元芸人と元AV助監督の交換日記#2 (A先輩)

 お酒というのは些か恐ろしいものである。晩年、お酒に溺れる赤塚不二夫のことをタモリは(あくまでも赤塚を天才としつつ)「天才の並の下かも知れない。もはや天才とはいいがたい」と表現している。とは言ったものの、今回はそこまで大きい話ではなく、お酒を飲んで後輩に電話を掛けた翌日に交換日記が送られてきただけの話。お酒のせいで24歳の男性と交換日記をすることになった‘だけ‘の話である。

祈の日記を倣うと自己紹介をしなければならないのだろうが、僕は自己紹介というものが嫌いである。そもそも、初対面の人間の表面になど興味がない。それもあって、他人が自分に対し興味を持っているとは思えないのである。我ながら卑屈で偏屈だとは思うが、そういう人間なのだからしょうがない。10年以上親交のある友人の趣味嗜好は知っているが、その友人がどこの大学を卒業したかは知らない。家族構成も誕生日も知らない。
以上を踏まえて祈への問いに答えるとすれば、「出会いの瞬間など覚えていない。興味がないので覚えているわけがない。」である。
唯一追記するのであれば、「お前は明確に覚えていろよ。馬鹿野郎。」だ。

 そんな僕でも落語研究会との出会いは覚えている。当時18歳の僕は祈と同じくサークルの勧誘活動期間中に落語研究会と出会っている。祈と異なる点としては、勧誘活動をしていた諸先輩方は‘やる気満々‘であったことだ。漠然とであるが芸人志望であった18歳の僕は、意気投合したこともあり、やる気満々の先輩により新入生歓迎コンパへ半ば強制的に参加させられたのである。そこからの話は長くなるので割愛するが、入部の決め手は結局のところ新入生歓迎コンパであった。コンパに女がたくさんいた。ただそれだけだ。いや、これでいいのだ!

酔っぱらった勢いで始まった24歳の後輩との交換日記。何の気なしに始めた‘だけ‘の遊びに半日近く頭を悩ませながら机に向かっている。だからこそ、祈に問う。
「この日記の目的は何ぞや?」ご返信お待ちしております。

P.S
僕と貴方が仲良くなったきっかけが思い出せません。もしかして僕は、まだ貴方を認めていないのでしょうか。

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