12月11日 猿とバイト。バックれた訳。なのです。
猿や類人猿は一度群れから離れると、二度とそこには戻れないという文章を読んだ。戻った際には群れの仲間から一斉攻撃を受け、時に殺されたりもするらしいのだ。猿っぽいね。ウキキ。
とは言っても、私も猿の端くれである。ピンと来たのである。
私が上京した際に引っ越した家はスーパーの目の前にあった。スーパーってのは人が生きるためのなにもかもがありますから、それだけで十分だった訳で、私はそのスーパーで必要なものから不必要なものまで日々買い込んでいたのである。買うという行為は金が無くなるということでもあると気がついた頃には、金が無く、となると不必要なものを買うのを辞めれば良いと考える訳ですが、人間いうのは幸か不幸か「慣れる」生き物でして、いつの間にか不必要なものが必要なものになっているのです。その頃に思いついた不必要なものと言えば、洗濯バサミ、高価なトイレットペーパー、キッチンペーパー、トマト、新聞紙、とか元からいらないものばかりで、日々てんてこ舞いだった訳です。畜生、畜生、べらんめえ、べらんめえ、と現実を逃避するが如く、てんてこ、てんてこ、舞って、濡れたバスマットに足を滑らせソファーの角に頭部を打撃、目の前が真っ赤に染まった時、私は気付いたのです。このスーパーは金を売っているではないかと。スーパーの新たな一面を見出した訳です。
血だらけになった頭部をバスマットで抑えながら、家を飛び出しまして、スーパーに無一文で向かう訳です。無一文でスーパーに向かう阿呆がいるか、と思われた方もいるかもしれませんが、この時ばかりは私が合っています。店内の手前、カート等が置かれた場所にある掲示板を見ると、やはりバイトを募集していた訳でして、やはりこのスーパーは金を売っているのでした。
頭部の血が乾いた頃には、私はレジに立っていまして、金を稼ぎまくっていたのです。初めてのバイトということで最初の頃はかなり意気込んでいましたが、やはり人間は慣れます。慣れてきた頃、私は自分以外のスタッフに疑問を抱くようになりました。やれ、急に休むな、やれ、遅刻するな、やれ、客と喧嘩するな、やれキャベツとレタスの違いを覚えろ、等々、私にいちゃもんをつけてくる訳です。私は上記で列挙したことを、重要だとは思っていませんでしたので、もちろんそれらのお叱りを丁寧にお断りしました。
そうなると、今度、私は省かれていくのですね。働いて数ヶ月経った頃には誰も私と口を利こうとはしないのです。「省く」という行為は非常に卑劣でして、頭に関する運動が苦手な非常に弱い人間共がこぞって使う常套手段のようなもので、ですがこれが中々手強くて、大勢から無視をされている時、良くスイミーを思い出したものです。
私はもうこの群れから出なくてはならない、辛い、辛すぎる、と思い、ある日行くのを辞めたのです。
無視をしてきたはずの人間達から、多くの温かいメッセージなどが私の元に届きましたが、私は全てを無視しました。中には私が一人暮らしだったため死んだと思った人間もいたようです。
それから私は目の前のスーパーに行くことが出来なくなってしまいました。これが何故だか最近やっと分かったのです。もし、私がスーパーに行ったとすれば、私はスタッフから一斉攻撃を受け、最悪殺されるでしょう。それが何故だか分かりますか?それは働いていた人間達が猿だったからです。人間である私は、猿とは働けません。だからばっくれたのです。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。