2月12日 プロのUFOサーブを見て、軟式テニスに愛想を尽かした理由。
「テニスの王子様」に影響された小学生の僕は、テニススクールに通っていた。
中学では勿論テニス部に入った。テニススクールは硬式で、テニス部は軟式だった。打ち方に大分違いがあって、最初はとても困惑した。簡単に言うと、軟式の方が下品だ。軟式の玉はゴム製で出来ている。ゴムを強く叩く。引っ叩く。ラケットでバチンと叩けば、バキューンと玉が飛んでいく。強く叩けば、速く飛ぶ。安易な感じがして、品がないスポーツだなと当時の僕は思った。
テニススクールには毎週日曜日に行っていた。学校ではモンハンが流行っていて、休みの日は友達の家に行って狩りをするというのがモンハンくらい流行っていた。僕はテニススクールが終わってから、そのまま自転車で友達の家で狩りをした。午前中から行きたいな。頭から皆といたいな。出来上がっている空気に途中で参加するのかったるいな。そんな思いが爆発してしまい、母親が確か朝シャンをしている日曜日の朝に、テニススクールに電話を一本掛けてあっさり辞めた。母親に、今辞めた。と言うと、ああそう、みたいな感じで、びっくりした記憶がある。
それからは部活に専念することになった。専念と言っても、僕の中学の部活は正確にはクラブであり、週に二回しか練習がなかった。
ある時先生が知り合いを連れてきた。彼は軟式テニスのプロらしい。軟式テニスのプロか。とだけ当時の僕は思った。
先輩であるキャプテンが、その軟式テニスのプロと対戦することになった。
キャプテンはかなり上手い方だったから、どうなるのだろうと、内心ドキドキした。
試合が始まって、僕は絶望した。
絶望した理由は、プロのサーブを見たからだ。
プロはラケットを短く持って、玉を下から思いっきり切った。スライスと言って、要するに回転をかけた。プロがスライスをかけた瞬間に、僕はキャプテンの方に目をやった。まだ玉が来ない。待てど暮らせど、玉が僕の視界に入ってこない。どうゆうことだ。サーブを打ってから5秒は経過したプロの方に目をやると、まだ玉がプロの前で浮いている。回転をかけられ過ぎた玉は楕円を通り越して一本の線に見えた。UFOのようにポワポワ浮いた玉を、プロもキャプテンも、我々観客も皆がじ〜〜っと見ていた。そして15秒後にキャプテンの足元に着いたボールは、地面で1mm浮いて、そのまま横に転がった。僕は唖然とした。キャプテンは立ち尽くしていた。打てないじゃん。物理的に打てないじゃん。と皆が思った。玉の問題じゃん。玉がゴム製であるからじゃん。玉がゴム製であることを精一杯利用したプロの節操のなさに引くわ。もうなんか、そうゆうことになってくるんだったらいいや。と思い、僕は軟式テニスに愛想を尽かしてしまったのだった。終わり。
落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。