1月10日 電車の中で、一人喚き散らしてみた。
車内が一瞬で静かになった。私も思わず目を伏せてしまった。そしてまた誰かが喋り出し、我こそはと各々が好き勝手、携帯を見たり、本を読んだり、何もしていなかったりして、平穏を作り出した。だが私は見た。ほんのひとときではあったが車内にいる全員が今していることを辞めたのを確かに見た。
私の両隣りが空かないのは、私に意識を向けられることを恐れているからだろう。
その証拠に駅に付くと、すぐに私の両脇にスペースが出来た。ドアが開き、薄っらと充満していた殺伐とした淀んだ空気が外へと流れていった。私の隣に座っていた男は、隣の車両へとうつった。
ドアが閉まり、また電車が走り出す。私はまたやると決めた。顔を上げ、真っ直ぐ正面を見つめる。そして
「殺す、殺す、殺す」
と大きな声で叫ぶ。
車内がまた止まる。電車が進んでいるのが良く分かる。また誰かが私に見つからないよう日常へと急ぎ出す。
電車の中で大きな声で叫ぼうと決めたのは、会社を出た時のことだ。大きな声で叫ぶおっさんに私はなることが出来た。私には出来ないことだと思っていた。だが、私はやった。自分で選んだ。
帰って酒を飲もう。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。