「寡黙な職人」に形から入ったラーメン屋の店員の話
無視をする店員
この前相方と二郎系のラーメンを食べに行った。食券機が5000円札を受け付けないことを知った相方が店員に「すいません両替お願いします。」というと、その男は無言で作業を続けていた。麺を湯切っている最中とかだったら目の前にある作業を中断できないのは分かるが、厨房を布きんで拭いたりしていて、優先順位の設定が明らかにおかしかった。相方が何回か「お願いします」と言っているのに、彼はこちらを睨み付けながらまだ清掃をしていた。そのうち清掃をしている理由は「無視」している時間を正当なものとするためであるように見えてきて、彼が思う今最もするべきことは「清掃」ではなく「客を無視をすること」なのではないかとすら思えた。
本当に一分間くらいシカトした後に、かったるそうに千円札を出してきてマジでしんどかった。
土俵に乗りこまない戦い方
「ありがとうございます!!」と元気にかつ深々と頭を下げる相方も相方らしさを全開させていた。
大体相方はこうゆう時、自分が正しいと思う方向に突っ張っていく傾向にある。つまり「その態度おかしくない?」的な感じで相手の土俵に乗り込んで行くのではなく、真横で自分の土俵を展開し、隣の店員をチラ見しながらかなりオーバーとも思える1人相撲をやってのけるである。一切交わることなく、一般的な正しさを相手に見せつけるというスタイルである。泥も被らなくて済むしそれは結構アリだと思う。
私怨がないと成立しない態度
ラーメンが出てくるまでの間、俺は考えが止まらなくなっていた。
まず最初にあの信じ難いレベルの悪態は、あの店員が俺達のことを昔から憎んでいたり、「いつか顔を会わすことがあったら殺めてやる」くらいのことを思っていたりしていないと成立しないくらいの感じだった。その時点でこいつが作るラーメンって食べて大丈夫なの??と思った。仮に我々に対してなんの恨みもない場合の方が俺的には理解に苦しんでしまう。普通に話しかけられているのに意図的に応答しないってそれはもう街だ。街とか電車で自衛のためにすることであって、自ら店を開いている時点で見知らぬ人と最低限の会話が必要となることへの想定ができていないって結構やばくね?
ラーメン屋の店員にそこまでのサービスを求めるな!とかそうゆう話じゃなくて、普通に「ダメな人」をラーメン屋さんで発見したって感じだ。
寡黙な職人像という呪い
結果的にラーメンは普通に美味しかったんだけど、今になって本当にそうだったのか?といったような疑問が僕の中で沸々と湧いてきた。
あんなにも無愛想だったらもっと美味くないといけないのではないか?と思えてきたのである。
恐らくなんだけど、あの店員は「店主が無愛想であればある程、その店のラーメンは美味い」みたいな先入観、ある種の呪いのようなものにかかってしまっているのではないだろうか。「職人の気質」みたいな部分に形から入って大失敗しているのが彼なのではないか?と思えてきた。
自分が持つ能力の全てをラーメンのみに極ぶりした結果、それ以外のことがおざなりになってしまうのだったらいいのだけれども、きっとあの店員は「寡黙な職人」の「寡黙」な部分から入った結果、ただ人を無視してしまうアウトな人間になってしまったのではないだろうか。打ち込んだ結果なるべくして「多くを語らない性質を持つ」べきで、多くを語らない割に打ち込まないのは理解不能である。
諸々の結論はやっぱり「ラーメン」に出ていて(それは彼のためにも、というか全てにおいてそこで測るのがフェア)あそこまで寡黙(行き過ぎちゃって普通に無視をしていた)であるならば、やっぱりあのラーメンは不味かった。あいつがあの店で働いている限り、あの店は日本一美味いラーメンを出さないと、一生不味いと思う。
あの店員さんへワンポイントアドバイス
書きながら思い出したのだけど、その店員の「お好みは?」の声がめっちゃ小さくて「はい?」と聞き返した記憶がある。なんか寡黙な職人って逆にそうゆう時は声が大きいからボソボソ喋らない方がいいよって思う。プロって自信が無くて寡黙になっている訳じゃないから。声が小さいのに捻くれているってもう自分を改善することを諦めちゃったってことだから、マジで声は上げた方がいい。まずは自分自身に聞こえる程度でもいいから己に心の声を投げかけてみてくれ。まあそれすらも無視した結果が「今」なんだろうけどね。変わろうとしない人無理です。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。