2月4日 パワハラ上司に「うるせえ、黙れ」と遂に言ってしまった話。
バイト先に偉い人が来た。最近になって週に3回は来るようになった。本社の人間らしく、スーツを着て店にやってくる。
彼は人型にくり抜かれたパワハラである。社員のおばさんをとことん追い込み、彼女が疲弊していくのを僕は常に見ていた。
社内でパワハラアンケートが配布されたりと、ご時世とやらの機嫌を伺い出した本社の雰囲気を感じてか、その偉い人は最近怒らなくなった。というか、怒らないように努力をしているといった感じだ。「パワハラ」を理解していないので、とにかく怒らなければ良いと思ってるらしい。
彼は昔から僕が全く働いていないと決めつけている。週に数回、二、三時間しか店にいない人間に何が分かると言うのだろうか。実際僕はまともに働いてはいないが、それを分かっているのは3年間、週に5回、8時間30分、共に私と働いてきたスタッフだけである。とは言っても、3年も働くと抜き所が分かるようになってきて、その抜くポイントで脱力をしているだけのことである。スタッフに「ちゃんと働け」と一度も言われたことがないのが、その証拠である。
つまり僕は、仕事をしている時と、していない時の差が激しいだけなのだ。
100の力で品出しをしている時と、0の状態でレジにて立ち尽くしている時、その交互を繰り返している。全体で見ると、65の力で最初から最後まで働いている人とそう変わりがないのだ。
偉い人は、65の力で働き続けている人を見て、ちゃんと働いていると言う。阿呆だ。
効率という言葉にネガティブな印象を持っている人間はかなりやばい。
努力や根性という言葉に逃げる。偉い人は、家に帰って、身体が重ければ、実際の成果などはどうだって良いと思えるタイプの人間である。
昨日、「落合君、カルピスを出してください。」と彼に言われ、「あ、明日届きます。」と言うと、彼は「は!!!???」と大きな声を出した。
カルピスはもう店に届いていたらしい。それだけのことだ。カルピスが店に届いていないと思っていた僕を、彼は許せなかったらしいのだ。
大きな声をあげた後、彼は急いで、ニコッとして、取り戻そうとした。
それが手遅れかどうかは、僕の対応次第といった感じだった。
彼が大きな声を出した時、僕は反射的に「怖い。」と思ってしまった。それは彼が怖いとかそう言うことではない。突然聞こえた大きな音に怯んでしまったのである。それが堪らなくみっともない感じがして、動物として負けを認めてしまったような気がして、僕はとても悲しい気持ちになった。
僕はこれまで彼に大きな声をあげられたり、理不尽なことで詰められたり、「レジでキョロキョロしてますけど、お金抜いてると思われますよ。落合君、怪しいです。」と耳元で言われたり、とにかく色々やられてきたのだけど、彼は明らかに僕より人としての能力が低いことは明らかだったし、こんなドブ人間でも自分よりお金を稼ぐことが出来ているという事実に希望すら感じていたし、とにもかくにも割と許すことが出来ていた。
また彼と衝突すると、狭い店内全体の雰囲気が張り詰め、喪に服したような顔をしたおばさん達が黙々と働くことになってしまう。わざわざ家から電車に乗ってやってきて、糞の足しにもならないようなことをやっているんだから、せめて楽しく働きたいし、皆んなもそうであって欲しいと割と本気で思っている僕は、バイト先ではとにかく怒らないようにしていたのである。
怒ったとて、何も変わらない。上司は上司である。立場も変わらない。働きにくくなるだけである。
僕個人の思いとしては彼にはいち早く、くたばって欲しい。が、雇われているバイトの僕としては、怒ったって仕方がない。
僕は頭が良いので、自分の現在地がよく分かっている。その分、理性的な振る舞いをする必要がある。もう私は「怒る」ことが出来なくなってしまっている。怒るか怒らないかを、決めることが出来る。
「ありのままの私」なんてものを、バイト先に持ちこんでも他人に迷惑がかかるだけだ。レリゴー精神は尖った思想だ。
でも本当にこれでいいのか、と最近になって良く思う。ムカついたらキレればいい。誰かを変えたくてキレるのではなく、自らのためにブチ切れるのであれば、他人を傷つけても時には仕方がないのかもしれないとか、そんなことを考えながら眠るので、「殺す!!!」という自分の寝言で目を覚ましたりする日々が続いてしまっている。
「ちゃんと仕事をしてください。」「落合君、ちゃんと仕事をしてください。」耳元で偉い人が、赤子に物事を説明するように、わざとらしく一語一語をハッキリ発音して、私に何かを言っている。
松たか子の声が聞こえてくる。いやMay.Jの方かもしれない。本編見たことないし。
「うるせえ、黙れ。」
と私は口にしていた。
それから彼はバスの時間になっても、中々帰らず、事務所のデスクに座ったり、スタッフと雑談をしていた。僕が話しかけてくるのを待っているのだろう。今まで私は、彼が怒った後、いつも話しかけてあげいた。今日のことは今日で終わらせてあげたいという、僕からの粋な計らいである。
がしかし、昨日はもういいやって感じだったので、彼の存在をスルーしていた。
「お弁当た〜べよ!!」と彼が大きな声で言った。
私は彼の近くで、スタッフと共に「なんで、腹が減んだよ」とか「お腹が空いたらしいよ。。。ね?」とか「何腹減ってんだよ!」とかそんなことを聞こえるか聞こえないかくらいの音量で、ブツブツ言った。これは最低である。反省。
家まで帰っている途中、めちゃくちゃ気分が悪くてびっくりした。
ヘラヘラしている方が気分的にはまだマシだった。
どうしたらいいのだろう。良く分からない。
とにかく僕がいる場所ではないのだろう。
早く抜け出したい。こんなことを文字にしたくもない。日記的には助かったけど。質が悪い。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。