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アルヴィンに会いたい。『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』

ストーリー・オブ・マイ・ライフについて。
とりとめもなく、ぽつぽつと

現実ではトーマスを目指しているけど、本当に自由だったらアルヴィンになりたいのかもしれない。
頭ではトーマスが正義だと思っているけど、心はアルヴィンに憧れている。
正反対のようで、どちらも自分で、
だからどちらにもなれない自分がいる。

「僕は蝶 それで十分」と改めて思った。肯定的な意味で。
自分の仕事が、誰かの人生を変えるとしたら。ひらめきを与えるとしたら。誰かの物語を引き出すとしたら。
自分自身が海を見ることはできなくても、風が海を見てくれる。
それを想像して、こうやっていつもの場所でいつも通り、自分のペースで羽ばたいているだけで、良い人生だと思える。この羽ばたきがきっと大きな力になるから。そう信じる力があれば。

「独立記念日」は、つらくてよく覚えていない。
これから壊れると薄々感じながら聞くその眩しい笑顔は、儚く、脆く、とても見ていられなかった。
その希望を、壊さずにいられたら?

トーマスとアルヴィンは、なぜ親友のままでいられたんだろう。トーマスが、アルヴィンがずっと求めていたことを叶えたから?幼少期の約束を果たしたから?ようやくアルヴィンと同じ考え方で、自分だけの文章を書けるようになったから?
___自分だけの文章だと思っていたものを、「アルヴィンとトーマスの物語」として、トーマスの言葉で書けるようになったからか。
そこに宿るアルヴィンこそが、トーマスに語りかけている「アルヴィン」だから、
認めたことで、アルヴィンは天使になった。トーマスのなかの「アルヴィン」が。

現実に生きていて、友人からもらった自分のバイブルを忘れかけてしまうことはなかなかないのではないかと思って、
でも、友人ではなく、経験だとしたら。それはよくあることなんだと思う。
小さい頃大事にしていたもの。憧れたもの。自分のなりたい大人。されて嬉しかったこと。もらったもの。約束。
大人になると、それをだんだん奥にしまっていって、面倒を見られなくなって、現実に埋もれて、いつしか忘れていってしまうのかもしれない。
「失って初めて気づく」ってよく聞く表現だけど、アルヴィンこそその象徴かもしれない。自分の大切なものが詰まった、過去の経験、忘れてしまったようでまだ覚えている煌めき。

演劇の1番の醍醐味って、こんなふうに自分の人生、価値観、物語の意味、登場人物の役割みたいなものをぐるぐるぐるぐると考える時間にあるんだと思う。日々のちょっとした時間まで全てひとつの作品に奪われて延々と考えるこの時間が長ければ長いほど、後々自分の中で大事な作品になるような気がする。

多分、私たちは実際のアルヴィンのことは何も知らない。トーマスの脳が覚えているアルヴィンを見せられて、魅力的なだと思った時にはすでにこの世にいない。
「優しい物語」というには、あまりに暴力的で、悲しくて、悔しくて、そんなにすぐ心が温まる話ではないんじゃないかと私は思う。
でもこのトーマスの物語を追体験することで、ありのままの人生を間接的に肯定するようなパワーは明確にあって。やっぱり不思議な作品に出会ってしまった。

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