)
キャリア随一の異色作。当時の空気感は生まれていないので分かりませんが、それを知るリスナーが言うには「ミスチルどうした?」ってな感じだったらしいですね。CDバブルの時代にミリオンに到達できなかったというセールスの記録を見ても、そのような意見が存在したことは窺い知れる。
それもそのはずで、このアルバム、実験作とはいえ、実験しすぎ。このアルバムを最後に、「POP再検証」と銘打ってポップスへの回帰を始めたことが示すように、當時の彼らは方向性を若干見失っていた部分はあると思います。しかしその"捻くれ"が本作を一筋縄ではいかないものにしている。
『NOT FOUND』『口笛』のシングル曲2つはマスにもコアにもリーチできる完璧なポップソング。前者については桜井本人も「この曲を作るためにやってきた」とまで語っていました。
『つよがり』『安らげる場所』といった、美メロを穏やかに聴かせる曲もその內に入るのでしょうが、問題はそれ以外で。
開幕『CENTER OF UNIVERSE』からヘンテコ。どこがサビか分からない。途中からテンポが急に上がる。このテンポ、ダーツの得點で決めたというのだからふざけ倒してますよね。今ではライブの定番曲なんだから面白い。
続く『その向こうへ行こう』もミスチルでというか、今まで聴いたどの音楽にも似ていない、誤解を恐れずに言うとキモイ。だから癖になる。
『スロースターター』は洋楽的なヴァース・コーラス構成ですが、コーラスはほぼ叫ぶだけ。半ば投げやりな桜井の自意識を感じる歌詞にも空恐ろしいハイテンションを感じてしまいます。
続く『Surrender』はシリアスなアコギから始まりタイトル通り卑屈で絶望的な歌い口。この2曲が続くところ、躁鬱が過ぎる。
『十二月のセントラルパークブルース』『友とコーヒーと噓と胃袋』この2曲は特にヘンテコ。沢田太陽さんの「カオスすぎてとっ散らかっている印象」という評も理解できるというものです。もっとも、僕の印象ではその"カオス"が『Q』を『Q』たらしめる特色だと感じているのですが。
そして大名曲『ロードムービー』。鉄琴を用いた切ないサウンド、抑揚のない淡々とした曲構成が逆に心地いい。桜井が自画自賛する歌詞も白日の完成度。
かなり思想の強いポエトリーリーディングが印象的な『Eveything is made from a dream』(SENSE in the field ver. も素晴らしい)。
そしてこれまた他に似てる曲が無い『Hallelujah』。空間的なピアノとギターに乗せ靜かに一途な愛を歌い、サビで一気にゴスペル的なコーラスが響く、宇宙的に壯大な1曲。
結局全曲について触れてしまいましたが、そうせざるを得ないほど粒揃いの本作。Mr.Childrenのような、優れたポップセンスと確かな技術を持ったバンドが、苦しみながら迷いに迷って音楽を作るとこんな風になるのか、と感心します。
たくさん音楽を聴いてきて、耳は肥えてるけどミスチルは避けてきた、というリスナーが最初に聴くべきアルバムは「Q」です。間違いなく。
1位 REFLECTION(2015)
画像は{Drip}ですが、{Naked}の方で話を進めます。どういうことか分からない人向けに言うと、このアルバムは上記の2形態で発売され、簡単に言うと前者にない曲もぜんぶ後者に入ってるというもの。そのせいで曲数23、再生時間1時間50分というサイズに。ただ、そのサイズなだけあって、本作にはMr.Childrenの全てが詰まっている。
簡単に本作を言い表すと"バラエティ豊かな大作"です。ビートルズの『ホワイトアルバム』、ツェッペリンでいう『フィジカルグラフィティ』、レディヘでいう『In Rainbows』などと例えると分かりやすいでしょうか。
そのようなアルバムになった理由には、今作からセルフプロデュースになったことがあるでしょう。そう、このアルバムあの忌まわしきブラッドオレンジの次のアルバムなのです。
僕の予想だと、きっと危機感を感じてコバタケから離れたんじゃないかなあ。そのおかげで本作はとにかく、やりたいことやったんだろうなって感じで彼らのエネルギーが爆発している。大ボリュームゆえ全曲に触れることは難しいですが、ハイライトに触れていきます。
まず1曲目『fantasy』。「ライブの一曲目として想定されて作られた」と本人たちが語ったように、イントロ開始1秒で曲世界に引き込まれると同時に、"今作はギターロックか"という察知がリスナーの脳内に去来するはずです。
『蜘蛛の糸』。「なるべく感情を排した」という冷たい歌唱でドギツイ官能情愛を歌いつつ、ピアノが美しい旋律をなぞる。未完ツアーの演出が美しくてお気に入り。
10年代の彼らの代表曲となった『足音〜Be Strong』を境に、物語は後半へ。
『You make me happy』『Jewely』といった、このボリュームだからこそ収録されたであろう、肩の力を抜いて作られた曲たちもアルバムに別の色彩を加えています。
そして一気にボルテージを上げる攻撃的なロックナンバー『REM』冷たく、激しく世の中への失望を歌う『WALTZ』中毒性の高いミスチル製の闇曲がアルバムに幅をもたらし…
続く『進化論』が救いのように、優しく、未来への希望を歌う。
本作で小林武史が関わった数少ない曲『幻聴』はアルバムに煌びやかな色彩を加えます。こういう曲は大作の中の一曲ぐらいがちょうどいいな、とそれこそスパファンやブラオレを聴いて思います。
インストの表題曲を挟んで最終盤を迎え、隠れた名曲としての地位を確立しつつある『遠くへと』『I wanna be there』がリスナーの耳も心も温める。こういう曲がアルバム曲としてしれっと置かれているのがミスチルの凄いところなんですよみなさん。
そして『Starting Over』。第二の終わりなき旅のような趣もある、壮大で詩的な、Mr.Childrenお得意のスロウテンポなロックナンバー。
剥き出しの感情、荒々しいサウンド。立て続けのメガヒットの中、桜井が心を病んでいたあの頃とは一線を画したパンク『未完』で本作は幕を閉じます。
冒頭で書いたことを覚えているだろうか。このレビューを書くにあたってもう一度、Mr.Childrenのディスコグラフィー全てを復習したんですけどやっぱり『REFLECTION』は僕の中でずっとNo.1。ミスチル以外のアーティストも含め。たぶん死ぬまで不動。
ということで、Mr.Childrenアルバムランキングやっていきました。初投稿なのに10000字越え。
今年は彼らの30周年イヤーで色々楽しませてもらったけど、来年はおそらくアルバムを出すんじゃないかと思ってます。次はどんな感じで来るんだろうな。「SOUNDTRACKS」があまりに素晴らしかったから、期待しちゃうよ。
というわけで30年間変化をやめず、その度に最高の音楽を鳴らしてきたMr.Chldrenに敬意と、見てくれたあなたにいつでも微笑みを。