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2月21日 看護師とラグビーをした話

教室の中央に男5人と女6人が一列に並んで向き合っていた。一番右に俺は突っ立ていて、やることはなんとなくスポーツだと分かっいた。俺はその時、絶対に勝ちたいと闘志を燃やしていた。
教室の中はカーテンが閉められていて、カテーン越しに差す太陽の光とカーテンの色が混ざり、室内をドス黒い紫に染めていた。
教室の四隅には机と椅子が重ねられていて、クラスメイトが僕達を囲い、「いけ〜」とか「やっちまえ〜」みたいな声援と罵声の間のような声が室内に響き渡っていた。
対戦相手を見ると6人いる。俺達のチームより一人多い。5人の女の子達は皆看護師の格好をしている。そして一番右端、つまり俺の目の前にいるのは男だった。その若い男は医者の格好をしていた。いけ好かない男だった。髪を薄い茶髪に染めている。信用ならない奴だなと思った。クラスメイトのほとんどの女子が彼を応援し始めた。
俺は隣にいるチームメイトに「こういう男、一番ムカつかない?」と言ったら、「俺は、ムキにならない。どうでも良くない?」と言われ、後でこいつも殺そうと思った。
現実の話だが、僕は病院の中の売店で働いてる。看護師さん達からモテたくて仕方がなく、色々格好をつけて、試行錯誤の日々を繰り返してきたのだが、今年のバレンタインのチョコは0だった。14日の帰り道、小さな袋をいくつか持った若い医者を二人は見かけた。若い医者達は俺よりも年下だったと思う。
26歳のフリーター、チョコ0、の俺を医者はどう思っているのだろうか?
どうも思っていないだろう。俺は彼らより、頭が良いし、勉強とかじゃないよ、物事に対する考え方とかそうゆう話ね、地頭の話、顔もいいよ、俺の顔の系統が好きな人は俺のことが一番好きだろうね。俺が彼らと異なる点とを挙げるとすれば、医療に関する知識があるかないかぐらいの話で、他は差異がない。26歳にもなると、同い年の女子達もリスクマネジメントみたいな意識が働いてくるのか、ただカッコイイとかだけじゃ相手にしてくれないのも事実だけども、そんな諸々なクソしょうもない問題を通り越すくらいの魅力は俺にはあると思うよ。みっともないよ俺。腹の立つ。看護師も若い医者も俺のことをもっと意識するべきだ。
だから夢の中で、「看護師&医者チーム」との対決になったんだ。
夢の中の俺は、現実の俺の気持ちを受け継いで、あいつらをボコボコにしてやると、そう決めたんだ。

笛がなった。
「僕から行くよ。」
と若い医者は言った。
バラになっていない4つ入りのトイレットペーパーを抱え込みこちらサイドに突進してきた。
ラグビーに似ている。僕の背中側にあるロッカーにトイレットペーパーを抱えたままタッチされたら1点だと分かった。
俺は医者が抱えているトイレットペーパーを奪取し、黒板にタッチダウンしなくてはならない。
医者の脇目掛けてタックルしたのだが、華麗にかわされ、タッチダウンされてしまった。黄色い声が飛び交った。若い医者は前髪をかき分けた。
また真ん中からのスタートである。チームメイトが僕にトイレットペーパーを投げたのだが、看護師にカット。今度は看護師が猛ダッシュでこらちに向かって走り込んできた。
なんとか奪取をしたい僕だが、相手は女の子であることからタックルは出来ないと思った。怪我をしたら大変だ。
先程の医者はトイレットペーパーを抱え込むようにして走っていたが、よく見ると看護師は4つ入りのトイレットペーパーの持ち手を持って走っている。片手でぶら下げるようにして走っている。俺は閃いた。
俺は全力で彼女に向かって走った。全力でタックルする勢いだ。
女の子は僕の目の前で速度を落とし怯んだ。怪我を恐れた。近くで顔を見て分かった。その子は最近俺が仲良くなりたい看護師の女の子だった。俺は怯んだ隙を見逃さなかった。というより、怯ませることが目的だった。看護師が速度を緩めた瞬間に俺は、彼女が持っているトイレットペーパーに目掛けてタックルをした。持ち手がちぎれた。ルール的にどうなのかと不安になったが、笛はならなかった。ブザービート的なのが良いなと夢の中の俺と夢を見ている現実の俺は思った。すると室内に汽笛のような音が鳴り響いた。
俺は教室の真ん中より少し先にいた。ここからどうすれば良いか分からなくなった。走っても看護師にタックルされてしまう。と言うよりも間に合わない。試合が終わってしまう。
「お〜〜い!」
目をやると黒板の前にある教卓の上にチームメイトが立っているではないか。ここに来てポートボール。地の利を活かすとは機転が効くじゃないか。ナイス!チームメイト!!!
ここからのスローは、3ポイントだと俺は分かった。1点取られていも逆転を出来る。
俺は構えた。YouTubeで見たNBAの選手がロングースローする時の感じを真似た。
「カッコイイんだけど。」
女子達の声が聞こえる。絶対に決める。
投げたトイレットペーパーは空中で、分裂した。破れてしまった持ち手の部分からトイレットペーパーが溢れてしまったのだ。黒板の前に立つチームメイトの元にはトイレットペーパーが一つだけ届いた。
どうだ?これはルール的にどうだ?
分からない。汽笛はまだ鳴っている。声援が凄い。まだ続いている。考えろ。どうする。俺の足元にトイレットペーパーが1つ転がっている。これだ、これを投げろ。俺は片手で、横に回転をかけながら精一杯投げた。
レーザーのような勢いでトイレットペーパーは飛んでいき、黒板前のチームメイトがキャッチ。汽笛が鳴り止んだ。沈黙。数秒後。教室全体が揺れた。大歓声が渦巻いた。俺は世界一かっこよかった。

よくやったぞ。という思いで夢から覚めた。
夢か。何も変わらないじゃないか。でもなんかが変わった気がする。俺の中で。
俺が変われば、俺の世界は変わる。ナイス俺!



落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。